海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
説明のつかない出来事を、深く追及せずに何かのせいにして片づけてしまった経験はありませんか。
そんなときに使われる「chalk something up to」を、『ホワイトカラー』シーズン5第4話の中盤、闇社会の情報通モジーが、ある薬物の仕組みをニールに説明する場面から、一緒に見ていきましょう。
「chalk something up to」の意味とニュアンス
chalk something up to
意味:〜のせいだと片づける、〜のせいにして説明する
chalk A up to B という構文で、「Aという結果をBという原因のせいだと考えて片づける」ことを表します。深く追及せず、ある理由のせいにして納得する、という口語的なニュアンスを持つ表現です。
失敗や不可解な出来事に対して、「まあ、そういうこともある」と自分を納得させたり、他人の行動を大目に見たりする場面でよく使われます。原因を厳密に突き止めるというより、都合のよい説明で一区切りをつける、という響きが特徴です。up to のあとに続く原因は、必ずしも事実として確定している必要はなく、話し手が「そういうことにしておく」と決めた仮の理由であることも少なくありません。
【ここがポイント!】
- 「chalk something up to」の核は、結果をある原因のせいにして片づけるイメージ
- 深く追及しない、やや軽い納得のニュアンスを持つ表現
- chalk up の後ろに原因を続けることで、状況を簡潔に説明できるのがコツ
『ホワイトカラー』S05E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ニールの部屋に居候するモジーが、以前口にしていたある薬物の名前について、続きを聞かせてほしいとニールに促されます。裏社会の情報に精通したモジーが、その薬物の効果と、悪用する側の手口を淡々と語る場面です。専門知識をひけらかすでもなく、ただ事実として並べていく語り口に注目です。
Neal: Good night, Cinderella. You were saying.
(グッドナイト・シンデレラ、か。続きを聞かせてくれ。)Mozzie: Oh, it’s a combination of GHB, ketamine, and flunitrazepam. The girls give it to their Johns, and then they do whatever they want while under the influence. Empty out their bank accounts, hand them the keys to their car. Next day, most guys don’t recall anything happening. They just chalk it up to having too much fun.
(ああ、GHBとケタミン、フルニトラゼパムを組み合わせたものだ。女の子たちは客にそれを盛って、効いている間に好き放題する。銀行口座を空にしたり、車の鍵を渡させたり。翌日、たいていの男は何が起きたか覚えていない。みんな、ちょっと羽目を外しすぎただけだと片づけるんだ。)Neal: And you think Summers knows about this?
(それで、サマーズがこのことを知っていると思うのか?)Mozzie: Well, anything’s possible with pharmacology.
(まあ、薬学の知識があれば何でもありえるさ。)White Collar Season5 Episode4 (Controlling Interest)
シーン解説と心理考察
同居生活の中でモジーが以前口にした「グッドナイト・シンデレラ」という薬の名前を、ニールが「続きを聞かせてくれ」と改めて尋ねます。裏社会の情報に精通したモジーは、薬物の組み合わせとその使われ方を、感情を交えず淡々と語ります。
「みんな、ちょっと羽目を外しすぎただけだと片づけるんだ」という一言には、被害に気づかないまま都合よく記憶を処理してしまう側の心理への皮肉が込められています。他人事のような淡々とした語り口が、かえってこの手口の巧妙さを際立たせています。ニールが「サマーズがこのことを知っていると思うのか」と核心に迫ると、モジーは「薬学の知識があれば何でもありえる」とはぐらかすように答え、確証のない疑念であることを匂わせます。専門知識を披露しながらも慎重に言葉を選ぶモジーの姿が印象的な場面です。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
黒板(chalkboard)に「原因はこれ」と書きつけて、その場で納得してしまう様子を思い浮かべると覚えやすくなります。chalk up(黒板に書き記す)という元の意味から、「深く検証せず、ある理由のせいにして片づけてしまう」という比喩的な意味へつながっていると意識すると、記憶に残りやすくなります。
被害者が異変に気づかないまま、都合のよい理由で片づけてしまうという台詞の内容も、まさにこのフレーズの持つ「深追いしない」ニュアンスそのものでした。誰かに都合よく片づけられてしまう状況とセットで覚えておくと、忘れにくくなります。書き記した黒板の文字を、あとから誰かがこっそり書き換えてしまうかもしれない。そんな危うさまで思い浮かべると、このフレーズの奥にある皮肉なニュアンスも感じ取れるようになります。
例文で覚える「chalk something up to」
日常の振り返りから仕事の場面まで、chalk something up to を3つの例文で確認していきましょう。
I chalked up my poor performance to lack of sleep.
(私は自分の不出来なパフォーマンスを、睡眠不足のせいにした。)
自分の失敗を振り返る場面です。lack of sleep のように原因を具体的に添えると、自然な言い訳として響きます。
She chalked his rude comment up to a bad day at work.
(彼女は彼の失礼な発言を、仕事で嫌なことがあったせいだと片づけた。)
他人の言動を大目に見る場面です。誰かをかばうときの穏やかな言い回しとして使えます。
A: Why didn’t the experiment work? B: We chalked it up to a faulty sensor at first.
(A:なぜ実験がうまくいかなかったの? B:最初はセンサーの不具合のせいだと考えたんだ。)
実験結果の原因を議論する場面です。at first を添えると、後で見直す余地があるニュアンスが加わります。
あわせて覚えたい関連表現
attribute A to B
(AをBに起因すると考える)
chalk A up to B より硬く客観的な表現で、学術的・フォーマルな文脈で使われることが多く、chalk up の持つ「深く追及せず片づける」という口語的なニュアンスは薄くなります。
blame something on someone/something
(何かを人・物のせいにする)
blame は「責任を負わせる」という非難のニュアンスが強いのに対し、chalk something up to はより中立的で、単に「そういうものだと納得する」意味合いが強くなります。
put it down to something
(それを〜のせいだと考える)
chalk something up to とほぼ同義のイギリス英語寄りの表現で、アメリカ英語では chalk up の方がより一般的に使われます。意味の重なりは大きいものの、どちらの言い回しを選ぶかで、話し手が育った英語圏の傾向がうっすらと表れることもあります。
Note|chalk up に込められたツケの記録
chalk up という表現の背景には、かつての酒場での慣習があります。会計をその場で済ませず、黒板(chalkboard)に客の名前とツケの金額を書き記しておき、後日まとめて精算するという仕組みが、かつての酒場では広く行われていました。この「黒板に書きつける」という行為そのものが chalk up の直接的な由来とされています。
そこから chalk up は、「記録として書き留める」「実績として数える」という意味で使われるようになり、chalk up a win(勝利を記録する)のような、成果を積み重ねる文脈でも用いられるようになりました。一方 chalk A up to B という形になると、「Aという出来事をBという原因の欄に書き記す」というイメージから転じて、「Aの原因をBのせいだと考えて片づける」という、今回学んだ意味へとつながっていきます。
酒場の黒板に書かれるツケは、細かく吟味されることなく、とりあえずその場で記録される性質のものでした。この「深く検証せず、とりあえず記録して済ませる」という感覚が、chalk something up to の持つ「深く追及せず、ある理由のせいにして納得する」というニュアンスに、そのまま引き継がれています。
会計簿の一行に書き記すような手軽さで原因を片づけてしまう。その感覚を知っておくと、chalk something up to という表現が持つ、軽やかで割り切った響きがより鮮明に感じられます。黒板の文字は消しゴムひとつで消えてしまう、それくらい暫定的な結論だという含みまで意識すると、フレーズの奥行きがより深く感じられます。
まとめ|片づけることと、向き合うことの境界線
chalk something up to は、不可解な出来事や失敗を、深く追及せずにある原因のせいだと考えて片づける表現です。黒板にツケを書き記す慣習に由来する語源を知っておくと、この表現が持つ軽やかな割り切りのニュアンスも自然に理解できます。
自分の失敗を振り返るときも、他人の言動を大目に見るときも、この一言があれば状況を簡潔に説明できます。
薬物の仕組みを淡々と語るモジーと、核心に迫ろうとするニールのやり取りには、確証のない疑念を慎重に扱う二人の姿勢が表れていると言えます。断定を急がず、材料を積み重ねながら疑いの輪郭を確かめていく、その丁寧さこそがこの2人らしさなのでしょう。


コメント