海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
子どもの手作り作品を前に、本当はそこまでの出来ではないと分かっていても、つい「すごいね」と持ち上げてしまう瞬間が、家族の間には時々あります。
そんな親心にぴったりの「build someone up」を、『モダンファミリー』シーズン3第9話の前半、マニーの手作りセンターピースをめぐってグロリアとジェイが言い合う場面から、一緒に見ていきましょう。
「build someone up」の意味とニュアンス
build someone up
意味:人を褒めたり励ましたりして自信をつけさせる
build someone upは、言葉や態度を積み重ねて相手の自信や士気を高めていく様子を表す口語表現です。buildは「築き上げる」、upは「上へ」という方向を示す副詞で、一度きりの褒め言葉ではなく、時間をかけて相手の内面を支えていくプロセスに重点が置かれています。
本心からの励ましにも、多少大げさな持ち上げにも使える幅の広さがあり、文脈によってポジティブにもやや皮肉っぽくにも響きます。試合前に選手を勇気づける場面、緊張している友人の背中を押す場面、子どもの自信を育てる子育ての場面など、相手の心を上向かせたいときに広く使われる表現です。
反対の意味を持つtear someone downと組み合わせて覚えると、up/downという方向性のイメージがより鮮明になります。相手の実力を過大評価しているかどうかよりも、その人に向ける姿勢そのものに焦点が当たっている表現だと捉えておくと、使い方のイメージがつかみやすくなります。
【ここがポイント!】
- 「build someone up」の核は、言葉を積み重ねて相手の自信を高めていくイメージ
- 本心の励ましにも、やや過剰な持ち上げにも使える幅のある表現
- 反対語tear someone downと対で覚えると、up/downの方向性が記憶に残りやすい
『モダンファミリー』S03E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
感謝祭の準備中、マニーが手作りしたセンターピースを披露したあと、グロリアがその出来栄えを手放しで褒めちぎる場面です。冷静なジェイがその褒め方に疑問を投げかけると、グロリアが母親としての信念をはっきりと言葉にします。手放しの称賛と冷静な指摘のあいだで、フレーズの意味がどう立ち上がってくるのか、その温度差に注目しながら見ていきましょう。
Gloria: Mi amor, I’m so proud of you. Is there nothing in the world that you can’t do?
(愛しい子、あなたのこと誇りに思うわ。あなたにできないことなんて、この世にあるのかしら?)Jay: Centerpieces, for starters.
(センターピースとか、いろいろあるだろ。)Gloria: Shh!
(しー!)Jay: Why do you say everything of his is great, even if it isn’t?
(なんでお前は、あいつのやることを何でもかんでも、そうじゃなくても「すごい」って言うんだ?)Gloria: Because I’m building him up. That’s what parents do.
(あの子に自信をつけさせてるのよ。それが親のすることでしょ。)Jay: Too much, if you ask me.
(俺に言わせりゃ、やりすぎだけどな。)Modern Family Season3 Episode9 (Punkin Chunkin)
シーン解説と心理考察
グロリアが「あなたのこと誇りに思うわ。あなたにできないことなんてあるのかしら?」とマニーを絶賛すると、ジェイはすかさず「センターピースとか、いろいろあるだろ」と皮肉を挟みます。グロリアが「しー!」と制止しても、ジェイは「なんでお前は、あいつのやることを何でもかんでも『すごい』って言うんだ?」と核心を突く質問を重ねます。
グロリアの「あの子に自信をつけさせてるのよ。それが親のすることでしょ」という返答には、完璧な出来だとは思っていなくても、子どもの自信を優先して育てようとする母親の信念が表れています。「俺に言わせりゃ、やりすぎだけどな」というジェイの締めくくりには、甘やかしがちなグロリアと現実主義なジェイという、この夫婦の子育て観の違いが凝縮されています。二人のやり取りがテンポよく噛み合っているところにも、この夫婦らしい間合いが見て取れます。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
土台(build)を積み上げる(up)ように、言葉をひとつひとつ重ねて相手の自信を高めていく様子を思い浮かべてみましょう。建物が少しずつ形になっていくイメージが、そのまま「人を励まして自信をつけさせる」という意味につながります。
グロリアがマニーに向けた惜しみない称賛も、この積み上げの一例です。完璧な出来かどうかよりも、積み上げていく過程そのものを大事にする姿勢が、build someone upという言葉の芯にある考え方と重なります。
例文で覚える「build someone up」
build someone upは家庭からビジネスまで幅広く使われる表現なので、3つの例文で場面の違いを確認していきましょう。
Good coaches know how to build their players up before a big game.
(優れたコーチは、大事な試合の前に選手たちの自信を高める方法を知っている。)
スポーツの場面で使える表現です。before a big gameのように具体的な状況を添えると、励ましのタイミングがはっきり伝わります。
A good manager builds up the team instead of criticizing every mistake.
(良い上司は、ミスのたびに叱るのではなく、チームの自信を育てる。)
マネジメントの姿勢を語るビジネスシーンです。instead ofを使って対比を示すと、build upの持つ前向きな方向性が際立ちます。
A: He seems so confident on stage.
B: His parents have always worked hard to build him up.
(A:彼、舞台の上ではすごく自信ありげだね。)
(B:両親がずっと彼を励まし続けてきたのよ。)
人の自信の理由を語る日常会話です。alwaysと組み合わせることで、一度きりではなく積み重ねてきた励ましであることが伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
boost someone’s confidence
(誰かの自信を高める)
boost someone’s confidenceが直接的で説明的な言い方であるのに対し、build someone upは口語的で、支え続けるという過程のニュアンスがより強く出ます。
cheer someone on
(~を応援する)
cheer someone onが一時的な応援の掛け声に近いのに対し、build someone upは継続的に自信を育てていく行為を指します。
tear someone down
(誰かをけなす、自信を打ち砕く)
build someone upの正反対の意味を持つ表現です。同じ「動詞+人+副詞」の構文なので、upとdownを対にして覚えると記憶に残りやすくなります。
Note|build someone up / boost someone’s confidence / cheer someone onの違い
build someone upのように相手を励ます表現は英語にいくつもありますが、それぞれ「どれくらい続く働きかけか」という視点で見比べると使い分けが見えてきます。
もっとも一時的なのがcheer someone onで、試合の応援やその場限りの掛け声のように、瞬間的な後押しを表します。Everyone cheered him on at the finish lineのように、短い時間の中で声援を送るイメージです。boost someone’s confidenceはそれよりも直接的で、具体的な出来事や言葉によって自信の量そのものを引き上げる場面で使われます。Passing the test boosted her confidenceのように、原因と結果がはっきりしているのが特徴です。これに対してbuild someone upは、今回のグロリアの発言のように、日々のやり取りを積み重ねて相手の内面をじわじわと支えていく、時間をかけたプロセスを表します。一度の言葉ではなく、継続的な関わり方そのものを指す点が、他の2つと大きく異なるところです。3つとも「相手を励ます」という大枠は共通していますが、瞬間の声援か、単発の出来事による後押しか、日々の積み重ねかという時間軸の違いで住み分けていると考えると整理しやすくなります。
グロリアがマニーに向ける態度がbuild someone upにあたるのも、それが一度きりの称賛ではなく、日常的に繰り返されている関わり方だからだと分かります。センターピースという一つの作品への評価にとどまらず、マニーという人そのものへの関わり方として続いているところが、この表現にふさわしい理由です。
一時的な声援か、じわじわ積み上げる支えか、意識して選び分けると表現の幅が広がります。
まとめ|完璧さよりも積み重ねを選ぶ励まし
build someone upは、言葉や態度を積み重ねて相手の自信や士気を高めていく口語表現です。
一度きりの褒め言葉ではなく、日々の関わりの中で相手を支え続ける行為を指すからこそ、子育てから職場のマネジメントまで幅広い場面で使えます。
出来栄えそのものよりもマニーの自信を育てることを優先するグロリアの姿勢と、それに現実的な視点を挟むジェイとのやり取りからは、それぞれ異なる形の愛情表現が読み取れます。褒めて伸ばすか、現実を伝えて鍛えるか、家庭によって重心の置き方が変わるのも自然なことです。


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