海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
誰かに親切にしてもらったとき、「今度はこちらがお返しする番だ」と思うことってありますよね。その気持ちを英語ではどう表すのでしょうか。
そんなときにぴったりの「return the favour」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン7第4話の中盤、シェルドンがビデオ通話越しにエイミーを「お返しのデート」に誘うシーンから、一緒に見ていきましょう。
「return the favour」の意味とニュアンス
return the favour
意味:お返しをする、受けた恩に報いる
favour は「好意」「親切な行為」を意味する名詞です(アメリカ式の綴りでは favor)。return は「返す」。この二つを合わせた return the favour は、「相手がしてくれた親切に、同じように行為で報いる」という、互恵を表す定番のフレーズになります。
基本は良い意味で使われます。手伝ってもらった、シフトを代わってもらった、支援してもらった。そうした恩に対して「次はこちらが」と申し出るときの、自然で温かい言い回しです。
一方で、文脈によっては皮肉や仕返しの意味で反語的に使われることもあります。相手にやられたことを「お返しする」と言えば、それは報復をほのめかす表現になります。劇中のシェルドンは、まさにこの二面性を巧みに利用しています。表向きは「恩返し」を装いながら、裏では別の意図を隠しているのです。
【ここがポイント!】
- 核は「return(返す)+ the favour(好意)」で、受けた親切を返すイメージ
- 基本は温かい互恵の表現だが、反語的に「仕返し」をほのめかすこともできる
- favour(英)と favor(米)で綴りが変わる点も押さえておきたい一言
『ビッグバン★セオリー』S07E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
シェルドンがエイミーに予定外のビデオ通話をかけ、突発的なデートに誘います。自分の好きな映画に付き合ってくれたお礼に、今度は彼女の好きな番組を一緒に観ようという、一見すると思いやりにあふれた申し出です。
Sheldon: I’m calling to invite you to a spontaneous date night tomorrow evening. You were kind enough to watch Raiders of the Lost Ark with me. So I’d like to return the favour by inviting you to watch an episode of your favourite childhood television series, Little House on the Prairie.
(明日の夜、突発的なデートに君を誘いたくて電話したんだ。君は親切にもレイダースを一緒に観てくれた。だからお返しに、君が子供の頃大好きだった『大草原の小さな家』を一緒に観ようと思って)Amy: That sounds lovely.
(素敵じゃない)The Big Bang Theory Season7 Episode4(The Raiders Minimization)
シーン解説と心理考察
シェルドンのセリフは、言葉だけ見れば完璧な「恩返し」の申し出です。kind enough(親切にも)とエイミーの好意を認め、return the favour とお返しを宣言する。その丁寧さがにじむ場面です。
ところが視聴者は、シェルドンの本当の狙いを知っています。彼はエイミーに自分の好きな映画を批判された仕返しに、彼女の大切な番組をわざと粗探しするつもりなのです。return the favour という温かい表現が、ここでは報復の口実として使われているという二重構造があります。
直後にシェルドンが「なぜローションを塗る? こんなに手が柔らかいのに」と独白して企みを露わにする流れまで含めて、建前の親切と裏の意図のギャップが会話の温度を変えています。同じ一言が、文脈次第で真逆の意味を帯びるという好例として響きます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
return the favour は、好意がキャッチボールのように相手と自分の間を往復する絵をイメージすると覚えやすくなります。相手から投げられた「好意」のボールを、今度は自分が投げ返す。その往復の動きが return the favour です。
シェルドンが「お返しのデート」と言いながら、実は仕返しのボールを投げ返そうとしている場面を思い浮かべれば、この表現が良い意味でも反語でも使えるという幅まで、一緒に記憶に残せます。投げ返すボールの中身が、感謝なのか仕返しなのか。それは文脈が決めるのだと押さえておきましょう。
例文で覚える「return the favour」
return the favour は、感謝のお返しから反語的な仕返しまで、文脈で表情を変えます。場面の異なる3つの例文で見ていきましょう。
Thanks for helping me move. I’ll return the favour anytime.
(引っ越しを手伝ってくれてありがとう。いつでもお返しするよ)
友人の手助けにお礼を言う場面です。最も典型的な、温かい互恵の使い方で、anytime を添えると「いつでも頼って」という気持ちが伝わります。
They supported our campaign, and now we’re returning the favour.
(彼らは我々の運動を支援してくれた。今度はこちらがお返しをする番だ)
組織同士の互恵関係を述べる場面です。ビジネスや団体間で「支援してもらった恩に報いる」という、ややフォーマルな文脈でも使えます。
A: Why did you help him out? I thought you two didn’t get along.
B: He covered for me last year, so I’m just returning the favour.
(A:なんで彼を助けたの? 二人は仲が悪いと思ってた)
(B:去年かばってくれたからさ、ただお返しをしてるだけだよ)
過去の恩に報いる理由を説明する会話です。return the favour が、行動の背景にある「貸し借り」の感覚を一言で説明してくれます。
あわせて覚えたい関連表現
do someone a favour
(人に親切にする、頼みを聞く)
こちらは「好意を与える」側の表現です。return the favour がその好意を「返す」側を指すので、do someone a favour とペアで覚えると、好意の往復関係がつかみやすくなります。
pay someone back
(恩や仕返しを返す)
お金の返済にも、恩返しにも、仕返しにも使える表現です。return the favour より口語的で、文脈によっては「報復」の意味に傾きやすい点が異なります。
one good turn deserves another
(情けは人のためならず、良い行いには良い報いを)
互恵の精神を一般論として述べることわざです。return the favour が個別の行為を指すのに対し、こちらは「お返しし合うのが世の常」という考え方そのものを表します。
Note|favour と favor ―「好意」を表す語の英米綴り
return the favour を文字にしたとき、favour と favor のどちらが正しいのか迷ったことはありませんか。実はどちらも正解で、その違いには英語の歴史が関わっています。
favour はラテン語の favor(好意、厚遇)に由来する語です。興味深いのは、イギリス英語では favour と綴り、アメリカ英語では favor と綴るという地域差があることです。この -our と -or の対立は favour だけの話ではなく、colour と color(色)、honour と honor(名誉)、neighbour と neighbor(隣人)など、多くの単語に共通して見られます。この綴りの分かれ目には、19世紀アメリカの辞書編纂者ノア・ウェブスターらが進めた綴り改革が関わっているとされています。彼らは、発音されない余分な文字を整理し、より合理的な綴りを広めようとしました。その結果、アメリカでは -our が -or へと簡略化され、イギリスは伝統的な綴りを保ったと言われています。劇中の台本表記は favour、つまりイギリス式でしたが、アメリカのドラマでも作品やシーンによって表記が揺れることがあります。
つまり return the favour と return the favor は、意味はまったく同じで、どちらの英語圏に合わせるかという違いにすぎません。
たった一文字の有無に、海を越えた言葉の歴史が宿っているのですね。
まとめ|シェルドンの企みから学ぶ「お返し」の一言
return the favour は、受けた親切に同じように行為で報いる、互恵を表す表現です。favour(好意)を return(返す)というシンプルな組み合わせで、恩返しの気持ちを温かく伝えられます。
この表現を知っておくと、手伝ってもらったお礼に「今度はこちらが」と申し出たり、支援への感謝を行動で示したりと、人間関係の往復を言葉にできるようになります。文脈によっては反語的に仕返しをほのめかすこともできる、表情豊かな一言です。
シェルドンが「お返し」を装って企みを隠したように、同じ言葉が文脈で真逆の意味を帯びる面白さも込みで、会話のレパートリーに加えてみてくださいね。


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