海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
締め切りや誰かの催促に追われて、「ちょっと、そんなに急かさないでよ」と言いたくなったこと、ありませんか。
そんな「しつこく迫られる」感覚にぴったりの「up one’s butt」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン9第7話の前半、ゲームに夢中なハワードが妻バーナデットに話しかけられるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「up one’s butt」の意味とニュアンス
up one’s butt
意味:〜にしつこく付きまとう、うるさく迫る、ぴったり張りついて離れない
直訳すると「誰かのお尻(butt)のすぐ後ろ(up)にくっついている」という意味で、そこから「相手が逃げ場のないほど近くまで迫ってきて、うっとうしい」という感覚を表す砕けた口語になっています。人がしつこく付きまとってくる場合にも、締め切りや上司の催促のように状況に追い立てられる場合にも使えます。
butt という語が示すとおり、かなりカジュアルでくだけた響きを持つ表現です。軽い愚痴やボヤキの中で出てくることが多く、家族や友人との会話、独り言のようなセリフで自然に登場します。「近すぎてうっとうしい」という距離感の近さが、この表現の核になっています。
【ここがポイント!】
- 核は「お尻のすぐ後ろまで迫られている」という逃げ場のない近さのイメージ
- 人にも締め切り・催促にも使える、うっとうしさをにじませる一言
- 仕事のメールなどでは避けたい、かなり砕けた俗語なのが使うときの注意点
『ビッグバン★セオリー』S09E07のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ハワードが歴史ストラテジーゲームに熱中しているところに、妻のバーナデットが家の改装について相談を持ちかけます。画面の中の敵に攻め立てられているハワードは、その状況をこの一言で表します。
Bernadette: Hey. You got a minute?
(ねえ、ちょっといい?)Howard: Not really. Visigoths are kind of up my butt right now.
(今はちょっと無理。西ゴート族がうるさく攻めてきてるんだ。)Bernadette: Pause the game, Howard.
(ゲームを止めて、ハワード。)The Big Bang Theory Season9 Episode7(The Spock Resonance)
シーン解説と心理考察
ゲームの中で敵キャラ(西ゴート族)に攻め込まれている状況を、ハワードが「up my butt」と表しているのが見どころです。実在の人物ではなく画面の中の敵を主語に置くことで、彼がいかにゲームに入り込んでいるかが伝わってきます。妻の相談よりゲームを優先したい本音が、この砕けた一言ににじむ場面です。
その直後、バーナデットが愛称の「ハウィー」ではなくフルネームの「ハワード」で呼んだ瞬間、彼の態度が一変します。妻が本気だと察してゲームを中断する流れに、夫婦の力関係がさりげなく表れています。「うるさく迫ってくる」のはゲームの敵だけでなく、実は改装を進めたい妻のほうでもある、という二重構造が会話の温度を変えています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
あおり運転の車が、自分の車の真後ろにぴったりつけてくる場面を思い浮かべてみてください。バックミラーいっぱいに迫る車体、あの「逃げ場のない近さ」が「up one’s butt」のイメージそのものです。ハワードの場合は画面の中の敵が背後から攻め立ててくる感覚でしたが、核にあるのは同じ「すぐ後ろまで来ていてうっとうしい」という距離感。お尻(butt)のすぐ後ろに何かが張りついている絵をそのまま頭に浮かべれば、しつこさ・せっつかれる感覚ごと記憶に残ります。
例文で覚える「up one’s butt」
人にも状況にも使えるこのフレーズ、3つの場面で「迫られるうっとうしさ」を体感してみましょう。
My boss has been up my butt all week about the quarterly report.
(上司に四半期報告のことで今週ずっとせっつかれてる。)
仕事の催促にうんざりしている場面です。人を主語にして「しつこく急かしてくる」と愚痴るときの定番の使い方になります。
The car behind me was right up my butt the whole drive home.
(後ろの車に、家まで帰る間ずっとぴったりつけられた。)
車間距離の近さを訴える場面です。right を加えると「本当にぴったり」と近さがさらに強調されます。
A: Can you just give me a second? You’re kind of up my butt right now.
B: Sorry, I just really need that file.
(A:ちょっと待ってくれない? なんか今、せっつかれてる感じなんだけど。)
(B:ごめん、どうしてもそのファイルが要るんだ。)
急かしてくる相手に軽く反発する会話です。距離を取ってほしいと伝えるときの、くだけたやり取りで使えます。
あわせて覚えたい関連表現
on someone’s back
(〜にうるさく言う、小言を言って責め立てる)
催促や小言で相手を責め立てるニュアンスが強い表現です。up one’s butt と同じ「うっとうしさ」を表しますが、こちらは「言葉でせっつく」感覚に寄っています。
breathe down someone’s neck
(〜を後ろから監視する、しつこく見張る)
首筋に息がかかるほど近くで見張られる、という監視のプレッシャーを表します。up one’s butt より少し上品で、職場の場面でも使いやすい表現です。
all over someone
(〜に過度にまとわりつく、つきまとう)
好意でも非難でも使える幅広い表現です。up one’s butt は「うっとうしい」という否定的な響きが強い点で違いがあります。
Note|体の部位で「しつこさ」を表す英語の感覚
ハワードの「up my butt」もそうですが、英語には体の部位を使って「相手が近くまで迫ってうっとうしい」を表す口語がいくつもあります。
たとえば on one’s back(背中の上)、breathe down one’s neck(首筋に息を吹きかける)、get out of my face(顔の前からどけ)、up one’s butt(お尻のすぐ後ろ)など、いずれも背中・首・顔・お尻といった「自分では直接見えない、あるいは無防備な部位」のすぐ近くに相手がいる状況を描いています。英語では、こうした体の周囲の空間(パーソナルスペース)に他人が踏み込んでくることを、そのまま「圧」や「うっとうしさ」として言葉にする発想があるとされています。逆に距離が保たれている状態は give someone space(スペースを与える)のように「空間」で表現されます。近さ=圧、距離=自由という空間感覚が、表現の土台になっていると言えます。
この見方で振り返ると、up one’s butt が単に「しつこい」ではなく「すぐ後ろまで来ている近さ」を含んだ表現だということが、より鮮明になります。
体の周りの距離感が、そのまま感情の距離感になる。英語の空間感覚が見える一言です。
まとめ|ハワードのボヤキから学ぶ「迫られる近さ」
「up one’s butt」は、誰か(何か)がすぐ後ろまで迫ってきて逃げ場がない、あの落ち着かない近さを一言で表す表現です。人のしつこさにも、締め切りや催促のプレッシャーにも使えます。
この表現を知っておくと、「しつこくされてうんざり」という気持ちを、英語ならではの体感的なイメージで伝えられるようになります。ただしかなり砕けた俗語なので、相手と場面を選ぶ点だけ意識しておきたいところです。
ゲームの敵に追われるハワードのボヤキの後ろに、私たちが日々感じている「ちょっと距離を取ってほしい」という小さな本音が、ほんの少し透けて見える場面でした。


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