海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
旅行の宿を選ぶとき、「お湯が出て、ベッドがあれば十分」と考える人もいれば、「これ以上不便なのは無理」と感じる人もいます。
そんな不便さの基準の違いを笑いにした「rough it」を、『モダンファミリー』シーズン6第18話の前半、キャンプに出かけているリリーの話題のなかで、キャメロンがミッチェルの様子を語るシーンから、一緒に見ていきましょう。
「rough it」の意味とニュアンス
rough it
意味:設備や快適さのない環境で、不便を我慢して過ごす
rough itは、電気や水道、ベッドといった快適な設備が整っていない場所で、不便を受け入れながら過ごすことを表す口語表現です。roughは「荒い」「ざらざらした」という意味の語で、なめらかで快適な暮らしとは反対の、粗くて手荒な暮らしを思い浮かべると意味がつかめます。
itは特定の物を指しているわけではなく、「その状況」をぼんやり受ける目的語です。そのため、「それを荒くする」と一語ずつ直訳すると意味が通らず、「不便な暮らしをする」「不便を我慢して過ごす」とまとめて訳すことになります。
キャンプやテント泊、簡素な宿での滞在のように、自分から選んだ不便さを語る場面で使えます。また、普段の快適さと比べて我慢が必要な状況を、冗談まじりに言うときにも使える表現です。動詞として活用し、roughed it、roughing itの形になります。主語には、自分で不便を引き受ける人が置かれるのが基本です。過ごす場所や期間は、at a campsiteやfor a weekのように後ろに添えて示します。
【ここがポイント!】
- 「rough it」の核は、快適さのない環境で不便を我慢して過ごすこと
- itは何も指さず、状況全体を受ける語なので、一語ずつ直訳しないのがコツ
- 何を「不便」と感じるかは人それぞれで、その基準の違いを冗談にも使える表現
『モダンファミリー』S06E18のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
キャンプに出かけているリリーの話題のなかで、キャメロンは「あの子は大丈夫だよ」と話し、ミッチェルが緊張しているのはキャンプ向きの人間ではないからだと続けます。そこで「彼にとっての不便な暮らし」を、ケーブルでテレビチャンネルのブラボーが映らないホテルに泊まることだとたとえます。この一言に、ミッチェルがどう応じるかが見どころです。
Cameron: She’s fine. Mitchell’s nervous because he’s not a camper. His idea of roughing it is a hotel stay where the cable doesn’t get Bravo.
(あの子は大丈夫だよ。ミッチェルがピリピリしてるのは、キャンプ向きの人間じゃないからなんだ。彼にとっての不便な暮らしっていうのは、ケーブルでブラボーが映らないホテルに泊まることだよ。)Mitchell: They should tell you that when you check in.
(そういうことは、チェックインのときに教えてほしいよ。)Cameron: Oh, boy.
(やれやれ。)Mitchell: Okay, here’s a photo. Look. She’s using the signal.
(よし、写真があるよ。ほら、見て。あの子、あの合図を使ってる。)Modern Family Season6 Episode18 (Spring Break)
シーン解説と心理考察
キャメロンの説明は、まず「あの子は大丈夫」と安心させるところから始まります。そのあとで、ミッチェルが緊張している理由をキャンプ向きの人間ではないからだと述べ、ホテルのたとえへとつなげていきます。
キャンプのように設備の整っていない環境での暮らしを指す言葉です。ところがキャメロンは、その「不便」の基準を、ケーブルでブラボーが映らないホテルという、ずいぶん小さな不満に置き換えています。落差の大きなたとえで、話題を軽い調子に変えているのが、このセリフの妙です。
これに対してミッチェルは、そういうことはチェックインのときに教えてほしいと、ホテルのたとえに乗って返します。二人のやり取りの温度が近い様子が、この短い返しにも表れています。
続くキャメロンの「やれやれ」に対して、ミッチェルは写真を示し、あの子があの合図を使っていると伝えます。冗談で始まった会話が、リリーの様子を確かめる話題へと戻っていく流れです。rough itという言葉が、笑いのきっかけとして使われたあとで、本題に戻るための橋の役目も果たしています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
roughは、手でなでると引っかかるような、ざらざらした表面を表す語です。なめらかな床ではなく、ごつごつした地面の上を歩いていく姿を思い浮かべると、rough itの「快適さのない道を進む」感覚がつかめます。
キャメロンのたとえは、その粗い地面をホテルの一室にまで持ち込んだものでした。荒れた山道ではなく、ケーブルの映りの悪さがざらつきの正体になっているところに、この場面の笑いがあります。
覚えるときは、自分にとっての「ざらざらした暮らし」は何かを、一つ思い浮かべてみると定着します。基準が人それぞれ違うことまで含めて、この表現の持ち味です。ざらざらの度合いは人によって違うので、キャンプ場の話にも、ホテルの部屋の話にも、同じ言葉が当てはまります。
例文で覚える「rough it」
rough itは、不便さを自分から引き受ける場面でよく似合う表現です。3つの例文で、使われる場面を確認していきましょう。
We roughed it in a tent for a week and loved every minute.
(一週間テントで不便な暮らしをしたけど、ずっと楽しかった。)
キャンプの思い出を語る場面です。roughed itと過去形にして、過ごした期間をa weekで添えています。
The volunteers had to rough it for two weeks without hot water.
(ボランティアたちは、二週間お湯のない不便な生活を我慢しなければならなかった。)
活動の状況を説明する場面です。had toが付くと、選んだ不便ではなく、我慢が必要だったという響きになります。
A: Are you staying at a resort?
B: No, we’re going to rough it at a campsite this time.
(A:リゾートに泊まるの?)
(B:ううん、今回はキャンプ場で不便な暮らしをしてみるんだ。)
旅行の計画を話す会話です。going toで、これから不便を引き受ける予定であることを示しています。
あわせて覚えたい関連表現
camp out
(野宿する、テントで寝泊まりする)
camp outは、屋外で寝泊まりするという行為そのものを指します。rough itは屋外に限らず、快適さのない暮らしをする状況全般を指す点が違いです。
tough it out
(つらい状況を耐え抜く)
tough it outは、苦しさや困難を我慢して乗り切ることに重点があります。rough itは、設備や快適さが足りないという環境面に重点がある点が違います。
make do
(あるもので間に合わせる)
make doは、足りない物をあるもので補って何とかする工夫を言います。rough itは、不便を受け入れて過ごすこと自体を言う点が違いです。
Note|何も指さないitを、直訳せずに読むrough it
rough itは、itが何を指しているのかを探そうとすると、かえって意味がつかみにくくなる表現です。
rough itのitは、前に出てきた特定の名詞を受けているわけではなく、「その状況」全体をぼんやりと指しています。そのため、rough=荒い、it=それ、と一語ずつ直訳して「それを荒くする」としても、意味が通りません。動詞と、状況を受けるitがひとまとまりになって、「不便な暮らしをする」という意味になる形です。同じように、itが具体的な物を指さないまま慣用的に使われる形には、take it easy(のんびりやる)やmake it(間に合う、うまくやりとげる)などがあります。どれもitを訳出せず、全体で一つの意味として読むと自然になります。
ミッチェルの様子を語るキャメロンのセリフでは、his idea of roughing itと、ideaの後ろにroughing itが続いていました。「彼にとってのrough itの考え方は」という意味で、何を不便と感じるかの基準を語る形です。
itを訳さずにまとめて読むと、この表現の使い方がすっきり見えてきます。
まとめ|「不便」の基準は人それぞれ
rough itは、設備や快適さのない環境で、不便を我慢して過ごすことを表す口語表現です。itは何も指さず、全体で一つの意味になります。
キャンプや簡素な宿での滞在を語るときに使えて、roughed itやroughing itと形を変えながら、過ごした期間や場所も添えられます。基準の違いを冗談にする使い方も、会話のなかで役に立ちます。
ケーブルでブラボーが映らないホテルというたとえひとつで、不便の基準が人それぞれであることを軽やかに伝える一言と言えます。


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