海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
二つのものを比べようとして、「いや、そもそもこれは比べる土俵が違うのでは?」と感じる瞬間が、議論の中にはときどきあります。
そんな「比較にならない別物同士」を指す「apples to oranges」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン8第13話の中盤、女子会で「狼男は泳げるか」という議論が大真面目に白熱するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「apples to oranges」の意味とニュアンス
apples to oranges
意味:比較にならないものを比べること、土俵の違う別物同士を比べること
直訳すると「リンゴをオレンジと比べること」。どちらも丸くて似たような果物に見えるが、種類はまったく別物だ。そこから「前提や性質が異なるもの同士を、同じ基準で比べても意味がない」という指摘に使われる定番の比喩になっている。
多くは compare と組み合わせて comparing apples to oranges(あるいは comparing apples and oranges)の形で使う。It’s like comparing apples to oranges. や That’s apples and oranges. のように、相手の比較が筋違いだと穏やかに指摘するときに登場する。重要なのは、これが「どちらが優れているか」を論じる表現ではない点だ。優劣を競う前に、そもそも「同じ尺度に乗らない」と土俵そのものに疑問を投げかけるのがこのフレーズの核心になる。条件や前提が違う比較に対して、角を立てずにやんわり待ったをかけられる、便利な言い回しと言える。
【ここがポイント!】
- 似て見えても種類が違う果物=「そもそも比べられない別物」のイメージ
- compare と組み合わせて「比較が筋違いだ」と穏やかに指摘する表現
- 優劣を競うのではなく、「同じ土俵に乗らない」と前提に待ったをかける
『ビッグバン★セオリー』S08E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。「女子会でも男性陣と同じくくだらない話をする」と証明したいペニーたちは、シェルドンが持ち込んだ「狼男は泳げるか」という議題に、なぜか全員が大真面目に乗っていきます。エイミーが「イヌ科は泳げる」と理屈をこね、バーナデットが反論するところでこのフレーズが出ます。
Amy: No, hold on. All canines instinctively know how to swim. Why wouldn’t a werewolf have the same abilities?
(待って。イヌ科の動物は本能的に泳ぎ方を知ってるのよ。なんで狼男に同じ能力がないなんて言えるの?)Bernadette: Well, they’re not a hundred percent wolf. They’re a werewolf, that’s only part wolf. It’s like comparing apples to oranges.
(でも彼らは百パーセント狼じゃないでしょ。狼男は半分しか狼じゃないの。リンゴとオレンジを比べるようなものよ。)Sheldon: Thank you. Oh, and technically, it’s apples that turn into were-oranges when the moon is full.
(ありがとう。あ、それと厳密には、満月のときにリンゴが“狼オレンジ”に変身するんだよ。)The Big Bang Theory Season8 Episode13(The Anxiety Optimization)
シーン解説と心理考察
ナンセンスな議題に全員が本気で取り組んでいる、そのおかしさが apples to oranges という真面目な定番表現の登場でいっそう際立っています。バーナデットは「狼と狼男を同列に比べるのは筋違いだ」という、論理としては至極まっとうな指摘をしているのですが、その対象が「狼男の遊泳能力」であるために、まじめさと馬鹿馬鹿しさが奇妙に同居する空気があります。
直後にシェルドンが apples to oranges の比喩そのものに乗っかり、「満月にはリンゴが“狼オレンジ”に変わる」と言葉遊びを重ねるのも見どころです。比喩の中の果物を勝手に変身させてしまう発想に、彼らしいユーモアがにじみます。何気ない慣用句が、こうして会話の温度を一段引き上げています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
片手にリンゴ、もう片方にオレンジを持って見比べている姿を思い浮かべてみてください。どちらも丸い果物ですが、「さあ、どっちが優れた果物?」と問われても答えようがありません。種類が違うのだから、優劣を競うこと自体がそもそも成り立たない——この絵が、そのまま「比べられない別物同士」の意味になります。
劇中では「狼と狼男」を比べる文脈でこの表現が出て、直後にシェルドンが“狼オレンジ”という珍語を生み出します。手の中のリンゴとオレンジの絵に、このシュールな掛け合いを重ねておくと、フレーズと一緒にシーンごと記憶に残ります。
例文で覚える「apples to oranges」
条件や性質が違う比較に「待った」をかけたいとき、角を立てずに使えるのがこのフレーズです。場面の異なる3つの例文で、使い勝手をつかんでみましょう。
Comparing a startup to a global corporation is like comparing apples to oranges.
(スタートアップを多国籍企業と比べるのは、土俵の違う比較だ。)
規模の異なるもの同士を並べる場面で使える一文です。like comparing 〜 to … の形で、「そもそも前提が違う」と冷静に指摘できます。
Their salaries differ, but they’re in different industries, so it’s apples to oranges.
(給料は違うけど、業界が違うから、そもそも比べられないよ。)
待遇や条件の比較を落ち着かせたいときの表現です。差そのものより「比較の前提が揃っていない」点に注意を向けています。
A: His new album is way better than the last one, right?
B: I love both, but honestly it’s apples and oranges — they’re totally different styles.
(A:彼の新しいアルバム、前作よりずっといいよね?)
(B:どっちも好きだけど、正直あれは比べられないよ。まったく別のスタイルだから。)
友人同士のカジュアルな会話の例です。apples and oranges と短く言い切る形で、「優劣ではなく別物だ」とやわらかく返しています。
あわせて覚えたい関連表現
on a different level
(次元が違う、レベルが違う)
こちらは優劣の差を強調する表現です。apples to oranges が「優劣以前に同じ尺度では比べられない」と指摘するのに対し、on a different level は片方が明らかに上だという含みを持ちます。
it’s not a fair comparison
(それは公平な比較じゃない)
より直接的で説明的な言い方です。apples to oranges は同じ内容を果物の比喩で軽やかに伝えるのに対し、こちらは理屈でストレートに述べます。
there’s no comparison
(比べものにならない)
これは「片方が圧倒的に上」という優劣の断定に寄る表現です。apples to oranges が「種類が違う」点に焦点を当てるのとは、向いている方向が異なります。
Note|「比べられない」の伝え方 ―― apples to oranges と there’s no comparison
日本語では同じ「比べられない」と訳せてしまう表現でも、英語では焦点の置き方によって言葉が分かれます。apples to oranges と there’s no comparison は、その代表的な対比です。
apples to oranges が指すのは、「そもそも同じ尺度に乗らない別物同士」だということ。リンゴとオレンジに優劣をつけられないのと同じで、性質や前提が違うから比較が成り立たない、という指摘になります。ここに「どちらが上か」という判断は含まれません。一方 there’s no comparison は、字面こそ「比較がない」ですが、実際には「比べるまでもなく一方が圧倒的に優れている」という、優劣をはっきり断じる表現として使われます。たとえば二つのレストランについて、apples to oranges と言えば「和食とフレンチだから比べようがない」という意味になりますが、there’s no comparison と言えば「片方が段違いに美味しい」という評価になります。同じ「比べられない」でも、前者は土俵の違いを、後者は優劣の差を語っているわけです。
劇中でバーナデットが apples to oranges を選んだのも、狼と狼男の「優劣」ではなく「種類の違い」を指摘したかったからこそ、しっくりくる表現でした。どちらの「比べられない」なのかを意識すると、訳語選びも英作文もぐっと正確になります。
訳が同じでも、語が違えば伝えたいことも違う。そこに英語表現の面白さがあります。
まとめ|リンゴとオレンジで線を引く
apples to oranges は、性質や前提が違うもの同士を「そもそも同じ土俵では比べられない」と指摘する、果物にたとえた定番表現です。優劣を論じるのではなく、比較の前提そのものにやんわり待ったをかけられるのが特徴です。
議論が噛み合わないとき、「それは比べる対象が違う」と角を立てずに伝えられる、便利な一言と言えます。


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