海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
誰かの説明を聞いていて、断片的な情報がどうにもかみ合わないと感じ、違和感を言葉にしたくなる瞬間が、日常にもあるのではないでしょうか。
そんな矛盾を指摘する「not add up」を、『ホワイトカラー』シーズン5第8話の中盤、ニールの最近の様子に引っかかりを覚えたピーターが、エリザベスにからかわれながらも本音をこぼす場面から、一緒に見ていきましょう。
「not add up」の意味とニュアンス
not add up
意味:つじつまが合わない
add up はもともと「(数字を)足し算する」という意味の表現ですが、否定形の don’t add up / doesn’t add up にすると、「複数の事実や証言が整合しない」という比喩的な意味になります。数字の合計が一致するかどうかという算数のイメージが、そのまま話や状況の整合性を測る感覚に転じている点が特徴です。捜査や推理の文脈で、断片的な情報がうまくかみ合わないときによく使われる言い回しですが、日常のちょっとした違和感を言葉にする場面でも幅広く応用できます。
【ここがポイント!】
- 「not add up」の核は、複数の事実や証言の整合性が取れていないという指摘
- 数字の足し算(add up)から、話の辻褄という比喩的な意味に転じた表現、否定形でのみこの意味になる
- gut(勘)などと組み合わせて、直感的な違和感を根拠つきで語るのに向いている
『ホワイトカラー』S05E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ニールが誰かとこっそり会っていると知ったピーターは、何か企んでいるのではと疑いを口にします。エリザベスに冷静にたしなめられながらも、最終的に本音をこぼすピーターの一言に注目です。
Peter: He’s been sneaking around with this woman, and I think he’s up to something.
(あいつはその女性とこそこそ会っていて、何か企んでいると思うんだ。)Elizabeth: Or maybe he’s having a nice meal with a nice girl.
(あるいは、素敵な女性と楽しい食事をしているだけかもよ。)Peter: There’s no reason for Neal to keep this from me. What do I care if he’s going on a date with a girl?
(ニールが俺に隠す理由なんてないだろう。あいつが誰とデートしようと俺には関係ないさ。)Elizabeth: Clearly you care quite a bit.
(どう見ても、かなり気にしてるじゃない。)Peter: Nah, there’s more to it than this. A lot of things Neal has been doing don’t add up, and my gut tells me she’s at the center of it.
(いや、それだけじゃないんだ。最近のニールの行動には、いろいろとつじつまが合わないところがある。俺の勘では、彼女がその中心にいる。)White Collar Season5 Episode8 (Digging Deeper)
シーン解説と心理考察
ニールが誰かと密会していると知ったピーターは、「何か企んでいる」とすぐさま決めつけます。それに対してエリザベスは「素敵な女性と楽しい食事をしているだけかも」と冷静に受け止め、夫の思い込みをやんわりたしなめます。ピーターが「俺には関係ない」と強がるそばから、「かなり気にしてるじゃない」と見抜かれてしまうやり取りには、部下であり友人でもあるニールを放っておけないピーターの不器用さがにじみます。
最後にピーターが「それだけじゃないんだ」と本音をこぼし、ニールの行動につじつまが合わないと真剣な口調で語る場面では、単なる詮索好きではなく、捜査官としての勘が働いていることが示されます。茶化すエリザベスと、それでも自分の直感を手放さないピーターのコントラストが、二人の信頼に基づいた夫婦のやり取りを際立たせています。軽い調子で始まった会話が、最後には真剣な口調に切り替わる緩急にも、ピーターの中で疑念が徐々に強まっていく様子が見て取れます。妻に軽くいなされてもなお自分の勘を曲げない頑固さも、彼らしい一面です。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
not add up を覚えるコツは、レシートの合計金額を電卓で計算しても、レジの表示と一致しないイメージを持つことです。数字が add up(合計が合う)しない状態を、事実や話の食い違いに置き換えて考えると、比喩的な意味がすっと理解できます。
ピーターが感じ取った違和感も、ニールの言動という一つひとつの数字を足し合わせても、合計がどこか合わない状態でした。個々の出来事は小さくても、積み重ねると全体としてつじつまが合わなくなる。そんな算数のイメージとセットで覚えておくと、誰かの説明に引っかかりを覚えた場面で、この表現がすっと出てくるはずです。一つひとつの違和感は些細でも、並べてみると全体像が浮かび上がってくるという感覚を持っておくと、フレーズの意味がより鮮明になります。
例文で覚える「not add up」
日常の違和感からビジネスの監査まで、not add up を、3つの例文で確認していきましょう。
Something about his alibi just doesn’t add up.
(彼のアリバイには、どうにもつじつまが合わないところがある)
誰かの説明に違和感を持つ場面で使えます。just を添えることで、理由はうまく言えないが引っかかるという感覚が伝わります。
The company’s financial report doesn’t add up, and the auditors want an explanation.
(その会社の財務報告書はつじつまが合わず、監査担当者が説明を求めている)
会計上の不審点を指摘するビジネスの場面にふさわしい表現です。auditors want an explanation という続きが、事態の深刻さを補っています。
A: He said he was home all night, but his phone location doesn’t add up.
B: Yeah, something’s off.
(A:彼は一晩中家にいたと言ってたけど、スマホの位置情報とつじつまが合わないんだ)
(B:うん、何かおかしいね)
矛盾を指摘し合う日常会話です。but でいったん相手の説明を受け止めてから食い違いを指摘する流れが自然です。
あわせて覚えたい関連表現
doesn’t make sense
(意味が分からない、筋が通らない)
not add up が複数の事実・情報の整合性に焦点を当てるのに対し、doesn’t make sense はより広く理屈が通らない全般に使える表現です。
something’s fishy
(何か怪しい)
not add up が事実関係の矛盾を客観的に指摘するのに対し、something’s fishy は主観的な怪しさの直感を表すカジュアルな言い方です。
there’s more to it than meets the eye
(見た目以上に何かある、裏がある)
not add up が矛盾点そのものを指摘するのに対し、こちらは表面的には分からない裏の事情があることを示唆する表現です。
Note|doesn’t make sense / something’s fishy との使い分け
「おかしい」「矛盾している」と感じたときに使える英語表現には、いくつかの選択肢があります。not add up・doesn’t make sense・something’s fishy の3つは、違和感の種類によって使い分けられています。
not add up は、複数の事実や証言を照らし合わせたときに生じる、具体的な不整合を指す表現です。エリザベスとの会話でピーターが使ったように、個々の出来事という材料を足し合わせて、合計が合わないと結論づけるニュアンスがあります。doesn’t make sense は、それよりも広く、論理そのものが通らないという状況全般に使える表現で、必ずしも複数の情報を比較しているとは限りません。something’s fishy はさらに感覚的で、具体的な根拠をまだ言葉にできていない段階の、直感的な怪しさを表します。
ピーターが not add up を選んだのは、単なる勘ではなく、ニールの行動という具体的な材料をいくつも並べたうえでの結論だったからだとも読み取れます。捜査官らしい、根拠に基づいた違和感の伝え方といえます。
違和感の根拠がどれだけ具体的かによって、3つの表現を使い分けられるようになると、伝えたいニュアンスにより近づけます。まだ言葉にできない段階の違和感なのか、それとも材料をそろえたうえでの指摘なのか、そこを意識するだけで説得力の伝わり方が変わってきます。根拠の有無を意識して言葉を選べるようになると、指摘の重みそのものをコントロールできるようになります。
まとめ|個々の事実が積み重なって生まれる違和感
not add up は、複数の事実や証言を照らし合わせたときに生じる整合性の欠如を指摘する表現です。数字の足し算から転じた比喩だと知っておくと、意味のつながりを忘れにくくなります。
誰かの説明にどこか引っかかりを覚える場面でも、この一言があれば、その違和感を具体的に言葉にできます。感覚だけの怪しさとは違い、根拠のある違和感として相手に伝えられるのも、この表現の強みです。
からかわれながらも直感を手放さなかったピーターの姿からは、根拠を積み重ねて物事を判断する捜査官らしい粘り強さが伝わってきます。会話のレパートリーに加えてみてください。


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