海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
同じ失敗をしても、あの人だけはなぜか怒られない。叱られるどころか、笑って済まされてしまう。職場でも家庭でも、そんな特別扱いを目にしたことはありませんか。
そんなときにぴったりの「get away with murder」を、『メンタリスト』シーズン2第13話の中盤、殺人事件の容疑者として疑われている大富豪が、自分の高速ボートの前でジェーンたちを挑発するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get away with murder」の意味とニュアンス
get away with murder
意味:何をしても咎められない
get away with は「〜を持ったまま逃げ切る」、つまり悪いことをしても罰を受けずに済むことを表します。そこに murder という最も重い語を置くことで、「殺人ですら見逃される」という誇張が生まれました。
日常会話では、文字どおり罪を逃れるという意味よりも、この誇張のほうがずっとよく使われます。上司に気に入られている同僚、末っ子だから許されている弟、何をしても叱られない飼い猫。本来なら注意されるはずのことが、その相手に限っては通ってしまう。そういう状況を、少し皮肉を込めて言い表す表現です。
主語は許されている側にも、許している側にも置けます。He gets away with murder. なら本人が主語、She lets him get away with murder. なら甘やかしている側が主語です。もちろん、犯罪報道や法廷の話題では文字どおりの意味で使われることもあり、どちらで読むかは前後の文脈が決めます。
【ここがポイント!】
- 核は「殺人ですら見逃される」という、あえて大げさに振り切った言い方
- 日常会話ではほぼ誇張。甘やかされている相手を評するときの定番
- 許される側と許す側、どちらも主語に置ける。本気か冗談かは文脈で読み分けるのがコツ
『メンタリスト』S02E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者に高額な贈り物をしていた大富豪ウォルター・マッシュバーンは、事情を聞きに来たジェーンとリズボンを、自分の高速ボートが停まる桟橋へ連れ出します。危険が好きなのかと問われた彼は、危険などないと言い返し、その理屈の途中で、わざと言いかけて止めるという形をとります。
Lisbon: We get it. You’re an energetic man. You like danger. So why bring us here?
(分かりました。活動的で危険がお好きなんですね。それで、なぜ私たちをここへ?)Walter: I have no love for danger. Nothing’s dangerous if you think ahead. If you plan it right, you can get away with… Well, I was gonna say you can get away with murder, but… You know what I mean.
(危険が好きなわけじゃない。先を読めば危険なものなどないんだ。きちんと計画すれば何だって見逃してもらえる…いや、「殺人だって見逃される」と言おうとしたんだが…まあ、言いたいことは分かるだろう。)Lisbon: Okay. So what’s the point in showing us your fancy toy here?
(そうですか。それで、その高価なおもちゃを見せる意味は?)Walter: This is how I live my life. If I killed Liselle, would I stuff her in the trunk like some low-rent thug?
(これが私の生き方だ。もし私が彼女を殺したなら、三流のごろつきみたいにトランクへ押し込むと思うかね?)The Mentalist Season2 Episode13 (Redline)
シーン解説と心理考察
マッシュバーンは、自分が容疑者として見られていることを最初から承知しています。その状況で選んだのが、否認でも沈黙でもなく挑発でした。言いかけて止めるという形をとりながら、murder という語をしっかり相手の耳に残していきます。
この言い回しの巧妙さは、冗談としても本音としても読めるところにあります。責められれば「ただの言葉のあやだ」と引き下がれますし、相手が動揺すれば観察の材料になります。捜査官に主導権を渡さないまま、会話を自分の遊びに変えてしまう手口です。
注目したいのは、この表現が終盤でもう一度使われる点です。事件が終わりに近づいた場面で、今度はジェーンが「どんなに賢い計画でも、もっと賢い誰かに見抜かれる。だから殺人で逃げ切るのは難しい」と口にします。容疑者が投げた言葉を主人公が投げ返す構造になっており、同じ一語が挑発から結論へと役割を変えていくところが見どころです。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
get away with は「持ったまま逃げ切る」。まず店先のガムをひとつくすねて逃げ切り、次は財布、その次は車、と持ち出すものがどんどん大きくなっていく階段を思い描いてみましょう。その階段の一番上に置かれているのが murder です。
そこまで大きなものを持ち逃げできるのなら、たいていのことは許される。この飛躍が、日常会話で「甘やかされている」の意味になる理由です。桟橋でマッシュバーンがわざとこの語を口にする場面を重ねておけば、表現が持つ挑発的な響きまで一緒に思い出せます。
例文で覚える「get away with murder」
誇張として使う場面が大半です。許される側を主語にする形、許す側を主語にする形、そして文字どおりの意味で使う形を見てみましょう。
That kid gets away with murder because he’s the youngest.
(あの子は末っ子だから、何をやっても許されるんだよ。)
きょうだいの扱いの差について、親戚同士が話している場面です。because で理由をつなぐと、なぜ許されているのかまで一息で伝えられます。
She lets her sales team get away with murder.
(彼女は営業チームに何でも大目に見ています。)
他部署の進め方について、同僚と評し合う場面です。let を使うと甘やかしている側に矢印が向き、批評の色が強まります。
A: With a good lawyer, some people really do get away with murder.
B: That’s exactly why the forensic evidence matters so much.
(A:優秀な弁護士がつけば、本当に罪を逃れる人もいるんだよね。)
(B:だからこそ物証が重要になるんだ。)
ニュースを見ながら交わす会話です。really do を足すと、誇張ではなく文字どおりの意味で言っているのだとはっきり示せます。
あわせて覚えたい関連表現
get away with it
(悪事がばれずに済む)
同じ形から murder を外した中立形です。具体的な行為を it で受けるため誇張の色がなく、実際に何かをやり過ごした場面を淡々と述べられます。
get off scot-free
(おとがめなしで済む)
罰を受けずに終わったという結果に焦点があります。get away with murder が「ずるさ」を含むのに対して、こちらは処分の有無だけを問題にします。
have someone wrapped around one’s finger
(〜を意のままに操る)
なぜ許されるのか、その理由のほうを説明する表現です。get away with murder の裏側にある関係を言い当てたいときに組み合わせられます。
Note|犯罪ドラマがこの一言を手放さない理由
get away with murder は、刑事ドラマや法廷ものの中で驚くほど頻繁に耳にする表現です。犯罪を扱うジャンルだから、というだけでは説明のつかない事情があります。
この表現には、文字どおりの意味と誇張の意味が同居しています。日常会話ではほぼ誇張として使われるのに、殺人事件を扱う場面に置かれた瞬間、どちらの意味でも読めるようになります。台詞を書く側からすれば、これは扱いやすい道具です。登場人物には軽口として言わせておきながら、見ている側には別の意味で届けられます。
本話の使われ方は、その典型でした。容疑者が桟橋で「言おうとしたんだが」と前置きしてこの語を出し、事件が終わりに近づいた場面で、今度は主人公が「だから殺人で逃げ切るのは難しい」と返します。同じ一語が一つの回の中で二度置かれ、一度目は挑発、二度目は結論として働く。表現そのものが物語の枠になっている珍しい例です。
軽口として使える表現ほど、重い場面に置いたときの落差が大きくなります。この一語は、その落差ごと覚えておきたいところです。
まとめ|桟橋で投げられた一言の行方
get away with murder は、最も重い語をあえて持ち出すことで「何をしても許される」という状態を言い表す表現です。誇張だと分かっているからこそ、聞いた側も苦笑いしながら受け取ることができます。
この言い方を知っていると、不公平さを角を立てずに指摘できるようになります。えこひいきを真正面から責めるかわりに、大げさな一言で笑いに変える。会話の温度を下げずに本音を差し込めるのが、この表現の使いどころです。
桟橋で投げられた挑発が、最後には主人公の言葉として返ってくる。そんな展開ごと、会話のレパートリーに加えてみてください。


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