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今回扱うのは、『ビッグバン★セオリー』シーズン2 第13話の書店シーンをきっかけに見えてくる、アメリカの子ども向け絵本の文化です。友達の作り方を知りたいシェルドンが案内されたのは、児童書のコーナーでした。そこに並ぶ本のタイトルには、死別や家族の形、いじめといった重いテーマを扱うものも含まれています。
子ども向け絵本というジャンルが担っている役割を見ていきます。
対人関係の悩みも、まず子ども向けの棚に案内される
書店で友達を作ろうと本を探すシェルドンに、店員は思いがけない案内をします。
Sheldon: Excuse me. Do you have any books about making friends?
(すみません。友達の作り方についての本はありますか?)Bookstore employee: Um, yeah but they’re all for little kids.
(ええと、あることはありますけど、どれも小さい子ども向けですよ。)TBBT Season2 Episode13 (The Friendship Algorithm)
アメリカの書店では、対人関係の築き方や気持ちの整理の仕方といったテーマを、子ども向けの絵本コーナーが受け持っていることがあります。大人向けの実用書だけでなく、こうした社会性・感情面のスキルを子どもに教える絵本が一つのジャンルとして棚に並ぶことがある、というのがこの場面から読み取れる背景です。店員の返答が示すとおり、「友達の作り方」というテーマ自体が、まず子ども向けの棚に置かれるのが自然だと受け止められている点が興味深いところです。
店員の案内に対して、シェルドンは「その手のスキルは応用・転用できるはずだ」と大真面目に納得し、児童書コーナーへ向かいます。本来は子ども向けに書かれた内容でも、要点を抽出すれば大人の対人関係にも転用できるはずだ、という発想自体は、決して的外れとは言い切れません。実際、シンプルな言葉で書かれた絵本の教訓が、遠回しな表現の多い大人向けの自己啓発書よりもかえって分かりやすい、と感じる読者も少なくないところです。
案内された児童書コーナーで、シェルドンは木製の電車のおもちゃのそばに積まれた本を手に取り始めます。売り場の作りそのものが、絵本を単なる読み物ではなく、遊具と地続きの子ども向けコーナーの一部として扱っていることも、この場面からうかがえます。
死別や家族の形、いじめ…重いテーマを扱う絵本というジャンル
児童書コーナーに向かう手前、シェルドンは順番待ちの女性にこう声をかけています。
Sheldon: Coping with the death of a loved one. My condolences.
(大切な人の死を乗り越える。お悔やみ申し上げます。)TBBT Season2 Episode13 (The Friendship Algorithm)
死別のように子どもには伝えづらいテーマを、絵本というやわらかい形式で扱う本が並ぶことがある、というのがこの一言から見える背景です。こうした「難しいテーマを子ども向けに翻訳する絵本」というジャンルは、アメリカでは書店や図書館、学校のカウンセリングの場でしばしば紹介されており、悲しみへの向き合い方や気持ちの整理を助ける読み物として位置づけられることがあります。ただし、その扱われ方は出版社や時代、地域によっても幅があり、一律に語れるものではない点には注意が必要です。
児童書コーナーで、シェルドンは近くにあった木製の電車のおもちゃを手に取りますが、べたべたした感触にこう漏らしてから、あらためて本を眺め始めます。
Sheldon: Oh my! That’s awfully sticky. Alright, let’s see. Bernie Bunny has Two Daddies Now.
(おっと、これはずいぶんべたべたするな。よし、見てみよう。「バーニー・バニーにはパパが2人いるの」。)TBBT Season2 Episode13 (The Friendship Algorithm)
おもちゃの感触への反応をはさんで、シェルドンは本のタイトルを読み上げ始めます。このタイトルはドラマのために作られた架空の書名ですが、家族の形の多様さを子どもに伝える絵本というジャンルが存在すること自体は、劇中のこの場面からもうかがえます。同じ棚には、いじめをテーマにした絵本(劇中に登場する架空のタイトル『Jerry the Gerbil and the Bullies on the Bus』)も並んでおり、死別・家族の形・いじめという、子どもが直面しうる難しい出来事の数だけ、それぞれに対応する絵本のジャンルがある、という発想がこの書店の棚から見えてきます。ここでも一般化はできず、扱いには出版社や地域による幅があります。
動物キャラクターに人生の教訓を語らせる、寓話絵本の型
書店で見つけた一冊は、のちの場面でシェルドンの発想の元にもなります。アパートの階段で仲間に自分の作戦を説明する場面です。
Sheldon: See, my initial approach to Kripke, had the same deficiencies as those that plagued Stu the Cockatoo, when he was new at the zoo.
(つまり、クリプキへの最初のアプローチには、動物園に来たばかりの頃のオウムのスチューを悩ませていたのと同じ欠陥があったんだ。)TBBT Season2 Episode13 (The Friendship Algorithm)
動物のキャラクターを主人公にして、新しい環境になじむ難しさや人生の教訓を伝える寓話形式は、子ども向け絵本の定番の型の一つです。動物であれば、性別や年齢、文化的背景といった要素をいったん脇に置いて、読み手が自分の状況に重ねやすくなるという利点もあります。
シェルドンはこの本の内容を、大学の同僚であるクリプキとの関係づくりの参考として引き合いに出しています。子ども向けに書かれた寓話の教訓を、大人同士の人間関係の分析にそのまま当てはめて語るところに、このエピソードらしいずれた真剣さが表れています。同時に、動物寓話が伝える「新しい環境になじむ」という普遍的なテーマそのものは、年齢を問わず誰にでも通じるものであることも、この場面からは読み取れます。子ども向けの棚に置かれた一冊が、大人の悩みを解きほぐす参考書として持ち出される、そのギャップこそがこの回の書店シーンの面白さであり、絵本というジャンルが世代を超えて読み継がれる理由の一端を示していると言えるでしょう。
まとめ|絵本というジャンルが引き受けているテーマの幅
友達の作り方から死別、家族の形、いじめ、動物の寓話まで、アメリカの子ども向け絵本はさまざまなテーマを扱う棚として描かれていました。難しい話題ほどやわらかい形式で届けるという発想は、絵本というジャンルの役割の一端を見せてくれます。
次回も『ビッグバン★セオリー』の場面を通して、アメリカの文化や生活事情を見ていきましょう。
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