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『モダンファミリー』シーズン4第20話では、クレアとキャメロンが手がけた家の売却をめぐり、不動産業者のフィルと同業者のギルが、買い値をめぐって押し合います。強気に迫る側とはねつける側の言葉が、場面ごとに入れ替わっていくのが、この回の面白さです。
交渉の切り出し方、「後悔するぞ」という揺さぶり、そして立場が逆転したときの一言まで、順に見ていきます。
「My buyer wants in.」と交渉の切り出し
最初の交渉は、フィルとギルが食事をともにする場面です。ギルは家の出来をほめたあと、すぐに本題に入ります。
Gil: You guys did a nice job on the house.
(あんたらは、あの家でいい仕事をしたよ。)Gil: My buyer wants in.
(うちの買い手が乗り気だ。)Phil: Fantastic! That is great news! You know, when we first got into this–
(最高だ! いい知らせだよ! いやあ、最初にこれを始めたときは――)Gil: Whoa, the small talk’s over.
(おっと、世間話はそこまでだ。)Gil: Here’s what we’re prepared to offer.
(こっちが出せる額はこれだ。)Phil: You’re joking, right?
(冗談だろ?)Gil: I don’t joke about real estate.
(不動産のことで冗談は言わない。)Modern Family Season4 Episode20 (Flip Flop)
want in は「加わりたい、一枚かみたい」という口語で、ここでは「買い手が購入に乗り気だ」という意味になります。ギルはこの一言の前に「正直に言おう」と前置きし、家の出来を認めてから話を進めます。ほめてから条件を切り出す順番は、交渉の場面で見られることのある運び方です。
フィルが思い出話を始めかけると、ギルは the small talk’s over で遮ります。small talk は本題前の雑談のことで、それを「もう終わり」と打ち切ってから Here’s what we’re prepared to offer. と条件を示す流れです。be prepared to ~ は「〜する用意がある」という硬めの言い方で、提示する側の構えが伝わってきます。
提示を見たフィルの You’re joking, right? に、ギルは I don’t joke about real estate. と返します。金額が台詞で読み上げられないぶん、2人のやり取りだけで、その額がフィルの期待とかけ離れていることが分かります。
「Take it.」と「you’re gonna regret it」
フィルは、売りに出したばかりで、その額では利益がほとんど出ないと断ります。ギルは「Take it.」と迫り、さらに言葉を重ねていきます。
Gil: The market’s crashing!
(市場は暴落してるんだぞ!)Phil: Nuh-unh.
(してないね。)Gil: You’re in over your head.
(あんたの手には負えないよ。)Phil: Maybe you’re in over your head.
(手に負えないのはそっちかもな。)Gil: Dunphy, listen to me.
(ダンフィー、よく聞け。)Gil: If you pass up on this, you’re gonna regret it.
(これを見送ったら、後悔することになるぞ。)Phil: I don’t know the meaning of the word “regret.
(俺は「後悔」って言葉の意味を知らないね。)Modern Family Season4 Episode20 (Flip Flop)
Take it. は「(その条件を)のめ」と、受け入れを迫る短い命令です。市況の話に対するフィルの Nuh-unh. は「違うね」と否定するくだけた口語で、相手の主張を軽くいなす返し方です。
ギルは市況の悪さを持ち出し、相手の力量を疑う in over your head(手に負えない)を挟み、最後に If you pass up on this, you’re gonna regret it. と迫ります。pass up (on) は「(機会などを)見送る、逃す」という意味で、「この機会を逃すと後悔する」という形は、決断を急がせるときの言い回しとして使われます。
フィルの I don’t know the meaning of the word “regret.” は、「後悔なんて言葉は知らない」と強がる決まり文句の形です。相手の脅しの言葉をそのまま拾って突き返すことで、引かない姿勢を示す返しです。手に負えないという言い返しの応酬も含め、互いに一歩も譲らない場面と言えます。
「Let me stop you right there.」と立場の逆転
その後、ギル側の提示額はさらに下がります。フィルはギルに電話をかけますが、ギルは折れて連絡してきたと受け取り、主導権を握ろうとします。
Phil: Gil, I wanna talk to you about your offer.
(ギル、そっちの提示額について話がしたいんだ。)Gil: Oh, ho! Let me stop you right there.
(おっと! そこまでにしてもらおう。)Gil: This is how this is gonna go down.
(話はこう進むんだ。)Modern Family Season4 Episode20 (Flip Flop)
Let me stop you right there. は相手の話を途中で遮る言い方で、This is how this is gonna go down. は「こういう段取りで進む」と主導権を宣言する一言です。ところが電話の途中で、ルークが友人のザックがまだ家を探していると口にします。それを受けてフィルは態度を変えます。
Phil: Guess what, Gil.
(なあ聞いてくれよ、ギル。)Phil: This was a courtesy call to tell you that I have another buyer.
(この電話は、別の買い手がいるって知らせるための、礼儀としての連絡だよ。)Phil: So you can tell your buyer that you cost them a great house Because you got cocky and overplayed your hand.
(だからそっちの買い手に伝えてくれ。あんたが調子に乗って強気に出すぎたせいで、いい家を逃したってな。)Modern Family Season4 Episode20 (Flip Flop)
courtesy call は「儀礼上の連絡、念のためのご連絡」です。丁寧な名目で突き放すところに、フィルの切り返しの妙があります。
そして終盤、もう一度ギルと話す場面では、2人の立場がすっかり入れ替わります。
Phil: I’m busy, Gil.
(忙しいんだ、ギル。)Gil: Don’t accept any offers without talking to me first.
(俺に話を通す前に、どの申し込みも受けるなよ。)Gil: My buyer wants in, all right?
(うちの買い手が乗り気なんだ、いいな?)Phil: I don’t know.
(どうかな。)Phil: We’re pretty far down that road.
(話はかなり先まで進んでるからね。)Gil: All right.
(分かった。)Gil: We’ll up the offer.
(額を上げよう。)Modern Family Season4 Episode20 (Flip Flop)
without talking to me first は「先に自分に相談せずに」、far down that road は「その道をだいぶ進んでいる=話がかなり進んでいる」というたとえです。up the offer の up は動詞で、「提示額を引き上げる」を表します。最初は「Take it.」と迫っていたギルが、最後は自分から額を上げる側に回っているのが分かります。
| 表現 | 場面での働き |
|---|---|
| Here’s what we’re prepared to offer. | 条件を提示する |
| If you pass up on this, you’re gonna regret it. | 見送れば後悔すると迫る |
| Let me stop you right there. | 相手の話を遮る |
| This was a courtesy call. | 念のための連絡だと告げる |
| We’ll up the offer. | 提示額を引き上げる |
まとめ|押す言葉と、押し返す言葉
Here’s what we’re prepared to offer. で始まった交渉は、you’re gonna regret it の揺さぶりと courtesy call の切り返しを経て、We’ll up the offer. にたどり着きます。強気の一言がどちらの口から出るかで、交渉の力関係が見えてきます。
次回も『モダンファミリー』と一緒に、会話の駆け引きを英語で追っていきましょう。
この回の家族の本音や、買い手を迎える場面の英語は、同じ回のほかのコラムやフレーズ記事でも扱っています。


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