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『モダンファミリー』シーズン10第3話では、ジェイとクレアが、新しいパートナーの会社で一緒に働き始めます。出社時間も、オフィスでの過ごし方も、2人がこれまで知っていた職場とはまるで違います。
アメリカのスタートアップ企業の職場は、自由な社風がよく話題になります。勤務時間、オフィスの遊び道具、そして働き方への考え方という3つの切り口から、劇中の会社の文化を見ていきます。
時間にうるさくない職場と「9時に席に着く」職場
オフィスに着いたクレアが、遅れたかどうかを尋ねます。答えるのは、この会社のニックです。
Claire: I’m sorry.
(ごめんなさい。)
Claire: Am I late?
(遅れたかしら?)
Nick: No, no, no, no.
(いやいや、全然。)
Nick: Oh.
(あっ。)
Nick: And we’re not real time sticklers here.
(それに、うちは時間にはあまりうるさくないんで。)
Nick: We’ve found that team members really excel when they follow their own energy rhythms.
(社員は自分のエネルギーのリズムに合わせて動くと、すごく力を発揮するって分かったんです。)
Claire: Mm-hmm.
(うんうん。)
Claire: Mm-hmm.
(うんうん。)
Modern Family Season10 Episode3 (A Sketchy Area)
stickler は「(規則などに)うるさい人」で、a stickler for time や time stickler の形で「時間に厳しい人」を表します。ニックの会社は時間に厳しくせず、各自の調子に合わせて働くことをよしとしています。
アメリカのIT系スタートアップでは、出社や退社の時刻を個人に任せる flexible hours(柔軟な勤務時間)が話題になることが多いと言われます。ただし実際の運用は、会社や業種によって大きく異なります。自分の都合に合わせて働くことは、英語で work on one’s own schedule と表すこともあります。
これに対してジェイは、会社が続いてこそ社員は幸せで、そのためには9時には全員が席に着いているべきだと返します。時間を守ることを職場の基本とする、長く会社を率いてきたジェイらしい考え方です。同じ「社員のため」という言葉から、正反対の働き方が出てくる場面と言えます。
卓球台と「We don’t keep score」の社風
オフィスで、ジェイが口を開きます。
Jay: Does anybody else find that distracting?
(ほかに誰か、あれが気にならないのか?)
Mia: Actually, it’s great for left-brain stimulation.
(実は、左脳の刺激にすごくいいんです。)
Claire: I got winner!
(勝った人と次やる!)
Mia: We don’t keep score.
(点数は数えないんです。)
Claire: No?
(数えないの?)
Modern Family Season10 Episode3 (A Sketchy Area)
スタートアップのオフィスでは、卓球台やゲーム機などの遊び道具が置かれている例がよく紹介されます。気分転換や社員同士の交流のため、と説明されることが多い設備です。
クレアの I got winner! は、卓球やビリヤードで「勝った人と次に対戦する」と順番を取るときの口語です。ところがミアは We don’t keep score. と返します。keep score は「点数をつける」で、勝ち負けを決めないという社風がこの一言に表れています。
危ないという声が上がったあと、ニックはこう説明します。
Nick: You don’t know about Zorbing? It promotes mind/body balance.
(ゾービングを知らないんですか? 心と体のバランスを整えるんですよ。)
Nick: It’s kind of like the German version of Flerming.
(ドイツ版のフラーミングみたいなものです。)
Jay: Okay, that’s it.
(よし、もうたくさんだ。)
Jay: Now, I’m about to introduce you squids to a little thing called back-breaking, soul-crushing hard work.
(いいか、今からお前らひよっこに、骨が折れて魂がすり減るほどのきつい仕事ってやつを教えてやる。)
Modern Family Season10 Episode3 (A Sketchy Area)
distracting は「気が散る」で、ジェイは遊びそのものより、仕事の妨げになる点を問題にしています。一方のミアは left-brain stimulation(左脳への刺激)と、遊びにも仕事上の効果があると説明します。
ニックの mind/body balance と、ジェイの back-breaking, soul-crushing hard work は、働き方についての考えの違いをそのまま映しています。同じオフィスの遊びを、片方は効果として、片方は妨げとして語るところに、2つの職場文化の違いが表れています。
「gone soft」と「stuffy killjoys」で表す働き方の違い
ジェイの引き締めを受けて、クレアは別の心配を抱きます。
Claire: Just as I feared, my dad had crushed the spirit of everyone in that office.
(心配したとおり、父はあのオフィスのみんなの気持ちをすっかりくじいてた。)
Claire: I had to do something to prove we weren’t some stuffy killjoys.
(私たちが堅苦しい興ざめ人間じゃないって、何かで証明しなきゃいけなかった。)
Claire: It was time to bust out Party Claire.
(パーティー・クレアの出番だったの。)
Modern Family Season10 Episode3 (A Sketchy Area)
stuffy は「堅苦しい」、killjoy は「人の楽しみに水を差す人」です。クレアは、自分たちが堅苦しい人間だと思われることを気にしています。bust out ~ は「〜を引っぱり出す」という口語で、クレアは自分の中の「パーティー・クレア」という一面を持ち出して、場の空気を変えようとします。
ところが、ニックの受け止め方は違いました。ニックはジェイに礼を言いに来ます。
Nick: Because we have gone soft as a company, we needed a couple grown-ups to come in and put us back on track.
(会社として甘くなってたので、大人に入ってもらって立て直してもらう必要があったんです。)
Nick: You know, thanks to you, we’ve gotten rid of all the distractions no more ping-pong tables, squirt guns.
(おかげで、気が散るものは全部片付けました。卓球台も水鉄砲も、もうありません。)
Modern Family Season10 Episode3 (A Sketchy Area)
go soft は「たるむ、甘くなる」、put ~ back on track は「〜を軌道に戻す」です。get rid of ~ は「〜を取り除く」という句動詞で、ニックは片付けた物を後ろに並べています。自由な社風を掲げていた側が、実は引き締め役を求めていたという意外な展開になっています。自由な社風がいつも歓迎されるとは限らず、規律を取り戻したいと考える会社もあると言われます。そこへクレアが乗り込み、本人の言葉を借りれば職場で大騒ぎを起こしてしまいます。後でクレアは、友だちのいた前の職場に戻りたいとこぼします。
まとめ|自由な社風と昔ながらの働き方
time sticklers を嫌う柔軟な勤務、卓球台と We don’t keep score の社風、gone soft を自覚する会社の本音を見てきました。職場文化を表す英語は、働き方の価値観の違いを知る手がかりになります。
新旧の働き方がぶつかる『モダンファミリー』のオフィスの場面を観ながら、職場の英語に触れてみるのもひとつの楽しみ方です。
この回のほかのコラムでは、相手の領分に気をつかう前置きや、進路に迷う相手への助言も取り上げています。


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