海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『ビッグバン★セオリー』シーズン3 第4話は、研究の行き詰まりから新しい職にも縁がなかったラージが、シェルドンの下で働くことになる回です。今回は、この雇用関係のやりとりの中で繰り返される、「for」と「with」という前置詞の言い換えに注目します。
同じ一語の違いが、対等な協業なのか、それとも上下関係のある雇用なのかを分けている、シェルドンならではのこだわりを見ていきましょう。
「with you」のつもりが「for me」に―即座の訂正
新しい職も見つからず落ち込むラージに、シェルドンが助け舟を出す場面です。部の予算から追加の資金を確保できたと切り出し、ラージを自分のもとで働かせようと持ちかけます。
Raj: You want me to work with you?
(僕に、君と一緒に働けと言うのか?)Sheldon: For me. You’re going to have to listen more carefully when you’re on the job.
(僕のためにだ。仕事を始めたら、もっと注意深く話を聞く必要があるね。)TBBT Season3 Episode4 (The Pirate Solution)
ラージは何気なく work with you(君と一緒に働く)と言い換えていますが、シェルドンはすかさず For me.(僕のためにだ)と訂正します。with は対等な立場での協業を、for は雇う側・雇われる側という上下関係を含意します。前置詞ひとつの言い換えに、相手の発言をそのまま引き取って訂正する、シェルドンらしい短い切り返しの型が表れています。
この場面のあと、シェルドンの部屋で交渉が続く場面でも、ラージが条件を並べるたびにシェルドンは同じ一言 For me. を繰り返し口にします。持ちかける立場と持ちかけられる立場の違いを、本人だけが執拗に言い直し続ける様子が見どころです。work for someone(誰かのために働く)という言い方自体は求人票にもよく出てくる表現ですが、日常会話でここまで即座に、しかも繰り返し訂正されると、単なる言葉の選び方以上に、力関係そのものを主張しているように響きます。
立場が入れ替わっても崩れない、コールバックのやりとり
同じやりとりは、ホワイトボードをめぐる口論の最中にも顔を出します。ラージがシェルドンの計算ミスを指摘し合ううち、思わず本音がこぼれる場面です。
Raj: Aha! So I am working with you.
(ほら、やっぱり僕は君と一緒に働いているじゃないか。)Sheldon: In this context, with me means for me.
(この文脈では、withはforを意味するんだ。)TBBT Season3 Episode4 (The Pirate Solution)
In this context, with me means for me. は、「この文脈では」という限定を先に置いて、自分に都合のいい解釈を正当化する言い方です。論理的には強引でも、堂々と言い切ることで反論の隙を与えません。
この応酬は、ラージの部屋の前でもう一度繰り返されます。今度はラージ自身が「for か with か」と尋ね返す番です。
Raj: For you or with you?
(君のためにか、それとも君と一緒にか?)Sheldon: In this context for me could mean with me.
(この文脈では、forがwithを意味することもあるんだ。)TBBT Season3 Episode4 (The Pirate Solution)
先ほどとは逆に、今度は for が with を意味すると言い出すシェルドン。ルールを決める側が、必要に応じてルールそのものを書き換えてしまう様子が、場面を変えて三度繰り返されるコールバックとして仕上がっています。一つの単語の使い分けにここまでこだわる場面は多くありませんが、だからこそ for と with のニュアンスの違いが、印象に残る形で記憶に定着する構成になっています。
まとめ|前置詞ひとつで、力関係は静かに語られる
work with you と work for me、その間で揺れ続けたやりとりを通して、for と with という前置詞ひとつが、対等な協業なのか上下関係のある雇用なのかを分ける鍵になっていることが見えてきます。In this context という言い回しも、自分の解釈を押し通す一言として覚えておくと便利です。
次回も『ビッグバン★セオリー』の会話を通して、英語表現の型を見ていきましょう。
同じエピソードの他のコラムやフレーズ記事もあわせて読むと、場面全体の英語がより立体的に見えてきます。


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