海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン6第5話で、ミッチェルとキャメロンは、娘リリーを担任のプランク先生のクラスから別のクラスへ移したいと考え、先生のもとを訪ねます。その話し合いの最中、先生はキャメロンの英語をその場で言い直します。
比較の than の後ろに her を置くのか she を置くのかは、学校で習った覚えがあっても迷いやすいところです。先生の言い直しと2人の返しを順に追いながら、代名詞の形の使い分けを整理していきます。
「than her」を「than she」に言い直す先生
もう一人の2年生の担任、スパロウ先生のクラスに空きが出たことがきっかけで、2人はリリーをそちらへ移そうとします。プランク先生は、親が担任を選ぶことはできないと告げます。その後、スパロウ先生のクラスのほうがリリーに合うのではないかという話になり、キャメロンは取りなすようにこう続けます。
Cameron: Okay, well, we didn’t mean to offend you.
(いや、気を悪くさせるつもりはなかったんだ。)Cameron: We’re not saying you’re any worse than her.
(あなたがあの先生より劣ってるって言いたいわけじゃない。)Mrs. Plank: She.
(she です。)Cameron: Ma’am?
(はい?)Mrs. Plank: “Than she.
(「than she」。)Mrs. Plank: That’s proper English.
(それが正しい英語です。)Mrs. Plank: It’s too bad Lily won’t learn it.
(リリーがそれを学べなくなるのは残念ですね。)Modern Family Season6 Episode5 (Won’t You Be Our Neighbor)
キャメロンの worse than her は、日常会話ではごく普通に聞かれる形です。一方、先生が「proper English」と呼ぶ than she は、than を接続詞とみなし、後ろに she is の is が省かれていると考える形です。一般に、くだけた会話では than her が自然で、改まった書き言葉では than she が好まれるとされることが多いようです。
迷ったときは、後ろに動詞を足してみると整理しやすくなります。worse than she is と言い切ってしまえば、文法上の迷いはなくなります。
この違いが意味に響くこともあります。He likes you more than me. は「彼は私よりあなたが好き」とも読めますが、He likes you more than I do. と動詞を添えると「私があなたを好きな以上に、彼はあなたが好き」とはっきりします。言い直しの場面は、比較の文で代名詞が何を表しているかを意識するきっかけになります。
「worry about she」はなぜおかしく聞こえるのか
ミッチェルが、それならリリーは移れるのかと確かめると、先生は、自分の中ではもう出て行ったも同然だと返します。クラス替えは認められた形ですが、ミッチェルはこう言い返し、キャメロンも続きます。
Mitchell: Okay, you know what? No.
(いや、あのですね、違います。)Mitchell: Lily will be fine, ‘cause she’s gonna have the chance to thrive in a more supportive environment.
(リリーは大丈夫です。もっと支えてくれる環境で伸び伸び育つチャンスをもらえるんですから。)Cameron: Yeah, you don’t need to worry about she.
(そう、she の心配はご無用。)Modern Family Season6 Episode5 (Won’t You Be Our Neighbor)
ミッチェルの she’s gonna have the chance は、she が文の主語に立つ形です。これに対してキャメロンの worry about she は、前置詞 about の後ろに主語の形 she を置いています。前置詞の後ろには目的語の形が来るため、普通は worry about her と言います。Don’t worry about her.(彼女のことは心配しないで。)のように、about の後ろに her を置くのが基本の形です。
直前に先生が her を she に言い直したばかりなので、その言い直しをなぞった返しとして響くのが面白いところです。
| 主語の位置 | 前置詞・動詞の後ろ |
|---|---|
| she | her |
| he | him |
| I | me |
| we | us |
| they | them |
この表のどちらの形を使うかは、文の中での位置で決まります。than の後ろは、先ほど見たように両方が使われる位置です。
「object」のもう一つの意味
ところがクラス替えを知らされたリリーは、本を読んだり算数を学んだりしたいと話し、なんとかしてほしいと2人に求めます。再びプランク先生を訪ねたミッチェルは、リリーに相談しないまま来てしまったと認め、キャメロンは、リリーが先生のクラスに残りたがっていると伝えます。
Mrs. Plank: I will take Lily back if you are able to tell me the object of this sentence
(この文の目的語を言えたら、リリーを戻してあげましょう)Cameron: Oh, gosh.
(うわ、まいった。)Mrs. Plank: Lily’s parents were wrong about Mrs. Plank.
(「リリーの両親はプランク先生のことを誤解していた」)Cameron: Do you know it?
(分かる?)Mitchell: I
(え……)Mitchell: I
(えっと……)Mitchell: I think that the object is to humiliate us?
(この文の目的は、僕たちに恥をかかせること……かな?)Mrs. Plank: Correct.
(正解です。)Modern Family Season6 Episode5 (Won’t You Be Our Neighbor)
object には、文法用語の「目的語」と、日常語の「目的・狙い」という2つの意味があります。先生が尋ねたのは前者ですが、ミッチェルは the object is to ~(狙いは〜すること)の形で後者の意味に寄せて答えています。日常の英語でも、The object of the game is to ~(このゲームの目的は〜すること)のように、object を「目的」の意味で使う言い方があります。
文法の問いとして見ると、例文の Mrs. Plank は about の後ろにあり、前置詞の目的語にあたる位置です。ここで she と her の話に戻ると、about の後ろに来る代名詞は her になる、という前のセクションの説明ともつながります。先生の「Correct.」がどちらの意味での正解なのかは語られず、2つの意味が重なったまま場面が締めくくられます。
まとめ|代名詞の形は文の中の位置で決まる
比較の than の後ろは、会話の than her と、改まった形の than she の両方が使われます。前置詞の後ろは worry about her のように目的語の形が基本で、object には「目的語」と「目的」の2つの意味があります。位置を意識すると迷いが減ります。
リリーのクラスをめぐる言葉のやりとりを観ながら、次回も『モダンファミリー』で英語の細かな仕組みを見つけていきましょう。
隣家の売却や靴下の発明をめぐる英語は同じ回のほかのコラムで、それぞれの表現の使い方はフレーズ記事でも扱っています。


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