海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン10第3話では、フィルがルークの通う短大で不動産の講座を受け持つことになります。ところがその学校は、ルークにとって、今まで持てなかった自分だけの場所でもありました。
相手の専門や縄張りに口を出すとき、英語では前置きひとつで印象が変わります。反対意見を切り出す言い方と、相手の領分を尊重して一歩引く言い方を、2つの場面から比べていきます。
「with all due respect」で専門家に意見を切り出す
フィルは、グレンが受け持つ不動産の授業を教室で聞いています。数字と公式が続く講義の途中で、フィルが口を開きます。
Phil: Well, um, with all due respect, uh, you have a roomful of aspiring Realtors here, and I worry that you might be turning them off with all those numbers and formulas.
(あの、えー、お言葉ですが、ここには不動産屋を目指す人たちがそろってるのに、その数字と公式の山でみんなの気持ちが離れちゃうんじゃないかと心配で。)
Phil: It’s actually a very exciting business.
(本当はすごくワクワクする仕事なんですよ。)
Phil: It’s about people and and emotional connections and magnets with your face on them.
(人と人、心のつながり、それに自分の顔入りのマグネットの仕事なんです。)
Glen: You think you can just walk in here and start teaching this class?
(いきなり入ってきて、この授業を教えられるとでも思ってるのか?)
Phil: I’m so sorry.
(本当にすみません。)
Phil: I shouldn’t have
(余計なことを……)
Glen: No, I’m asking can you teach this class for me? If I leave now, I won’t have to pay the all-day parking rate.
(いや、頼んでるんだよ。この授業、代わりに教えてくれないか? 今出れば、一日分の駐車料金を払わずに済むんでね。)
Modern Family Season10 Episode3 (A Sketchy Area)
with all due respect は「しかるべき敬意を払ったうえで」が元の意味で、目上の人や専門家に反対意見を言う前のクッションとして置かれます。直訳すると丁寧ですが、この前置きのあとには相手と違う意見が来るのが普通です。そのため、言われた側が「これから反論される」と身構えることもあります。
フィルはさらに I worry that you might be ~ing と続け、「〜になっているのでは」と懸念の形で指摘しています。断定を避けて自分の心配として言うことで、相手の講義そのものを否定しない形になっています。
グレンの You think you can just walk in here and ~? は、普通なら「いきなり来て〜できると思うのか」と出しゃばりをとがめる言い回しです。フィルもそう受け取って謝りかけますが、グレンは No, I’m asking と続け、実は頼みごとだったと明かします。フィルは学部長と10分話しただけで、正式に講師になりました。
「教える側」が身を引くときの英語
講座を任されたフィルですが、ある日の授業で受講生にこう告げます。
Phil: Students, today is our last day together.
(みんな、今日が一緒に過ごす最後の日だ。)
Phil: Shh, shh.
(しーっ、しーっ。)
Phil: I’ve treasured our time together.
(みんなと過ごした時間は宝物だよ。)
Phil: Brett, I know we got off to a rough start, but once we broke down those walls, I’m not sure who was teaching who.
(ブレット、最初はぎくしゃくしたよな。でも壁を取っ払ってからは、どっちが教えてたのか分からないくらいだった。)
Modern Family Season10 Episode3 (A Sketchy Area)
today is our last day together は、授業や職場を去る人が別れを切り出すときに使える形です。I’ve treasured our time together の treasure は動詞で「大切にする」を表し、現在完了にすると「これまでずっと大切に思ってきた」という振り返りになります。
get off to a rough start は「出だしでつまずく」という句動詞の表現で、受講生のひとりとの関係を振り返っています。break down those walls は、心の壁を取り払うという比喩で、打ち解けるまでの過程を表しています。別れのあいさつに、最初の苦労と今の感謝を並べる組み立てです。
授業のあと、フィルはルークと話します。フィルの訴えに対して、ルークの答えははっきりしています。
Phil: Come on! Can’t you see I’m meant to be here?
(頼むよ! 俺はここにいるべき人間だって分からないか?)
Luke: I’m sorry, but I’ve never had a school to myself.
(悪いけど、自分だけの学校なんて今まで一度もなかったんだ。)
Modern Family Season10 Episode3 (A Sketchy Area)
be meant to be ~ は「〜にいるべく生まれてきた」という運命めいた響きを持つ表現です。ルークは謝りながらも、ここは自分の場所だと伝えています。
「I’d hate to step on your toes」で相手の領分を尊重する
その後、ルークのほうから歩み寄る提案が出ます。
Luke: So, listen.
(それでさ、聞いて。)
Luke: This is a big campus.
(このキャンパス、広いだろ。)
Luke: Maybe we could both be here if we promise to stay out of each other’s way.
(お互いの邪魔をしないって約束すれば、2人ともここにいられるんじゃないかな。)
Phil: Well, I’d hate to step on your toes.
(うーん、お前の縄張りを荒らすのは気が進まないなあ。)
Luke: No, no, y-you wouldn’t.
(いやいや、そ、そんなことにはならないよ。)
Luke: I would hate to stop you from doing something you’re so good at.
(父さんがすごく得意なことを、俺がやめさせるのは嫌なんだ。)
Phil: I guess I could think about it.
(まあ、考えてみてもいいかな。)
Modern Family Season10 Episode3 (A Sketchy Area)
step on someone’s toes は直訳すると「人のつま先を踏む」で、相手の担当や縄張りに踏み込んで気分を害することを指します。I’d hate to ~ は「〜するのは嫌だ」と自分の気持ちとして言う形で、合わせると「あなたの領分を侵したくない」という遠慮になります。職場でほかの担当の仕事に意見したいときに、I don’t want to step on anyone’s toes, but ~ と切り出す形もあります。
with all due respect が反対意見を言う前に置くクッションなのに対し、I’d hate to step on your toes は相手の立場を優先して一歩引く言い方です。前者のあとには意見が続き、後者のあとには遠慮や確認が続くという違いがあります。
ルークは I would hate to stop you from ~ と同じ形で返し、得意なことをやめさせたくないと伝えます。stay out of each other’s way と合わせて、お互いの領分を守りながら同じ場所にいる道を探す会話になっています。フィルの I guess I could think about it は、乗り気な気持ちを控えめに表した返事です。
まとめ|意見を言う前置きと一歩引く前置き
with all due respect は反対意見を切り出す前のクッション、I’d hate to step on your toes は相手の領分を尊重して一歩引くための前置きです。2つを使い分けると、言いにくいことも角を立てずに伝えやすくなります。
フィルとルークの親子のやりとりを観ながら、前置きひとつで変わる英語の響きに耳を傾けるのも、この回の楽しみ方のひとつです。
この回のほかのコラムでは、進路に迷う相手への助言や、新しい職場の文化の違いも取り上げています。


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