海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『ビッグバン★セオリー』シーズン3 第4話は、シェルドンの下で働くことになったラージが、研究をめぐって上司であるシェルドンと衝突する回です。今回は、自分の地位を先に掲げてから相手を制する言い方と、非を認めそうになっても最後まで認めきらない切り返し方に注目します。
同じ人物とのやりとりの中で、立場を盾にする言葉と、論理を盾にする言葉がどう使い分けられているかを見ていきましょう。
「上司として、禁じる」―役職を先に掲げる言い方
ラージを雇い入れて少し経った頃、ホワイトボードの書き込みをめぐって二人の意見が割れます。自分の手を使って書き込みを消そうとしたシェルドンが、汚れた手を見て顔をしかめたあとの一言です。
Sheldon: Oh, lord. Dr. Koothrappali, as your superior, I forbid you from writing on my board!
(ああ、まったく。クースラパリ博士、僕は君の上司として、僕のボードに書き込むことを禁じる!)Raj: You are not my superior.
(君は僕の上司なんかじゃない。)Sheldon: I am in every way.
(あらゆる意味で上司だ。)TBBT Season3 Episode4 (The Pirate Solution)
As your superior, I forbid you from … は、「上司として」という立場を先に示してから禁止事項を告げる言い方です。理由を説明する前に肩書きを持ち出すことで、話の中身よりも先に力関係を確定させています。ラージが You are not my superior. と真っ向から否定しても、シェルドンは I am in every way.(あらゆる意味で)と一歩も引きません。地位を否定する側と、あくまで肯定し続ける側のやりとりが、そのまま平行線をたどる構図です。in every way(あらゆる意味で)のように範囲を広げる言い方は、具体的な根拠を示さないまま主張を強める便利な言い回しとして押さえておくと役立ちます。
「そうは言っていない」―間違いを認めない切り返し
ダークマターの質量の導出をめぐる計算のずれから、消しゴムの奪い合いにまで発展した言い争いのあと、シェルドンはラージの部屋を訪ね、計算を見直した結果を伝えます。
Sheldon: I looked over the board and it turns out you were right.
(ボードを見直したら、君が正しかったことが分かった。)Raj: So you were wrong.
(つまり、君が間違っていたわけだ。)Sheldon: I didn’t say that.
(そうは言っていない。)Raj: That’s the only logical inference.
(それ以外に論理的な結論はない。)Sheldon: Nevertheless, I didn’t say it.
(それでも、僕はそう言っていない。)TBBT Season3 Episode4 (The Pirate Solution)
ラージが正しかったという事実を口にしながらも、シェルドンは I didn’t say that.(そうは言っていない)と、「間違っていた」という結論そのものは認めません。論理的にはそこに行き着くしかないとラージに指摘されても、Nevertheless(それでも)という一語で押し切り、事実の確認と非の受け入れを切り離しています。結論を認めるかどうかは、必ずしも事実の確認とセットではないことが伝わってくるやりとりです。Nevertheless は「それでも」「にもかかわらず」を意味する接続の言葉で、直前の内容を認めた上で、それでも自分の立場は変えないと示すときに使える表現です。
この一連のやりとりを通しても、シェルドンは最後まで wrong(間違っていた)という単語そのものを口にしません。事実の中身は認めながら、それを言い表す言葉だけは頑なに選び直す。同じ内容でも、どの単語を使うかにこだわり続けるシェルドンらしい姿勢が、先ほどの「上司として禁じる」場面とはまた違った角度から見えてくるやりとりです。
まとめ|地位を掲げても、正しさは変わらない
as your superior と自分の立場を持ち出す言い方も、I didn’t say that. と非を認めない言い方も、どちらも中身の議論とは別のところで押し切ろうとする話法です。相手の主張が正しいかどうかと、それを認めるかどうかが必ずしも一致しないという、この回のやりとりの面白さが伝わってきます。
次回も『ビッグバン★セオリー』の会話を通して、英語表現の型を見ていきましょう。
このエピソードの英語表現は、フレーズ記事やエピソードまとめでも扱っています。


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