「tip someone off」の意味と使い方|『メンタリスト』S05E22で学ぶ英会話

「tip someone off」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

サプライズの準備をしている最中に、当人の前でだけ妙にそわそわしてしまい、結局は先に察せられていた。悪気はないのに、態度のほうが先に伝わってしまう。そんな場面が、誰にでも一度はあるはずです。

そんなときに使われる「tip someone off」を、『メンタリスト』シーズン5第22話の前半、車で移動しながらジェーンとリズボンが容疑者リストをめぐって押し問答をするシーンから、一緒に見ていきましょう。

目次

「tip someone off」の意味とニュアンス

tip someone off
意味:感づかせる、こっそり知らせる

本来なら知られてはいけない情報が、正規の経路を通らずに相手のもとへ届くことを指します。日本語の「密告する」「垂れ込む」から、「先に耳に入れておく」「感づかせる」まで、幅のある表現です。

中心にあるのは、情報が渡ったかどうかよりも、渡ったことで相手が身構えたり動き出したりする、という結果のほうです。そのため、警察・報道・ビジネスのように、先を越されると不利になる場面で頻繁に登場します。

意図の有無を問わない点も特徴です。故意に伝える場合はもちろん、態度や表情から結果的に伝わってしまった場合にも使えます。主語が人でなくてもよく、なまりや服装といった手がかりが主語に立つこともあります。

語順は tip someone off が基本で、目的語が代名詞なら tip him off のように必ず間に入ります。何について知らせたかを添えるときは about を続けます。

【ここがポイント!】

  • 核にあるのは「そっと合図を送る」という、指先ひとつぶんの動き
  • 故意の内通にも、態度から漏れた場合にも使える幅のある一語
  • 目的語が代名詞なら tip him off と間に挟む、この語順を押さえておくのがコツ

『メンタリスト』S05E22のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

ジェーンは、これまでに握手を交わした膨大な人数から容疑者を7人まで絞り込んだと明かしたものの、その名前だけは頑として口にしません。車で移動する道中、リズボンが理由を問い詰めます。ジェーンがようやく明かした理由は、リズボンの捜査能力ではなく、その性格に関するものでした。

Lisbon: What makes you so sure Roddy Turner’s innocent?
(どうしてロディ・ターナーが無実だと言い切れるの?)

Jane: Well, I’m not sure about anything right now.
(今は何ひとつ確信はないよ)

Lisbon: Except that you won’t tell me the names on the list. You’re sure of that.
(リストの名前を教えないことだけは確かね。そこは確信してる)

Jane: Yeah, well, I should tell you why I’m not gonna tell you. Some of the names are people that you know, and you’ll start acting differently around them, and you may tip them off.
(ああ、なぜ教えないかは話すべきだね。リストには君の知ってる人間もいる。そばにいると態度が変わって、相手に感づかれるかもしれない)

Lisbon: What?! No, I won’t!
(何ですって? そんなことしないわ)

Jane: Well… yes, you will.
(いや……するよ)

The Mentalist Season5 Episode22 (Red John’s Rules)

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シーン解説と心理考察

ジェーンが挙げた理由は、リズボンの腕を疑うものではありません。むしろ、嘘がつけないという資質を前提にした説明になっています。リストの人物と顔を合わせたとき、態度のほうが先に変わってしまうだろう。その予測が、名前を伏せる根拠として置かれています。

同時に、この一言はリズボンにとって別の意味を持ちます。tip them off の them が「リズボンの知っている人物」を指す以上、容疑者が身内の中にいるという事実だけが、名前より先に渡ってしまうからです。名前を守るための説明が、かえって重い情報を先に手渡す結果になっているのが、この場面の皮肉として響きます。

「No, I won’t!」と返したリズボンに、ジェーンが「yes, you will」と静かに重ねる。長年組んできた相手の性格を、本人より正確に把握している関係性がにじむ場面です。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

tip はもともと「先端」を指す言葉です。動詞になると「軽く触れる」「傾ける」という、力の入らない小さな動きを表します。肩を人差し指でとんと突いて合図を送る。その指先ひとつぶんの動作が、この表現の中心にあります。

off が付くことで、その合図が自分の手を離れて相手のもとへ渡っていく感じが加わります。声を張って伝えるのではなく、触れるだけで届いてしまう。だからこそ、意図しないうちに伝わる場合にも同じ語が使えます。

劇中でジェーンが心配しているのも、まさにこの点です。合図を出したつもりがなくても届いてしまう。その絵と一緒に覚えておくと定着しやすくなります。

例文で覚える「tip someone off」

意図して知らせる場合と、結果的に伝わってしまう場合の両方に使えます。その幅を3つの例文で見ていきましょう。

Someone must have tipped him off. The office was already empty.
(誰かが知らせたに違いない。事務所はもう空だった)
先回りされていたと気づいたときの一文です。tip off の後に何が起きたかを続けると、情報が渡ってしまった結果がはっきり伝わります。

I wanted to tip you off before the announcement goes out.
(公表の前に、耳に入れておきたかった)
同僚に人事や方針変更を先に伝える場面です。相手のために先に知らせる用法で、後ろ暗さのない使い方もできます。

A: How did they know we were coming?
B: His accent tipped them off.
(A:どうしてこっちが来ると分かったんだ?)
(B:彼のなまりで気づかれたんだよ)
思わぬところから察知されたときのやり取りです。主語が人でなくても成立し、手がかりそのものを主語に立てられます。

あわせて覚えたい関連表現

give someone a heads-up
(前もって知らせる)
好意で先に伝えるときに使い、内通の含みがありません。tip someone off が文脈しだいで後ろ暗さを帯びるのに対して、こちらは終始善意の側に立ちます。

let something slip
(うっかり漏らす)
漏らした側の失敗に焦点があります。tip someone off が「相手に届いた結果」を見るのに対して、こちらは「口が滑った瞬間」を見る表現です。

blow someone’s cover
(正体をばらす)
隠していた身元そのものが露見する場合に使います。tip someone off がこれから起きることを先に知らせるのに対して、こちらはすでに隠れていたものが表に出ます。

Note|「先端で触れる」から「情報を渡す」へ、tip がたどった道

tip といえば、飲食店で渡すチップを思い浮かべる人が多いはずです。ところが同じ tip が、内密の情報を渡す意味でも使われています。この二つは、どこでつながっているのでしょうか。

英語の tip には、大きく分けて二つの流れがあります。ひとつは名詞の「先端」で、tiptoe(つま先立ち)や fingertip(指先)がこの系統です。もうひとつは動詞の「軽く触れる」「傾ける」で、こちらは古くから使われてきたとされます。

この「軽く触れる」の側から枝分かれしたのが、情報や少額の金銭を手渡す用法です。とりわけ競馬の世界では、内々の予想を伝える人を tipster と呼び、その情報自体を tip と呼ぶ習慣が広がりました。表立って公表するのではなく、知っている者が知らない者へそっと渡す。この構図が、tip off の骨格になっています。

現代では、その構図が制度としても定着しています。英語圏の警察や企業は匿名の通報窓口を tip line と呼び、報道でも tipped off という表現がそのまま使われます。日常会話の「感づかせる」と、報道記事の「通報を受けて」が、同じ一語で地続きになっているわけです。

こうして見ると、tip someone off が持つ独特の軽さの理由が見えてきます。渡されるのは正式な報告でも公表でもなく、指先ほどの合図にすぎません。劇中でジェーンが心配したのも、書類や証言ではなく、その程度の合図が漏れることでした。

指先ひとつぶんの動きが、捜査の行方を左右することもあります。

まとめ|「感づかれる」を一語で

tip someone off は、情報を渡す行為そのものよりも、渡ったことで相手が身構えるという結果に重心のある表現です。故意でも無自覚でも、届いてしまえば同じ語で言い表せます。

この一語を持っていると、「相手にばれる」「先に知られる」といった状況を、主語を人にも手がかりにも取れる柔軟な形で表現できるようになります。ニュース記事で tipped off を見かけたときも、誰から誰へ、どんな経路で渡ったのかを読み分けられるはずです。

うっかり漏らしたのか、意図して渡したのか。その線引きを保留したまま「伝わってしまった」と言える、そんな一語です。

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