海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
人の第一印象や、ちょっとした欠点が気になってしまうとき、「そこさえ乗り越えれば、本当はいい人なんだけどな」と思うことはありませんか。
そんな気持ちにぴったりの「get past」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン8第10話、ペニーが上司の前で、きつい性格で恐れられている同僚バーナデットを必死にフォローしようとするシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get past」の意味とニュアンス
get past
意味:(障害・欠点・困難を)乗り越える、気にせず先へ進む
もともとは「〜を通り過ぎる」という物理的な意味ですが、そこから「つらい経験・人の欠点・心理的な壁などを乗り越えて先へ進む」という比喩へと幅広く使われます。past(〜の先へ)という前置詞が、壁の向こう側へ歩を進めていく感覚を運んできます。
このフレーズが便利なのは、乗り越える対象を選ばない柔軟さにあります。相手のぶっきらぼうな態度、つらい失恋の記憶、面倒な難所、本の読みにくい最初の章——そうした「いったん越えなければ先に進めないもの」全般に使えます。once you get past 〜(〜を乗り越えれば)という形にすると、「その先には良いものが待っている」という前向きな含みが生まれ、相手の欠点をやんわり擁護したり、困難の先の希望を示したりする場面で重宝します。物理的な通過から心理的な克服まで、ひとつの句動詞で表せるのが英語らしい点です。
【ここがポイント!】
- 「障害や欠点を脇に置いて、その先へ進む」イメージが核
- 失恋・人の短所・難所など、乗り越える対象を選ばない柔軟さが魅力
- once you get past 〜 で「その先に良いものがある」と前向きに使える
『ビッグバン★セオリー』S08E10のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ペニーが上司のダンに対し、きつい言動で恐れられている同僚バーナデットを必死に擁護しようとします。ところが「それを乗り越えれば優しい子」と言いかけたまさにその瞬間、当のバーナデットが現れてしまうという、気まずい展開です。
Penny: I know she can be a little intense, but, I swear, she is so sweet once you get past all the…
(確かにちょっと激しいところはあるけど、本当に、いろいろ乗り越えればすごく優しいのよ…)Bernadette: Hey, what are you talking about?
(ねえ、何の話してるの?)Penny: Oh. We were just talking about how much we love working with you. Isn’t that right? Dan?
(あ。あなたと働けるのがどんなに嬉しいかって話してたのよ。ね、ダン?)The Big Bang Theory Season8 Episode10(The Champagne Reflection)
シーン解説と心理考察
ペニーの get past all the…(その全部を乗り越えれば…)という言いかけは、相手の欠点を「いったん脇に置いて先へ進めば」という意味で使われています。本音を語りかけたところで言葉が途切れる、その絶妙な間に、バーナデットの難点を本人の前で口にできない気まずさがにじみます。
直後にバーナデットが現れ、ペニーが慌てて「あなたと働けて嬉しいって話よ」と取り繕う流れは、コメディの定番「噂をすれば」の呼吸そのものです。言いよどんだ “all the…” の続きを観客の想像に委ねることで、かえって笑いが膨らむ構成になっています。フォローしようとして墓穴を掘りかけるペニーの慌てぶりが、会話の温度を一気に変えている場面です。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
目の前に立ちふさがる大きな壁——人の欠点、つらい記憶、面倒な難所——を、横をすり抜けて「その先」へ進んでいく動きを思い浮かべてみましょう。past(〜の先へ)という前置詞が、障害の向こう側へ足を運ぶ感覚を運んできます。
ペニーが「ちょっと激しいところを get past すれば優しい子」と言いかけて、本人の登場でぴたりと止まる、あの気まずいシーンと結びつければ、「欠点をいったん脇に置いて先へ進む」という比喩の意味が記憶に残ります。壁をすり抜けて前へ進む足の動きと、ペニーの凍りついた表情。その二つを重ねれば、このフレーズはしっかり身につきます。
例文で覚える「get past」
つらい経験から立ち直る場面でも、人の欠点を受け入れる場面でも使えるのがこのフレーズの幅広さです。3つの例文で使い分けを見ていきましょう。
Once you get past his rough manner, he’s actually a kind person.
(彼のぶっきらぼうな態度を乗り越えれば、実はとても優しい人だよ)
第一印象の悪い人を擁護する場面です。劇中のペニーの使い方とほぼ同じで、「そこさえ越えれば」という前向きな含みが効いています。
It took her months to get past the breakup.
(彼女がその失恋から立ち直るのに何ヶ月もかかった)
つらい経験からの回復を語る場面です。「乗り越える=立ち直る」という、心の克服を表す典型的な使い方です。
A: I still can’t get past how rude he was at the meeting.
B: I know, but let’s focus on the project for now.
(A:会議での彼の失礼な態度が、どうしても気になって先に進めないんだ。)
(B:わかるよ。でも今はプロジェクトに集中しよう。)
わだかまりが消えない気持ちを打ち明ける会話です。can’t get past で「どうしても割り切れない」という、引っかかりを表せます。
あわせて覚えたい関連表現
get over
(つらい経験・病気から立ち直る、克服する)
get past と非常に近いですが、特に失恋・ショック・病気からの回復に強く使われます。get past が欠点や障害を「脇に置いて先へ進む」幅広い用法なのに対し、get over は感情的な立ち直りに focus が寄ります。
move on
(過去を吹っ切って前に進む)
過去や感情を手放して次へ向かうニュアンスです。get past が「障害を越える」動作を指すのに対し、move on はその後の「前進」そのものに焦点があります。
look past
(欠点などを大目に見る、見過ごす)
相手の短所を「あえて見ないようにする」許容の姿勢を表します。get past が「乗り越えて進む」のに対し、look past は「目をつぶる」点が異なり、似ているようで方向性が違います。
Note|get past / get over / look past、似た三つの使い分け
「乗り越える」を表す英語表現はいくつもあり、get past もそのひとつですが、よく似た get over や look past との違いに迷うことはないでしょうか。劇中のペニーが get past を選んだのには、ちゃんと理由があります。
この三つは、何をどう乗り越えるかで焦点が分かれます。get past は「障害や欠点を脇に置いて、その先へ進む」という、対象を選ばない幅広い表現です。ペニーがバーナデットの「激しさ」を get past と言ったのは、相手の性格という障害を「いったん越えれば」という意味合いにぴったりだったからです。一方 get over は、失恋や病気のように「感情的なダメージから立ち直る」場面に強く、It took her months to get over the breakup のように使われます。そして look past は「欠点に気づいているけれど、あえて目をつぶる」という許容の姿勢で、乗り越えるというより「見て見ぬふりをする」に近いニュアンスです。つまり、障害を越えるなら get past、心の傷から立ち直るなら get over、短所に目をつぶるなら look past、と整理できます。
こう並べてみると、ペニーが get past を選んだのは、バーナデットの性格を否定せずに「その先の良さ」へ導こうとした、絶妙な言葉選びだったと分かります。
似た表現の中から最適な一語を選ぶ感覚が、英語の表現力を育てます。
まとめ|ペニーの気まずいフォローから学ぶこと
「get past」は、人の欠点、つらい記憶、面倒な難所など、いったん越えなければ先に進めないものを「乗り越えて進む」ことを表す、柔軟で便利な句動詞です。物理的な通過から心理的な克服まで、ひとつの表現でカバーできます。
第一印象の悪い人を「そこさえ越えれば」と擁護するとき、つらい経験から立ち直ったと伝えるとき、わだかまりが消えないと打ち明けるとき——人間関係や感情の機微を語る場面で、この一言が幅広く活躍します。once you get past 〜 の形を覚えておくと、前向きな含みを添えるのにも便利です。
人や物事の「その先」を見据えた表現として、会話のレパートリーに加えてみてくださいね。


コメント