海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
長く続けてきた仕事や活動に、自分の意志で区切りをつけることがあります。その決断を短い一言で伝える場面もあります。
そんな場面で使える「hang it up」を、『モダンファミリー』シーズン10第16話の後半、ジェイが自分の引き際についてクレアに語る会話から、一緒に見ていきましょう。
「hang it up」の意味とニュアンス
hang it up
意味:(長く続けた仕事や活動などを)やめる、引退する、見切りをつける
hang it upは、続けてきた仕事、趣味、競技などを、もうやめると決める言い方です。hangは「掛ける」、upは「上のほうへ」を表し、使い込んだ道具を高いところに掛けて、手から離してしまう絵が根底にあります。道具を手放すイメージから、活動そのものを手放す意味へとつながっています。
この表現のitは、特定の物を指していません。仕事や活動の全体を、まとめてitで受けています。そのため、何をやめるのかは、前後の文脈から読み取ります。物を壁に掛けるという文字どおりの意味でも使える形ですが、仕事や活動の話の流れで出てくれば、「やめる」の意味になります。
続けてきた年月の長さが前提にあるため、始めたばかりの活動にはなじみにくい表現です。長く関わってきたからこそ、区切りをつける重みが言葉に乗ります。
形としては、knows when to hang it upのように、「やめどきを知っている」という言い方に組み込まれます。ここには、年齢や状況を見て、自分で区切りをつけるという響きがあります。
作中のジェイは、自分の引き際を語る場面で、この表現を使っています。主語はジェイ自身で、人に勧めるのではなく、自分の決断を述べる使い方です。
【ここがポイント!】
- 「hang it up」の核は、使い込んだ道具を高いところに掛けて、手放すイメージ
- itは特定の物ではなく、仕事や活動の全体を指す
- knows when to hang it up の形で、「やめどきを知っている」と言える。自分の意志で区切りをつける響きがある
『モダンファミリー』S10E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェイが、仕事から身を引く理由をクレアに語る会話です。クレアが次の仕事を予想し、ジェイがそれを否定するところまで、父娘のやり取りが続きます。
Jay: No, I listened to what you said, and you’re never truly gonna be in charge until I get out of your way.
(いや、お前の言ってたことを聞いたんだよ。俺が道を空けないかぎり、お前は本当の意味で仕切る立場にはなれないだろ。)Claire: You didn’t have to do that for me.
(私のためにそんなことしなくてよかったのに。)Jay: I didn’t do it just for you. Every good closet man knows when to hang it up. And I I think I’m ready for a new challenge.
(お前のためだけじゃない。腕のいいクローゼット屋は、引き際をわきまえてるもんだ。それに、俺も新しい挑戦をする準備ができたと思うんだ。)Claire: Oh, Dad, not window tinting.
(ちょっとお父さん、まさか窓のフィルム貼りじゃないでしょうね。)Jay: It’s like printing money, but no, it’s not for me.
(あれは金を刷ってるようなもんだが、いや、俺には向かないな。)Modern Family Season10 Episode16 (Red Alert)
シーン解説と心理考察
ジェイは、クレアの言葉を聞き入れた、と切り出します。自分が道を空けないかぎり、クレアは本当の意味で仕切る立場にはなれない、というのがその内容です。身を引く理由を、まずクレアのために、と説明しています。
クレアは「私のためにそんなことしなくてよかったのに」と返します。身を引くことを「私のため」と受け取っている点から、クレアが、ジェイの決断を自分に関わる出来事として受け止めていることが分かります。
ここでジェイは、理由をもう一つ足します。「お前のためだけじゃない」と言ったうえで、hang it upを含む一言を続けます。「腕のいいクローゼット屋は引き際をわきまえている」という言い方は、自分の決断を、仕事人としての心得のように語っています。さらに「新しい挑戦をする準備ができた」と続け、身を引く理由が、クレアへの配慮だけでなく、自分自身の前向きな動機でもあることを示しています。
クレアは、次の仕事を先回りして「まさか窓のフィルム貼りじゃないでしょうね」と予想します。ジェイは、儲かる仕事だと認めつつも、自分には向かないと答えます。ジェイが新しい挑戦として選んだのは、犬用ベッドの事業です。娘への配慮と自分の引き際をあわせて語るジェイと、次の仕事を言い当てようとするクレアの間合いが、父娘らしい会話になっています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
着慣れた仕事着を、クローゼットのハンガーに掛ける姿を思い浮かべてみましょう。毎日袖を通していた一着を、ハンガーに掛けて、もう手に取りません。この「掛けて、手放す」動きが、hang it upの絵になります。
ジェイがクローゼット屋を自称していることを思い出すと、ハンガーに掛ける絵は、さらに覚えやすくなります。クローゼットに仕事着を掛ける動作と「やめどきを知っている」という言葉が重なり、引退や区切りの場面で、この言い方がすっと出てきます。
例文で覚える「hang it up」
長く続けた活動にけじめをつける場面を、3つの例文で確かめていきましょう。
After 30 years of teaching, she decided it was time to hang it up.
(30年教えてきて、彼女はやめどきだと決めた。)
定年や引退の決断を語る場面です。it was time toの形に入れると、「そろそろ区切りをつける時だ」という気持ちが伝わります。30 yearsのように年数を添えると、長く続けてきたことが前提だと分かります。
A: Are you still playing in the band?
B: No, we finally hung it up last year.
(A:まだバンドをやってるの?)
(B:ううん、去年とうとうやめたよ。)
活動をやめたことを友人に話す往復会話です。hangの過去形はhungなので、hung it upとなります。finallyを添えると、続けてきた年月の長さがにじみます。
The coach knows when to hang it up and let the younger staff take over.
(そのコーチは、若いスタッフに任せて身を引くやめどきを心得ている。)
引き際のよい人を評価する職場の場面です。作中のジェイと同じknows when toの形で、人柄を語っています。
あわせて覚えたい関連表現
call it quits
(やめにする)
やめると宣言する感じが強い、口語的で軽い言い方です。hang it upは、長く続けた仕事や競技に区切りをつける重みがあります。
step down
(役職を退く)
地位や役職から降りることに限られ、改まった場面でも使えます。hang it upは、役職に限らず、活動全般をやめる口語表現です。
throw in the towel
(降参してやめる、あきらめる)
うまくいかず、負けを認めてやめるニュアンスです。hang it upは、自分の意志で区切りをつける場合にも使えます。
Note|know when to・it’s time to、hang it upが入る3つの型
hang it upは、いくつかの型に入れて使うと、意味がはっきりします。代表的なのは、know when to、it’s time to、decide toの3つです。
1つ目のknow when to hang it upは、「やめどきを知っている」という意味です。作中のジェイの言い方で、人の判断力や心得を述べるときに合います。2つ目のit’s time to hang it upは、「そろそろやめる時だ」という意味で、区切りの時期が来たという認識を伝えます。3つ目のdecide to hang it upは、「やめると決める」という意味で、決断した事実を述べるときに使います。
どの型でも、hang it upのitは仕事や活動の全体を指します。何をやめるのかを具体的に言いたいときは、前の文でそれを示しておきます。過去の出来事を述べるなら、hangの過去形はhungなので、We hung it up last year.の形になります。
型を覚えておくと、「いつやめるのか」「誰が決めるのか」を、少ない語数で言い分けられます。たとえば主語を変えれば、自分の決断(I decided to hang it up)も、第三者への評価(He knows when to hang it up)も、同じ形で語れます。
まとめ|引き際を、自分の言葉で決める
hang it upは、長く続けた仕事や活動を、自分の意志でやめる表現です。itは仕事や活動の全体を指し、know when toやit’s time toといった型に入れて使えます。
call it quitsやstep downと並べると、宣言の軽さや、役職に限るかどうかといった違いが見えてきます。hung it upのように過去形も、あわせて覚えておくと便利です。
ジェイは、クレアのため、そして自分のためという2つの理由を重ねて、自分の引き際を語っていました。その短い言葉の中に、長く続けた仕事への区切りが込められています。引き際を語る側と、受け止める側の言葉を並べて読むと、表現の使い方がより具体的に見えてきます。


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