海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン3第9話では、かつて隣に住んでいた青年ケネスが10年ぶりに訪ねてきて、人生の分かれ道ではいつも「フィルならどうするか」と自問してきたと語ります。その言葉を受けたフィルは、感謝祭の準備であれこれ工夫を凝らしますが、そのたびにクレアに止められます。
今回は、やんわり却下する言い方、squelch という動詞、そして「I love you, but」の but をめぐる応酬を順に見ていきます。
「One long table, honey.」でやんわり却下する
フィルは感謝祭の席に、長いテーブル1つではなく小さなテーブルを4つ並べました。そこへクレアが声をかけます。
Claire: Phil, why didn’t you just put the extra leaves in the table?
(フィル、なんで普通にテーブルの継ぎ板を足さなかったの?)Phil: Trying to have some fun, be creative.
(ちょっと楽しく、クリエイティブにやろうと思ってさ。)Claire: One long table, honey.
(長いテーブル1つよ、あなた。)Modern Family Season3 Episode9 (Punkin Chunkin)
why didn’t you just ~? の just には「普通に〜すればよかったのに」という響きがあり、相手の工夫を遠回しに退ける問いになります。One long table, honey. は理由を言わず、結論だけを短く示す返しです。honey という呼びかけが付くことで口調はやわらかく聞こえますが、中身は「いつもどおりにして」という却下です。やさしい呼びかけと、はっきりした結論が同居している点が、この短い一文の面白いところです。
- A: Why didn’t you just take the bus?
(普通にバスに乗ればよかったのに。) - B: I wanted to try a new route.
(新しい道を試してみたかったんだ。)
別の場面で、フィルが凝った形に折ったナプキンを見て、クレアは次のように言います。
Claire: I-I think you could make these simpler.
(こ、これ、もっとシンプルにできると思うけど。)Claire: Just, you know, sort of do ‘em flat and on the side.
(ほら、平らにして横に置くくらいで。)Phil: Hmm.
(ふーん。)Phil: Yeah.
(そっか。)Phil: Seems like that’s how you like me.
(君は俺にもそうしてほしいみたいだね。)Phil: Flat and on the side.
(平らで、脇に控えてろって。)Phil: You know what? Sometimes I need to be puffed up and frilly.
(あのさ、俺だってたまにはふくらんでフリフリになりたいんだよ。)Modern Family Season3 Episode9 (Punkin Chunkin)
I think you could ~ は「〜してもいいかも」と提案の形で修正を求める、角の立ちにくい言い方です。命令ではなく可能性として示すので、相手の手間を否定しすぎずに済みます。
フィルはナプキンの形容 flat and on the side を自分に当てはめ、目立たず脇に控えていろと言われているようだと返しています。puffed up and frilly はナプキンの形の言葉を借りて、自分も華やかに目立ちたいと主張する言い回しです。
「You squelch me.」で不満をぶつける
フィルはナプキン折りこそケネスの言う「フィルならこうする」だと言い、クレアが何か言いかけると、たまっていた不満を口にします。
Claire: I know, but, sweetie, they’re just looking a little
(分かってる、でもね、ちょっと見た目が……)Phil: Claire, you always do this.
(クレア、君はいつもこうだ。)Phil: You squelch me.
(俺を押さえつけるんだ。)Phil: You squelch me right when I’m about to soar.
(俺が羽ばたこうとするちょうどその時に押さえつける。)Claire: Honey, you’re folding napkins.
(あなた、ナプキンを折ってるだけでしょ。)Phil: You’re folding my dreams! You know what Kenneth told me? The secret to his success– his whole career, he’s tried to emulate me.
(君は俺の夢を折ってるんだ! ケネスが何て言ったと思う? 成功の秘訣はね、ずっと俺をお手本にしてきたことなんだって。)Phil: The only difference is, he hasn’t had someone constantly telling him what not to do.
(違うのは、あいつには、しちゃいけないことを言い続ける人がいなかったってことだけさ。)Modern Family Season3 Episode9 (Punkin Chunkin)
squelch は「押さえつける、黙らせる」という動詞で、反対意見や勢いをつぶすときに使われます。you always do this は「いつもこうだ」と相手の傾向を責める決まった言い回しで、口論の火種になりやすい一言です。クレアの you’re folding napkins に、フィルが you’re folding my dreams と同じ fold で返す言葉遊びも見どころです。ナプキンを「折る」と夢を「くじく」を一つの動詞で重ねた返しで、たかがナプキンという指摘を、自分の夢の話へと大きく広げています。
- A: Every time I suggest something, you squelch it.
(何か提案するたびに、君はそれをつぶすよね。)
この後クレアは「Let’s review the squelch pile」と、これまで止めてきた案を一つずつ挙げていきます。直前にはクレア自身が「shooting down your great ideas」と言っており、この shoot down は同じ回のフレーズ記事で扱っています。
「I love you, but」の but に本音が来る
フィルが以前の発案を実演して見せたあと、クレアが言いかけます。
Claire: I love you, Phil, but you–
(愛してるわ、フィル。でもあなたって――)Phil: Stop.
(ストップ。)Phil: I love your “I love you.
(君の「愛してる」は大好きだよ。)Phil: I’m getting awful tired of your “but.
(でも、君の「でも」にはもう本当にうんざりなんだ。)Phil: I heard it.
(聞こえてたからね。)Modern Family Season3 Episode9 (Punkin Chunkin)
I love you, but ~ は、前半で気持ちを示してから but の後に本題を置く型です。英語では but の後ろに言いたいことが来るため、聞く側はそこに身構えます。フィルは but の続きが出る前に Stop. と遮り、「but」そのものを名詞のように扱って不満を伝えています。I’m getting awful tired of ~ の awful は、口語で「ひどく、すごく」と程度を強める使い方です。「〜にはもううんざりだ」という気持ちを、くだけた調子で伝えられます。
your “I love you” と your “but” のように、相手の決まり文句を引用符ごと名詞として扱い、所有格を付けると「君のいつもの〜」という含みが生まれます。最後の I heard it. は、文の続きは言わせなくても、but はもう聞こえた、と念を押す一言です。
- A: I like the plan, but…
(その計画はいいと思う、でも……) - B: Here comes the “but.”
(ほら、「でも」が来た。)
まとめ|水を差す言葉と、差された側の言葉
One long table, honey. や I think you could make these simpler. で相手の案を退け、You squelch me. や but への不満で押し返す。止める側と止められる側、両方の言い方が一つの家の中にそろっています。
同じ家族の言い合いは、これからも『モダンファミリー』の中でくり返し見られます。
この回のフレーズ記事やほかのコラムでも、感謝祭の日のやり取りを別の角度から取り上げています。


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