海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
夢の中に現れた人物に、思いがけず本音を打ち明けてしまう。そんな不思議な場面が、ドラマにはときどきあります。
妻を怒らせてしまい途方に暮れるシェルドンが、夢の中でプロトン教授に助けを求める「make it right」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン12第5話の後半のワンシーンから、一緒に見ていきましょう。
「make it right」の意味とニュアンス
make it right
意味:(過ちや失敗を)埋め合わせる、関係を修復する
make it rightは、自分が誰かを怒らせたり傷つけたりした後に、その状況や関係を元通りに、あるいはより良い状態に修復しようとすることを表す口語表現です。make(〜にする)+it(それ、その状況)+right(正しい状態)という組み合わせから、崩れてしまった状態を「正しい形」に戻すというイメージが浮かびます。
単なる謝罪の言葉にとどまらず、具体的な行動で埋め合わせようとするニュアンスを含むのが特徴で、口先だけの謝罪とは一線を画します。夫婦や友人関係で相手を怒らせてしまった場面はもちろん、企業が顧客の不満に対応する場面など、個人からビジネスまで幅広く使われています。「ごめん」の一言だけでは足りないと感じたときに、次の一手を示す言葉として重宝する表現でもあります。
【ここがポイント!】
- 核は「崩れた状況を正しい形に戻す」という修復のイメージ
- 謝罪の言葉だけでなく、具体的な行動での埋め合わせを含む表現
- 夫婦関係からビジネスの謝罪まで、幅広い場面で使えるのが読み取りのコツ
『ビッグバン★セオリー』S12E05のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
夢の中、シェルドンはプロトン教授(アーサー)と再会します。いつもの惑星ダゴバのはずが、今回はデリカテッセンがある設定に戸惑いつつ本題を切り出す場面です。妻との間に起きた問題を、率直に打ち明ける様子に注目です。
Sheldon: I didn’t know that Dagobah had delicatessens.
(ダゴバにデリカテッセンがあるとは知らなかったな。)Arthur: Not good ones. Whatever you do, don’t order the Reuben.
(大したものじゃないがね。何があっても、ルーベンサンドだけは頼むな。)Sheldon: I’m having a problem in my marriage. I’ve upset my wife and I don’t know how to make it right.
(結婚生活で困ったことがあるんだ。妻を怒らせてしまって、どう埋め合わせればいいか分からない。)Arthur: And you’re… and you’re coming to me for advice? I-I upset my wife every time I woke up in the morning.
(それで…それで私にアドバイスを求めに来たのか? 私など、朝起きるたびに妻を怒らせていたようなものだぞ。)Sheldon: I’m not coming to you, you’re just a manifestation of my subconscious. I mean, I’m actually coming to me.
(君に相談しに来たわけじゃない。君は僕の潜在意識が作り出した存在にすぎないんだ。つまり、僕は自分自身に相談しに来ているということになる。)The Big Bang Theory Season12 Episode5 (The Planetarium Collision)
シーン解説と心理考察
ダゴバのデリカテッセン事情という、いかにも夢らしい脈絡のない話題から始まるやり取りには、シェルドンの夢の世界特有のユーモアが表れています。そこから一転、「妻を怒らせてしまって、どう埋め合わせればいいか分からない」と本題を切り出す様子には、いつもの傲慢さとは違う、素直に助けを求める一面が見えます。
プロトン教授が「私など、朝起きるたびに妻を怒らせていたようなものだぞ」とおどけて返すと、シェルドンはすぐさま「君は僕の潜在意識が作り出した存在にすぎないんだ」と理屈っぽく訂正します。プロトン教授への甘えと、どこまでも論理を手放さない性分が同居しているのが、この場面の面白さです。夢という設定を借りて、シェルドンが自分自身と向き合っている様子がうかがえます。相談相手が実在しないと分かっていてもなお助言を求めずにいられないところに、思いのほか深く悩んでいる胸の内が透けて見えます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
make(〜にする)とit(それ)とright(正しい状態)を重ねて、壊れてしまった状況を元の形に直す修理作業をイメージしてみましょう。
シェルドンが「どう埋め合わせればいいか分からない」と困っていたのは、まさに崩れてしまった夫婦関係という壊れた部品を、どう元通りに直せばいいか分からない状態でした。壊れたものを直して正しい形に戻す感覚を思い浮かべておくと、謝罪の言葉だけでなく行動も伴う「埋め合わせ」というこのフレーズの意味が、自然と結びついて記憶に残ります。設計図もなしに手探りで修理を始めるような心細さこそ、シェルドンが夢の中で助言を求めた理由なのかもしれません。
例文で覚える「make it right」
謝罪と行動の両方を含むmake it rightを、3つの例文で確認していきましょう。
I know I messed up, but let me make it right.
(失敗したのは分かってる、でも埋め合わせさせてくれ。)
自分の失敗を謝る日常会話の場面です。let meで「自分に行動させてほしい」という積極性が伝わり、口先だけで終わらせない姿勢が表れます。
The company offered a refund to make it right with unhappy customers.
(その会社は不満を持つ顧客への埋め合わせとして返金を申し出た。)
顧客対応を語るビジネスの場面です。offered a refundのように具体的な行動を添えると、埋め合わせの中身が明確になります。
A: I forgot our anniversary again.
B: Then you’d better find a way to make it right.
(A:また記念日忘れちゃった。)
(B:だったら何とかして埋め合わせないとね。)
夫婦・恋人間のすれ違いを語る会話です。find a wayという言い回しが、具体的な方法を考える必要性を強調しています。
あわせて覚えたい関連表現
make amends
((過失などの)埋め合わせをする、償う)
make amendsはmake it rightよりややフォーマルで、正式な謝罪や償いのニュアンスが強い表現です。改まった場面や、長く尾を引いた対立を修復するような文脈で選ばれやすい言い回しです。
fix things
(物事を修復する)
fix thingsは状況全般の修復を指す一般的な表現であるのに対し、make it rightは特に自分が引き起こした間違いを正すニュアンスが強くなります。
make up for something
(埋め合わせをする)
make up for somethingは何かの不足や失敗を補うことを指す表現で、make it rightほど関係の修復そのものに焦点は絞られていません。遅刻した時間や欠けていた成果など、数値化できる不足分を補う場面でよく使われます。
Note|make it right / make amends / make up for somethingの使い分け
「埋め合わせる」を表す英語表現はいくつもありますが、フォーマルさと焦点の当て方の違いを知っておくと、場面に応じて選びやすくなります。
make it rightは、日常会話でよく使われるくだけた表現で、謝罪の言葉に加えて具体的な行動での修復を含みます。これに対しmake amendsはややフォーマルで、He tried to make amends for his past mistakes by volunteering every weekend.(彼は毎週末ボランティアをすることで過去の過ちを償おうとした)のように、正式な償いの響きを持つ場面で使われます。さらにmake up for somethingになると、She worked overtime to make up for the missed deadline.(彼女は締め切りに遅れた分を埋め合わせるために残業した)のように、関係の修復というより「不足分を補う」という実務的な文脈で使われる傾向が強くなります。
こうして並べてみると、make it rightが持つ「関係そのものを元通りにする」という焦点の絞り方の独自性がはっきりします。誰との、何についての埋め合わせなのかを意識して選び分けると、シェルドンが夫婦関係の修復を求めていたような場面にも、的確な一言を選べるようになります。フォーマルな場では堅い表現を、身近な相手には日常的な表現を選ぶという基準を持っておくと、謝罪の言葉ひとつでも相手との距離感を誤らずに済みます。
埋め合わせの言葉ひとつにも、向き合う相手への姿勢が表れるものです。
まとめ|妻を怒らせたとき、どう埋め合わせる?
make it rightは、自分が引き起こした過ちや失敗を、具体的な行動で埋め合わせようとする口語表現です。
謝罪の言葉だけでなく、行動を伴った修復のニュアンスを含むため、夫婦関係からビジネスの場面まで幅広く使うことができ、日常会話に馴染みやすい言い回しです。
夢の中のプロトン教授に本音を打ち明けながらも、結局は自分自身と向き合うことになったシェルドンの姿には、素直に助けを求める意外な一面がにじんでいました。答えを誰かに求めているようで、実は自分の中にすでにヒントがあったという展開は、多くの人が経験する悩み相談の構図とも重なります。関係を元通りにしたいと感じたときの一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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