海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「こんなことがあったのだから、今回は見送ったほうがいいのでは」と言われて、いや、こんなときだからこそやるべきだ、と感じた経験はありませんか。
そんなときに使えるのが「all the more reason」で、なおさら〜する理由になる、という意味です。『メンタリスト』シーズン1第22話の序盤、生徒がひとり命を落とした学校で、校長が生徒全員を集めて話をする場面に登場します。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。
「all the more reason」の意味とニュアンス
all the more reason
意味:なおさら〜する理由になる、だからこそ〜すべきだ
reason は「理由」、more は「より多く」。頭についた all the は、いま出てきた事情のぶんだけ、という増え方の幅を指します。合わせると「その事情のぶんだけ理由が増している」となり、日本語の「だからこそ」に近い働きをします。
この表現の特徴は、理由がゼロから生まれるのではないという点です。もともと進める理由はあった。そこへ相手が持ち出した不都合が、やめる根拠ではなく進める根拠として一枚積み増される。相手の言い分を否定せずに、向きだけを変えて返す形になります。
後ろには to 不定詞のほか、for 〜 や why 節が続きます。That’s all the more reason to hurry. のように That’s を頭に置く形が会話では最も多く、単独で All the more reason. とだけ返すこともあります。出番は、相手が消極的になった直後。ためらいの理由を、そのまま前進の理由に置き換える一言として働きます。会話では、相手の発言を受けてすぐに返すのが自然な流れで、間を置くと切り返しの勢いが薄れます。
【ここがポイント!】
- 核は、相手の言い分のぶんだけこちらの理由が積み増される、という重さの変化
- 反論の形を取らずに、結論の向きだけを静かに変えられる一言
- That’s all the more reason to 〜 の形ごと覚えておくと、とっさに口から出てくる
『メンタリスト』S01E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
森の奥にある全寮制のワイルダネススクールで、生徒のひとりが遺体で見つかりました。捜査に入ったCBIのジェーンたちが少し離れて見守るなか、校長のマクレーンが生徒全員を集めて話をしています。悲しみは認めながらも、それを後ろ向きな態度の言い訳にするなと語りかけたところで、ひとりの生徒が手を挙げました。金曜に予定されていた学校の恒例行事は中止になるのか。遠慮のにじむ質問に、校長がどう答えるかが見どころです。
Maclean: I know the last couple of days have been rough. Losing Justin hurts. But his death cannot become your crutch for a negative attitude. You can learn and grow from this experience. Bryan.
(この数日がつらかったのはわかっている。ジャスティンを失った痛みは大きい。だが彼の死を、後ろ向きな態度の言い訳にしてはいけない。この経験から学び、成長することはできる。ブライアン)Bryan: Sir, do we still get to do the sacred fire ceremony on Friday?
(先生、金曜の聖なる火の儀式は、予定どおりやるんですか)Maclean: I think there’s all the more reason to do it now. We need healing.
(今だからこそ、やる理由はいっそうあると思う。私たちには癒やしが必要だ)The Mentalist Season1 Episode22 (Blood Brothers)
シーン解説と心理考察
ブライアンの質問には、聞く前から答えを想定している遠慮がにじみます。仲間が亡くなった直後に儀式をやるのはまずいのではないか。中止と言われるつもりで、それでも確認したかった。手を挙げるまでの短い間に、そんな迷いがあったことが伝わってきます。
マクレーンの返事は、その前提をまるごとひっくり返すものでした。悲劇が起きたからやめるのではなく、悲劇が起きたからこそやる。all the more reason という一言が、生徒の遠慮を逆向きに折り返しています。直後の We need healing. が、その理由を短く補いました。
この場面が印象に残るのは、校長が説得を試みていないところです。反論も説教もせず、理由の置き場所だけを動かして答えている。学校の方針を守る指導者の顔と、動揺した集団をこれ以上ばらけさせたくないという計算が、同じ一文に重なっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
天秤を思い浮かべてください。片方の皿には「やる理由」のおもりが何枚か載っています。そこへ誰かが「こんなことがあったのだから、やめたほうがいい」と言う。ふつうなら反対側の皿におもりが移るところですが、all the more reason はその一枚を、そのまま同じ側に載せてしまう表現です。
劇中でも、生徒が中止をほのめかした瞬間に、校長の皿には「今こそ必要だ」というおもりが一枚増えました。相手が差し出した事情を、そっくり自分の理由に付け替える。皿がさらに傾く動きとセットで覚えておくと、切り返しの一言として口から出やすくなります。
例文で覚える「all the more reason」
相手のためらいを前進の理由に変える表現なので、会話では返答として現れます。日常から仕事まで、三つの場面で見てみましょう。
It’s raining? That’s all the more reason to take the car.
(雨なの? だったらなおさら車で行こうよ)
出かける直前、天気を理由に迷い始めた友人への返しです。That’s を頭に置くと、相手の発言を受けて折り返す形がはっきりします。雨だからやめようという流れを、雨だから車で、という方向へそのまま曲げています。
He’s new to the team, which is all the more reason to explain the process carefully.
(彼はチームに入ったばかりです。だからこそ手順を丁寧に説明する必要があります)
引き継ぎの進め方を相談する会議での一言。which is を挟むと落ち着いた硬さが出て、報告書にもそのまま使えます。経験の浅さを、手を抜く理由ではなく丁寧にやる理由として示す形です。
A: The deadline is really tight this time.
B: All the more reason to start today, then.
(A:今回は締め切りがかなり厳しいね)
(B:だったらなおさら、今日から始めないと)
着手をためらう相手に方針を示す往復です。頭の That’s を省いて単独で置くと、歯切れのよい切り返しになります。
あわせて覚えたい関連表現
even more reason
(さらに理由が増す)
意味はほぼ同じですが、all the more reason のほうが決まり文句として定着しており、身についた切り返しという印象を与えます。even more reason はその場で組み立てた言い方に聞こえるぶん、やや説明的になります。
That’s exactly why …
(まさにそれが理由なんです)
相手の発言を根拠に転用する点は同じでも、こちらは「それが理由のすべてだ」と言い切る形です。理由が増えるのではなく置き換わるぶん、反論として強く響き、相手に反省を促す響きも帯びます。
if anything
(むしろ)
相手の見立てと逆方向であることを示す言い方で、行動までは促しません。all the more reason が結論まで運ぶのに対し、if anything は方向を正すところで止まり、次の判断は相手に委ねられます。
Note|「その分だけ」を表す the の話
all the more reason の the は、いつもの「その〜」を指す the とは働きが違います。同じ形は all the better や none the wiser にも現れ、並べて見るとひとつの型が浮かび上がってきます。
この the は、名詞につく冠詞ではなく、比較級の前に置かれて「その分だけ」という差の量を表す副詞的な用法だと説明されることが多い言葉です。古い英語で「それによって」を表した語の名残とされ、後ろに来る比較級が、どれだけ増えたのかを受け持ちます。
この見方に立つと、いくつもの慣用句が同じ仕組みで読めます。all the better は「その分だけよい」、all the more は「その分だけ多い」。同じ『メンタリスト』シーズン1第21話に登場した none the wiser は、the の前が none なので「その分だけ賢くはなっていない」、つまり気づかないままだ、という意味になります。The sooner, the better.(早ければ早いほどよい)も、前半の the が条件を、後半の the がその分の結果を受け持つ同じ型です。
そう考えると、all the more reason は「その事情のぶんだけ、理由が多い」と直訳できます。相手が持ち出した事情が、そのまま差の量になる。どんな材料が来ても受け止めて折り返せる、懐の広い型だと言えます。
一文字の the が、増えた分をここでは静かに数えています。
まとめ|逆風を理由に変える一言
all the more reason は、相手が挙げた不都合を、そのまま前進の理由に付け替える表現です。理由をゼロから作り出すのではなく、いま出てきた事情のぶんだけ理由の側が重くなる。だからこそ、反論の形を取らずに結論を動かせます。
会話に入れておくと、相手のためらいに正面からぶつからずに済みます。忙しいと言われたとき、天気が悪いと言われたとき、経験が浅いと言われたとき。どれも That’s all the more reason to 〜 でつなげば、否定しないまま一歩進む提案になります。
劇中のマクレーンも、中止を予感していた生徒の質問を、儀式を続ける理由へと折り返しました。相手の言葉を借りて向きを変える一言として、会話のレパートリーに加えてみてください。


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