海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
格上の相手やライバルを前に、負けはしなかったけれど最後まで食らいついて相手を本気にさせた、という場面に出会ったことはありませんか。
そんなときにぴったりの「give someone a run for one’s money」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン5第2話の冒頭、遠距離恋愛を続けようとするレナードに、シェルドンが趣味を持てと皮肉まじりに勧めるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「give someone a run for one’s money」の意味とニュアンス
give someone a run for one’s money
意味:(人)といい勝負をする、(人)を手こずらせる
直訳すると「(人)に、かけたお金に見合うだけの走りをさせる」となります。ポイントは、必ずしも勝つとは限らないところです。格上の相手に対して善戦し、簡単には勝たせない・楽はさせない、という拮抗した競争の含みを持つ表現です。
スポーツや選挙、ビジネスの競合など、力の差がある者同士が張り合う場面で広く使われます。「結果として勝った」ではなく「相手を本気にさせるほど食い下がった」という過程を評価するニュアンスがあり、負けた側にも使える点が特徴です。やや口語寄りで、称賛や警告のトーンをまといやすい表現でもあります。
【ここがポイント!】
- 核は「かけたお金に見合う走りをさせる」という競馬由来のイメージ
- 勝敗そのものより「相手を手こずらせるほど善戦する」過程を指す一言
- 負けた側にも使えるので、格上への健闘を称えるときに重宝する表現
『ビッグバン★セオリー』S05E02のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
プリヤがインドに戻り、遠距離恋愛を続けようとするレナードに、シェルドンは「その時間で趣味でも始めたら」と口を出します。例として持ち出したのが、巨大な毛糸玉を作るカンザスの男。そこでこのフレーズが飛び出します。
Sheldon: I read recently about a fellow in Kansas with an enormous ball of twine. I bet you could give him a run for his money.
(最近カンザスに、とんでもなく大きな毛糸玉を持つ男がいると読んだ。君なら彼といい勝負ができると思うよ。)Leonard: You know, some people might say that it’s great that we’re trying to make things work long distance.
(あのさ、遠距離でなんとかやろうとするのは素晴らしいって言ってくれる人もいるんだけど。)The Big Bang Theory Season5 Episode2(The Infestation Hypothesis)
シーン解説と心理考察
シェルドンは、レナードの遠距離恋愛を「無駄な努力」と切り捨て、毛糸玉作りという突拍子もない趣味を引き合いに出します。give him a run for his money は本来、相手の実力を認めた上での「いい勝負」を意味しますが、ここでは「巨大な毛糸玉を作る変人といい勝負ができる」という、レナードをやんわり茶化す使い方になっているのが見どころです。
褒め言葉の形を借りながら、中身は相手を小さく見せる皮肉になっている――この捻れがシェルドンらしさをよく表しています。当のレナードは、世間なら遠距離恋愛を応援してくれるはずだと反論しますが、シェルドンにはまるで響いていません。噛み合わない二人のテンポが、この一言に重なっています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
競馬場で、自分が賭けた馬(money)が本命馬を相手に最後まで競り合って走る姿を思い浮かべてみてください。掛け金に見合うだけの走り(a run for one’s money)を相手にさせる――つまり「楽勝はさせない、いい勝負をする」というイメージにつながります。
シェルドンが毛糸玉の男を引き合いに出す、あの少しずれたシーンと結びつけておくと、「格上相手に善戦する」という核がすっと記憶に残ります。勝ったかどうかではなく、相手を走らせたかどうか。そこに焦点を当てて覚えるのがコツです。
例文で覚える「give someone a run for one’s money」
勝負ごとや競争の場面で、格下が健闘したときに活躍するフレーズです。3つの例文で使い方の幅を見ていきましょう。
The rookie gave the champion a real run for his money.
(その新人は、チャンピオン相手に大健闘した。)
スポーツ観戦の感想を語る場面です。「負けたけれど互角に近い戦いをした」という称賛のニュアンスがよく出ます。
Our small bakery gives the big chains a run for their money.
(うちの小さなパン屋は、大手チェーンといい勝負をしているんです。)
自分の店やチームの競争力を語るビジネス寄りの場面です。規模で劣っても引けを取らない、という前向きな自負が伝わります。
A: Don’t underestimate her in the tournament.
B: I know — she’ll give you a run for your money.
(A:トーナメントで彼女を甘く見ちゃだめだよ。)
(B:わかってる。あいつは手こずらせてくるからね。)
対戦相手を警戒する会話です。「手強いぞ」という警告のトーンで使うと、相手への敬意もにじみます。
あわせて覚えたい関連表現
give someone a hard time
((人)を困らせる、手こずらせる)
「手こずらせる」点は似ていますが、こちらは相手を困らせる・苦労させるという意味合いが中心で、競争での善戦という含みはありません。
hold one’s own
((劣勢でも)持ちこたえる、引けを取らない)
自分が崩れず対等に渡り合うことに焦点があります。give a run〜が「相手を手こずらせる」と相手側を見るのに対し、こちらは自分の踏ん張りに視点が向きます。
neck and neck
(互角で、接戦で)
差がない接戦そのものを表す表現です。give a run〜が持つ「相手に楽をさせない」という能動的な働きかけのニュアンスはなく、状況を客観的に描きます。
Note|競馬から生まれた「賭け金に見合う走り」
give someone a run for one’s money は、その語感からは少し意外ですが、競馬の世界に由来するとされる表現です。
賭け事としての競馬では、観客は馬に金を賭けます。賭けた馬がすぐに脱落してしまえば、かけた金はあっけなく無駄になります。逆に、その馬が最後まで懸命に走り、好レースを演じてくれれば、たとえ勝てなくても「かけた金に見合うだけの走り(a run for one’s money)」を見せてもらえた、という満足が残ります。ここから、「相手に簡単には勝たせず、見応えのある勝負をさせる」という意味へと広がっていったと言われています。勝敗そのものではなく、最後まで食い下がる過程に価値を置く――この表現が負けた側にも使える理由は、こうした成り立ちにあると考えられます。
劇中でシェルドンが「毛糸玉の男といい勝負ができる」と言ったのも、レナードという「馬」がどれだけ走れるか、という見立てだと思うと、皮肉の構図がより立体的に見えてきます。
勝ち負けの手前にある「健闘」を映す、競馬場生まれの一言です。
まとめ|レナードを馬に見立てたシェルドンの一言
give someone a run for one’s money は、相手を打ち負かすことではなく、相手を本気にさせるほど食い下がることを表す表現です。勝てなくても、最後まで競り合えば使える――そこにこのフレーズの懐の深さがあります。
格上のライバルに健闘したとき、規模で劣る側が大手と張り合うとき、この一言があれば「いい勝負だった」という気持ちを一語で伝えられます。
スポーツでも仕事でも、相手を手こずらせた場面を思い出しながら、表現の引き出しに加えてみてください。


コメント