海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
新しい隣人の様子が気になって仕方がないのに、確証が持てないまま誰かに相談するのをためらってしまう、そんな場面があります。
そんな迷いにぴったりの「on the off chance」を、『ホワイトカラー』シーズン3第13話の前半、新しい隣人への不安を一人で抱え込もうとするエリザベスと、それをやんわり後押しするニールのやり取りから、一緒に見ていきましょう。
「on the off chance」の意味とニュアンス
on the off chance
意味:もしかしたらの可能性を考えて、万が一に備えて
chance は「可能性」、off は「(本流から)外れた」という意味合いを持ち、on the off chance で「可能性は低いけれど、念のため」というニュアンスを表します。確信は持てないが、それでも行動を起こしておく、という慎重で用心深い態度を示す前置きの表現です。
このドラマのシーンでは「On the off chance that I might be wrong, will you help?」という形で使われており、自分の推測が外れているかもしれないと認めた上で、それでも手を貸してほしいと頼む様子が描かれています。頼み事の前にこの一言を添えることで、相手に過度な期待を持たせず、断られても構わないという余白を残す効果もあります。断られる可能性をあらかじめ織り込んでおくことで、頼む側も気負わずに済みます。
似た表現に just in case がありますが、こちらは可能性の高低を問わず「念のため」全般に使える、より口語的で汎用性の高い表現です。on the off chance は可能性が低いことを前提としている点で、ニュアンスがやや異なります。頼み事や提案の前置きとして使うと、無理強いせずに相手の判断に委ねる控えめな響きが加わります。
【ここがポイント!】
- 「on the off chance」の核は、可能性は低いと分かった上での”念のため”の行動
- 確信が持てない状況で、行動を起こす前置きとして使われる表現
- 自分の推測が外れているかもしれないと認めつつ頼む、控えめな言い回し
『ホワイトカラー』S03E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
新しい隣人が銃らしきものを持っているのを目撃したエリザベスは、ピーターに疑心暗鬼だと思われることを気にして、事態を一人で抱え込もうとします。ニールが夫への相談をやんわり促す場面です。自分の判断にまだ確信が持てないまま、それでも何かせずにはいられない、そんな迷いが見え隠れします。
Neal: Look, he worries about you.
(いいか、ピーターは君のことを心配してるんだ。)Elizabeth: And I’m worried that the new neighbors are up to something.
(で、私は新しい隣人たちが何か企んでるんじゃないかって心配してるの。)Neal: Look, this is exactly when having a husband in the FBI comes in handy.
(こういう時こそ、旦那さんがFBI捜査官だってことが役に立つんじゃないか。)Elizabeth: Not until I know more. On the off chance that I might be wrong, will you help?
(もっと確証を掴むまでは話さない。もし私の勘違いだったとしても、念のため手伝ってくれる?)Neal: Moz and I will take a look around, see if there’s anything Peter needs to know about.
(モジーと僕とで周りを見てみるよ。ピーターに知らせるべきことがあるかどうか。)White Collar Season3 Episode13 (Neighborhood Watch)
シーン解説と心理考察
「ピーターは君のことを心配してるんだ」というニールの言葉に対し、エリザベスは新しい隣人への不安のほうが勝っていると言い返します。ニールが「FBI捜査官の夫がいるのはこういう時に役立つ」と暗に相談を勧めても、エリザベスの答えは変わりません。夫を頼るという分かりやすい選択肢を示されてもなお、彼女は自分なりのやり方にこだわり続けます。
その代わりに彼女が持ち出すのが、on the off chance という前置きです。自分の勘違いだった場合の可能性まで認めた上で、それでも動いてほしいと頼む言い方には、確信が持てないまま行動を起こすことへの躊躇いと、それでも動かずにはいられない性分の両方がにじみます。
ピーターに直接頼らず、ニールとモジーという内輪のチームを選ぶところに、エリザベスなりの気遣いと自立心が同時に表れています。確証が持てないうちは大事にせず、自分の手の届く範囲でまず動いてみようとする姿勢が、この一言に集約されています。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
宝くじを「当たるとは思っていないけれど、一応買っておく」ときの気持ちを思い浮かべてみましょう。off chance は本流から外れたわずかな可能性を、on はその可能性に「乗っかっておく」感覚を表しています。
劇中でエリザベスが持ち出したのも、まさにこの感覚でした。自分の推測が外れているかもしれないと分かった上で、それでも一応手を打っておいてほしいという頼み方に、この表現の性格がそのまま表れています。
例文で覚える「on the off chance」
on the off chance は、可能性が低いと分かった上での”念のため”を表す表現です。日常・ビジネス・往復会話の3つの場面で見ていきましょう。
I called him on the off chance that he’d still be at the office.
(まだオフィスにいるかもと思って、念のため彼に電話してみた。)
期待薄でも一応連絡してみる、日常会話の場面です。
On the off chance that the meeting gets rescheduled, let’s prepare both dates.
(万が一会議の日程が変更になった場合に備えて、両方の日程で準備しておこう。)
仕事上の不確実な状況に備える、ビジネスの場面です。
A: Do you think he’ll actually reply to that email?
B: Probably not, but I sent it on the off chance.
(A:彼、本当にあのメールに返信すると思う?)
(B:たぶんしないと思うけど、念のため送っておいたよ。)
望み薄でも一応行動しておく気持ちを共有する、往復会話形式の例文です。結果を過度に期待せず、気軽に試しておく、そんな軽やかな姿勢が伝わる一言です。
あわせて覚えたい関連表現
just in case
(念のため)
on the off chance よりも口語的で汎用性が高く、可能性の高低を問わず「念のため」全般に使える、日常会話でごく頻繁に登場する表現です。
in case
(〜の場合に備えて)
on the off chance が「可能性は低い」ことを強調するのに対し、in case は可能性の高低にかかわらず中立的に使える、より汎用性の高い表現です。
there’s a slim chance that
(わずかな可能性だが)
on the off chance が行動の前置きとして使われるのに対し、こちらは可能性そのものを説明する文で使われることが多く、行動よりも状況の見立てに重心がある表現です。
Note|アメリカ人の”念のため”に備える習慣
低い可能性にもあらかじめ備えておく用心深さは、アメリカの日常会話の随所に表れています。
傘を持って出かけるかどうか迷ったときに「it probably won’t rain, but just in case」と言い添えたり、大きな出費の前に保険や保証プランを検討したりする習慣は、結果が起きる確率が低くても備えを怠らない、という発想に基づいています。on the off chance も同じ発想を土台にした表現で、可能性が低いと自覚した上で、それでも保険をかけておくような行動を後押しします。日本語で「一応」「念のため」と訳される表現は数多くありますが、on the off chance のように「可能性が低いことをはっきり認めた上で」念のための行動を正当化する言い回しは、英語表現の中でも独特の存在感を持っています。相手に無理な期待を抱かせずに頼み事をするための、控えめなクッション表現としても重宝されています。
エリザベスが on the off chance を使ったのも、自分の勘が外れている可能性を認めながら、それでも念のため動いてほしいという、まさにこの発想そのものでした。可能性が低いと分かっていても手を打っておく判断は、結果として何も起きなかったとしても、決して無駄な行動にはなりません。
低い可能性への備えは、時に杞憂に終わっても、無駄にはならないものです。
まとめ|確信が持てないときの、控えめな頼み方
on the off chance は、可能性が低いと分かった上でも念のため行動しておく、という慎重な姿勢を表す表現です。
自分の勘に確信が持てないときも、この一言を添えれば、無理に断定せずに周囲へ協力を頼むことができます。
新しい隣人への不安を一人で抱え込まず、念のためという形でニールに頼ったエリザベスの姿には、確信が持てない状況とどう向き合うかという、一つの態度が示されていたと言えます。自分の判断に完全な自信が持てないときこそ、こうした控えめな頼み方が助けになります。会話のレパートリーに、この控えめな前置きを加えてみてください。


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