海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
新しい役割を任されそうになった時、自分にその力があるのかどうか、素直に自信が持てなくなる瞬間があります。
そんな心境にぴったりの「be up to it」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン12第13話の中盤、営業チームへの誘いを前に迷うペニーの本音から、一緒に見ていきましょう。
「be up to it」の意味とニュアンス
be up to it
意味:(仕事や役割を)引き受けるだけの力がある
be up to itは、何かを引き受けたり実行したりするだけの能力・気力・準備が自分にあるかどうかを表す口語表現です。否定形(not up to it)で使われることも多く、「その力がない」「その気になれない」という不安や自信のなさを打ち明ける場面でよく登場します。
upは「基準の高さまで届く」というイメージを持つ語で、be up to itは目の前の課題(it)の高さに自分が届いているかどうかを問う表現だと考えると分かりやすくなります。単なる技術的な能力だけでなく、気力や心の準備が整っているかという要素も含んでいる点が、この表現の面白いところです。
似た表現にbe capable of somethingがありますが、こちらは客観的な能力の有無に焦点があるのに対し、be up to itは今その瞬間の気持ちの状態も含めて語れる柔らかさを持っています。体調が優れない日や気分が乗らない時にも、この表現ひとつで「今はその状態ではない」という事情を過不足なく伝えられます。
【ここがポイント!】
- 「be up to it」の核は、能力と気力の両方を含んだ「対応できるかどうか」という自問
- 否定形not up to itで使われることが多く、不安や自信のなさを表す場面で活躍
- itが何を指すかは前後の文脈で決まるため、話の流れをつかむのがコツ
『ビッグバン★セオリー』S12E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
バーナデットの執務スペースに呼ばれたペニーが、営業チームへの誘いに乗り気でない理由を尋ねられ、ようやく本音を打ち明ける場面です。単刀直入なバーナデットの問いかけに、ペニーが少しずつ言葉を選びながら答えていきます。
Bernadette: Why don’t you want to work with me? I know I can be tough, but that’s just ‘cause I’m surrounded by useless idiots.
(どうして私と一緒に働きたくないの? 私が厳しいのは分かってるけど、それはただ周りが役立たずのバカばっかりだからよ。)Penny: No, it’s not that.
(違うの、そういうことじゃなくて。)Bernadette: Then why?
(じゃあ、どうして?)Penny: Honestly, I don’t know if I’m up to it. You know, the last project I managed was my high school yearbook.
(正直言うと、自分にその力があるのか分からないの。ほら、私が最後に取り仕切ったプロジェクトなんて、高校の卒業アルバムだったんだから。)The Big Bang Theory Season12 Episode13 (The Confirmation Polarization)
シーン解説と心理考察
バーナデットが「どうして私と一緒に働きたくないの? 私が厳しいのは分かってるけど、それはただ周りが役立たずのバカばっかりだからよ」と単刀直入に尋ねると、ペニーは「違うの、そういうことじゃなくて」とだけ答えます。理由をはっきり言わないその態度から、何か言い出しにくい事情があることがうかがえます。
「じゃあ、どうして?」と重ねて聞かれたペニーは、「正直言うと、自分にその力があるのか分からないの。ほら、私が最後に取り仕切ったプロジェクトなんて、高校の卒業アルバムだったんだから」と、ようやく本音を打ち明けます。誘いを前に強がることなく、自分の経験不足への不安を率直に口にする姿には、これまでのキャリアを冗談交じりに振り返りながらも本気で迷っている様子が表れています。自分を厳しいと自認するバーナデットの問いかけに気圧されることなく、飾らない言葉でそのまま本音を返しているところにも、ペニーらしい率直さが表れています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
upは「基準や課題の高さまで届く」イメージです。be up to itで、その課題(it)の高さまで自分が届いている、つまり対応できる状態にある、という情景を思い浮かべると覚えやすい表現です。
ペニーが自信を持てずにいたのも、営業チームという新しい基準の高さに、自分がまだ届いていないと感じていたからでした。課題の高さと自分の位置関係をイメージしながらこの表現に触れると、not up to itと言いたくなる気持ちも自然に理解できるはずです。背伸びをして無理に届いたふりをするのではなく、今の自分の位置を正直に認めるところから始まる表現でもあります。
例文で覚える「be up to it」
be up to itが表す自信の揺れを、3つの例文で確認していきましょう。
They offered me the manager position, but I’m not sure I’m up to it.
(マネージャーのポジションを打診されたけど、自分にその力があるか分からない。)
昇進の打診を受けて迷う場面です。喜ばしい話であっても、素直に自信が持てない気持ちがそのまま伝わります。
I know it’s a tough hike, but I think I’m up to it.
(きついハイキングだって分かってるけど、私なら大丈夫だと思う。)
難しい挑戦を前に自信を示す場面です。肯定形で使うと、不安を乗り越えた前向きな決意が表れます。
A: Can you handle the presentation tomorrow?
B: Honestly, I don’t know if I’m up to it.
(A:明日のプレゼン、任せられる?)
(B:正直、自分にその力があるか分からないよ。)
仕事を任されて自信のなさを打ち明ける会話です。honestlyを添えることで、率直な本音であることが強調されます。
あわせて覚えたい関連表現
be capable of something
(〜する能力がある)
be capable of somethingは客観的な能力の有無を述べるのに対し、be up to itは気力や準備状態も含めた「今その状態にあるか」というニュアンスが強く出ます。
be ready for something
(〜の準備ができている)
be ready for somethingは準備が整っているかどうかに焦点があるのに対し、be up to itは能力そのものへの自信に焦点があります。
feel confident about something
(〜について自信がある)
feel confident about somethingは感情としての自信を直接述べる表現です。be up to itはより口語的で、能力への漠然とした不安を表す時にも使いやすい柔らかさがあります。
Note|be up to itが一語でまとめる「能力」と「気力」
日本語で「自分にその力があるか」と言う時、多くの場合「できる・できない」という能力の話と、「その気になれる・なれない」という気持ちの話は、別々の言葉で語られます。
ところが英語のbe up to itは、この二つを分けずにひとつの表現で扱います。新しい役職を打診された時、必要なスキルが足りているかという客観的な問題と、今その挑戦に踏み出す気力があるかという主観的な問題は、本来は別のものです。それでもこの二つは、be up to itという一言でまとめて表すことができます。これは、英語圏の会話では「できるかどうか」を語る時、能力と心の準備を切り離さずにひとつの状態として捉える発想が根付いているためだと考えられます。日本語で同じことを言おうとすると、「能力的にも精神的にもまだ整っていない」のように説明が長くなりがちですが、be up to itならこの複雑な状態を一語でまとめて伝えられます。
ペニーが「自分にその力があるのか分からない」と口にした場面も、まさに能力への不安と気持ちの迷いが分かちがたく混ざり合った状態でした。この一言だけで、彼女の複雑な胸の内が過不足なく伝わってきます。
複数の意味を一語に凝縮するこうした表現に触れると、英語という言語の効率のよさが見えてきます。逆に日本語から英語に訳そうとした時、能力と気力のどちらを強調すべきか迷ったら、be up to itという一言に両方まとめて任せてしまうのも一つの手です。
まとめ|自分にその力があるか、迷った時に使える一言
be up to itは、何かを引き受けるだけの能力と気力の両方をまとめて問う表現です。
新しい役割を打診された時や、難しい課題に挑む前に、素直な迷いや自信を伝えたい場面でこの一言が役立ちます。
強がらずに「自分にその力があるのか分からない」と打ち明けたペニーの姿からは、新しい挑戦を前にした人が誰しも抱える不安の輪郭が浮かび上がってきます。その不安を言葉にできること自体が、次の一歩を踏み出すための小さな準備になっているとも言えます。


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