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かつて深い因縁のある相手から、思いがけない形で「借りを返せ」と迫られる、そんな緊迫した場面が海外ドラマには時々あります。
そんな緊張感にぴったりのmake it up toを、『ホワイトカラー』シーズン1第13話の終盤、誘拐事件の駆け引きの中でかつて裏切った相手ウィルクスにとうとう捕らえられてしまったニールが、殺されるどころか意外な形で借りの返済を持ちかけられる場面から、一緒に見ていきましょう。
「make it up to」の意味とニュアンス
make it up to
意味:(人に)埋め合わせをする、借りを返す、償う
make it up to 人で「(人に)迷惑や損害の埋め合わせをする」という意味です。makeは「作る」、upは「元の状態に戻す・埋める」というニュアンスを添え、itは埋め合わせの行為そのものを漠然と指します。全体で、その埋め合わせという行為を相手に対して成立させる、というイメージです。似た形にmake up for(物事を埋め合わせる)がありますが、make it up toの後ろには必ず人が続く点が違いです。友人との約束を破ってしまったときや、仕事でミスをして相手に迷惑をかけたときなど、今度埋め合わせするからと行動で示す約束を伝える場面でよく使われます。単なる謝罪の言葉だけでなく、その後の行動を伴う返済のニュアンスが強い表現です。日常会話ではI owe youに近い感覚で使われることもあり、相手との信頼関係を修復したいという気持ちがにじむ言い回しです。
【ここがポイント!】
- 「埋め合わせを人に対して成立させる」がmake it up toの核
- make up for(物事の埋め合わせ)と違い、後ろには必ず人が続くのが特徴
- 謝罪の言葉だけでなく、行動で示す約束というニュアンスを読み取るのがコツ
『ホワイトカラー』S01E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
かつて手を組みかけては物別れに終わった裏社会の顔役ウィルクスに、ニールは誘拐事件の駆け引きの中でとうとう捕らえられてしまいます。過去に大金を持ち逃げされた恨みを持つウィルクスは、報復してもおかしくない立場のニールに、殺す代わりのある提案を持ちかけます。
Wilkes: “You get to make it up to me.”
(お前には、俺への埋め合わせをしてもらうぞ。)White Collar Season1 Episode13 (Front Man)
シーン解説と心理考察
報復してもおかしくない状況で、ウィルクスがあえて選んだのは殺害ではなく取引でした。かつて大金を持ち逃げされた恨みを、力尽くの制裁ではなく利用価値のある駒として扱うことで晴らそうとする判断に、裏社会を渡り歩いてきた男の合理性がにじみます。短い一言に込められているのは、単なる脅しではなく借りは行動で返させるという支配的な発想です。相手を生かしたまま使い倒すという選択には、感情よりも実利を優先する犯罪者らしい打算が表れています。一方のニールも、この状況でなお淡々と切り返す余裕を崩さず、二人のやり取りには対等な駆け引きの緊張感が漂います。かつて協力しかけた相手だからこそ通じ合う、独特の距離感が会話の端々に見え隠れする場面です。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
make it up toを覚えるときは、天秤の傾いた片方の皿に、行動という重りをそっと積み足していく場面をイメージしてみましょう。言葉だけでは釣り合わない借りを、行動によって少しずつ元の均衡に戻していく感覚です。ウィルクスがニールに突きつけた一言も、口先の謝罪ではなく実際に働いて返せという、行動ありきの取引でした。埋め合わせは口約束では終わらない、というこの表現の芯にある感覚を、天秤が水平に戻る様子と一緒に記憶に残しておくと、使う場面を思い浮かべやすくなります。
例文で覚える「make it up to」
make it up toは、謝罪の言葉に行動の約束を添えたいときに幅広く使えます。3つの例文で、その使い方を見ていきましょう。
I’m so sorry I forgot your birthday. I’ll make it up to you.
(誕生日を忘れてしまって本当にごめん。埋め合わせはするから。)
うっかり大切な約束を忘れてしまったときに使われる言い方です。謝罪の言葉だけで終わらせず、次の行動での挽回を約束する温度感が伝わります。
We’re sorry for the delay. Let us make it up to you with a discount on your next order.
(納期の遅れをお詫びします。次回のご注文では割引という形で、必ず埋め合わせをさせてください。)
取引先や顧客への謝罪の場面で使われる表現です。具体的な補償を添えることで、言葉だけでなく誠意を形にして伝えられます。
A: You missed my recital because of work again.
B: I know, I know. Let me make it up to you this weekend.
(A:また仕事のせいで私の発表会に来られなかったのね。)
(B:分かってる、分かってるよ。今週末、必ず埋め合わせするから。)
家族や恋人との約束を破ってしまった気まずさを、次の行動で挽回しようとするやり取りです。
あわせて覚えたい関連表現
make up for
(〜の埋め合わせをする)
make it up toが「人」に対して償う形なのに対し、こちらは「物事・状況」そのものを埋め合わせる言い方で、対象が人か事柄かという点で使い分けが変わります。
owe someone one
(〜に借りがある)
make it up toが埋め合わせの「行動」に焦点を当てるのに対し、こちらはまだ返していない「借り」そのものを表す表現で、返済前の状態を指す点が異なります。
pay someone back
(〜に借りを返す、仕返しをする)
金銭的な返済や仕返しの文脈で使われることが多く、make it up toが持つ「関係修復」のニュアンスよりも、対等な精算に近い響きがあります。
Note|「借りを返す」心理を支える、返報性という仕組み
make it up toが表す埋め合わせという行動は、実は社会心理学で古くから研究されてきたテーマと重なります。
社会学者アルヴィン・グールドナーは1960年、人間関係には返報性の規範と呼ばれる暗黙のルールが働いていると論じました。何かを与えられたら同等のものを返そうとする、逆に何かを奪ったり傷つけたりしたら埋め合わせをしようとする、という心理的な引力です。この規範は文化や時代を超えて広く観察されており、人間関係を維持するための土台の一つとされています。相手からの一方的な施しや損害を受けたまま放置すると、心理的な負い目が残り続け、関係そのものが不安定になるとも言われています。ドラマのウィルクスがニールに突きつけた埋め合わせをしろという要求も、この規範を逆手に取ったものと読めます。奪われた側が一方的に力で報復するのではなく、相手に借りを返させる形で関係の帳尻を合わせようとする発想は、暴力よりも合理的な精算の仕方とも言えます。
make it up toという表現が持つ行動で返すという響きは、この返報性の心理をそのまま言葉にしたものと言えます。謝罪の言葉だけでは埋まらない溝を、行動という重りで埋めていく感覚です。
借りを返すという行為には、人間関係を支える普遍的な仕組みが隠れているのかもしれません。
まとめ|宿敵からの意外な取引に見る「借りの返し方」
make it up toは、迷惑や損害を与えた相手に対して、行動で埋め合わせをするときに使われる表現です。make up forが物事そのものを埋め合わせるのに対し、こちらは人への償いに焦点が当たる点が特徴です。ドラマの中でウィルクスがニールに投げかけた一言も、力尽くの報復ではなく、相手に借りを返させるという冷静な選択として響いていました。謝罪の一言だけで済ませず、その後の行動で示す約束として使えば、相手との関係を立て直したいという気持ちがより伝わります。会話のレパートリーに加えてみてください。


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