「a far cry from」の意味と使い方|『メンタリスト』S02E11で学ぶ英会話

「a far cry from」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

久しぶりに同級生と顔を合わせて、あの頃の自分とはもう違う、と言いたくなったことはありませんか。変わったのだと主張したいのに、ちょうどいい一言が見つからないもどかしさがあります。

そんなときに使える「a far cry from」は、二つのものの隔たりが大きいことを表します。『メンタリスト』シーズン2第11話の中盤、捜査で高校の同窓会に足を運んだリズボンが、人は変わらないと語るジェーンに反論する場面に登場します。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。

目次

「a far cry from」の意味とニュアンス

a far cry from
意味:〜とはかけ離れている、〜とは似ても似つかない

cry には「泣く」だけでなく「叫び声」という意味があります。a far cry はもともと、遠くから届く叫び声を指す言い方でした。声はかろうじて聞こえるけれど、姿までは見えないほど離れている。その距離感が、そのまま二つのものの隔たりを表す言い方に変わっていきました。

形は A is a far cry from B が基本で、B のほうが比較の基準になります。今の自分と昔の自分、期待していたものと届いた実物、掲げた理想と目の前の現実。並べたときに「別物と言っていいほど違う」と感じる隔たりがあれば、この表現がぴたりと収まります。

different と大きく違うのは、優劣を含まないまま距離だけを示せる点です。良くなったとも悪くなったとも決めずに、とにかく離れている、とだけ述べられます。もちろん文脈しだいで残念な落差を表すこともできますし、大きな成長を語ることもできます。判断は聞き手に委ねたまま、隔たりの大きさだけを伝える。そこがこの表現の使いやすいところです。

【ここがポイント!】

  • 核にあるのは「呼び声がやっと届くほどの距離」という隔たりのイメージ
  • A is a far cry from B の形で、B が比較の基準になる一言
  • 良し悪しを決めずに差だけを言えるので、評価を保留したいときに便利

『メンタリスト』S02E11のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

殺人事件の捜査で、被害者の母校の同窓会に足を運んだジェーンとリズボン。会場を見渡したジェーンは、ここにいる誰も本質的には変わっていないと語ります。人は変われるはずだと考えるリズボンは、身近な例を挙げて反論し、最後に自分自身を持ち出します。その一言が、直後にジェーンの観察の的になります。

Lisbon: Or they actually do change — with exceptions like Mr. Hair Plugs, of course. You got the rebel who took the bank job, the player that stays faithful to his wife…
(それか、本当に変わったのよ。もちろん、植毛のあの人みたいな例外もいるけど。反抗的だった子が銀行に就職して、遊び人が奥さんひと筋になってる)

Jane: The rebel took the bank job because she sees her rebellion is fruitless. The player stays faithful to his wife because the consequence of infidelity is much greater now. But their instincts — their instincts never change.
(反抗的だった彼女が銀行に入ったのは、反抗しても実らないと悟ったからだ。遊び人が奥さんひと筋なのは、浮気の代償が昔より大きいから。でも本能は、本能だけは変わらない)

Lisbon: I’m a far cry from what I was in high school.
(私は高校の頃とはまるで別人よ)

Jane: Eh, I wouldn’t be so sure.
(さあ、どうかな)

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シーン解説と心理考察

このやり取りは、聞き込みが一段落した会場の隅で交わされます。ジェーンにとって同窓会は、人が変わったふりをする様子を眺められる格好の場です。対するリズボンは、人は努力で変われる側に立っています。二人の見方がぶつかる短い場面ですが、リズボンが自分自身を証拠として差し出したところで、流れが変わります。

リズボンが a far cry from を選んだところに、彼女の意地が表れています。「少し変わった」ではなく、比較の幅を最大に取って別人だと言い切る。ジェーンの持論をその場で崩したいという気持ちが、そのまま表現の強さになっています。

対するジェーンの返しは、短い一言だけです。反論も証拠も示さず、判断を保留する形でやんわりと受け流します。この直後、彼はリズボンの高校時代を次々と言い当てていき、彼女は話を打ち切ることになります。強く言い切った側が、軽く受け流した側に押されていく。二人の関係がよく出た場面と言えます。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

広い野原の向こうから、誰かが名前を呼んでいる。声はどうにか届くけれど、顔まではもう見えない。a far cry の far は、その距離のことです。同窓会の会場に立つリズボンから見た高校時代の自分も、ちょうどそのくらい遠くにいました。姿は思い出せるのに、もう同じ人だとは思えない。

使うときは、二つのものの間にその野原を置いてみるのがコツです。名前を呼んで届くかどうか、というくらい離れているなら a far cry from が合います。手を伸ばせば触れる距離なら、a little different で足ります。隔たりを目で測る感覚が身につくと、使いどころを外しません。

このエピソードの他のフレーズ

例文で覚える「a far cry from」

過去との落差、期待とのずれ、理想と現実。隔たりを言葉にしたい場面はさまざまです。使い方の幅がわかる3つの例文を見ていきましょう。

This apartment is a far cry from the tiny room I lived in as a student.
(この部屋は、学生時代に住んでいた狭い部屋とは比べものにならない)
新しい住まいに友人を招いて、昔の暮らしを引き合いに出す場面です。過去との落差を語る、最も使いやすい形になります。

The final product was a far cry from what we had promised our client.
(完成品は、クライアントに約束したものとはほど遠かった)
プロジェクトの振り返りで問題点を共有する場面です。約束と結果のずれを、誰かを責める語調にせずに事実として置けます。

A: How’s the new job?
B: Busy, but it’s a far cry from where I was a year ago.
(A:新しい仕事はどう)
(B:忙しいけど、1年前の状況とは全然違うよ)
近況を聞かれて答える何気ないやり取りです。where I was と場所の言い方にすると、状況全体の変化を短く伝えられます。

あわせて覚えたい関連表現

nothing like
(〜とは全然違う)
共通点がないことを強く打ち消す口語表現です。a far cry from が隔たりの大きさを測るのに対して、こちらは似ている部分の不在そのものを言います。

a world away from
(〜とはかけ離れた)
別世界と言えるほどの違いを表します。暮らしぶりや環境の違いに使われることが多く、a far cry from より場所の感覚が前に出ます。

not a patch on
(〜には遠く及ばない)
比較対象のほうが明らかに優れている、という優劣がはっきり含まれます。良し悪しを決めずに済む a far cry from とは、その点で使い分けられます。

Note|cry が「泣く」ではなく「叫び声」だった頃

a far cry from を初めて見た人の多くは、なぜ「泣く」が距離の話になるのかと立ち止まります。実はこの cry は、涙とはあまり関係がありません。

英語の cry は古フランス語の crier(叫ぶ)を経て入ってきた語で、もともとは声を張り上げる行為を指していました。その名残は今も英語のあちこちに残っています。中世から近代の町で、公の知らせを大声で触れて回った役目は town crier と呼ばれました。市場で商人が張り上げる売り声は street cry、獲物を見つけた猟犬が上げる声は cry of hounds です。「泣く」という意味が主役になったのは後のことで、それ以前の cry は、遠くまで届かせるための声でした。

声が距離の単位として使われたのも、そうした背景があってのことです。地図も標識も乏しかった時代、呼べば届くところと、呼んでも届かないところの区別は、生活に根ざした目安でした。a far cry は文字どおり「呼び声がやっと届くかどうかの隔たり」を指し、そこから物理的な距離だけでなく、二つのものの違いの大きさを表す言い方へ広がっていったとされています。ただし、この転用がいつ定着したかについては辞書によって説明が分かれており、細かな時期を断定することはできません。

こうして見ると、a far cry from が優劣を含まない理由も見えてきます。声が届くかどうかは、どちらが上かとは無関係です。ただ離れている、という一点だけを測る道具だったからこそ、現代の用法でも判断を保留したまま隔たりを述べられるのだと言えます。

遠くの声を思い浮かべると、この表現の輪郭がはっきりします。

まとめ|遠くの声が測る、二つの距離

a far cry from は、呼び声がやっと届くほどの隔たりを言い表す表現でした。優劣を決めずに距離だけを示せるため、昔と今、期待と実物、理想と現実を並べるどんな場面にも収まります。

この一言があると、「変わりました」「違います」で止まっていた説明に幅が出ます。どれくらい違うのかを一度で伝えられるので、聞き手も想像しやすくなります。自分の変化を振り返る話にも、成果を報告する場面にも使える表現です。

同窓会の会場でリズボンは、高校時代の自分を野原の向こうに置いて、別人だと言い切りました。その主張があっさり受け流されてしまうところまで含めて、印象に残る使われ方です。変化を語りたくなったときのために、表現の引き出しに加えてみてください。

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