海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
昔の関係について人から尋ねられて、交際と呼ぶほどでもないし、何もなかったわけでもない。ちょうどいい言葉が見つからずに口ごもってしまう場面があります。
そんなときに英語で選ばれるのが「have a thing」です。この場面では、恋愛・性的な関係があったことをくだけてぼかす言い方として使われています。『メンタリスト』シーズン4第2話の中盤、ジムのオーナーが被害者との関係を捜査官に問い詰められるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「have a thing」の意味とニュアンス
have a thing
意味:(文脈上)恋愛・性的な関係がある、そういう仲である
thing は対象を細かく名づけない、幅の広い名詞です。その語を選ぶことで、関係の種類や深さを明示せず、文脈に委ねられます。ただし、表現そのものが関係の期間や真剣さを決めるわけではありません。
過去の関係なら had a thing、現在の話なら have a thing や be having a thing の形が使えます。a thing between them のように第三者の関係を話題にすることもできます。どの形でも、実際に何があったかは周囲の説明から読み取ります。
relationship より輪郭をぼかしやすく、くだけた響きがあります。ただし relationship だから長期・真剣、a thing だから短期・軽い、と自動的に決まるわけではありません。劇中ではジョセリン自身が very briefly と Nothing serious を添えたため、短く真剣ではない関係だと分かります。
【ここがポイント!】
- 関係があったことだけを認めて、中身は言わずに済ませる一言
- 期間や真剣さはフレーズだけで決まらず、時制と周囲の説明から読む
- くだけた表現なので、相手・媒体・場面に応じてより明確な語へ言い換える
『メンタリスト』S04E02のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者は人気のパーソナルトレーナーで、顧客との関係が噂されていました。ジムのオーナーであるジョセリンは、従業員の私生活には踏み込まなかったと説明します。ところがジェーンは、その説明の穴を一言で突きます。追い詰められた彼女がどんな語を選ぶのか、そこがこの場面の見どころです。
Jane: Except your own.
(ご自分の名前を除いて、でしょう。)Jocelyn: Yeah, a long time ago, very, very briefly, Markus and I had a thing.
(ええ。ずっと前に、ほんの短い間だけ、マーカスとはそういう関係が。)Jane: A thing?
(そういう関係?)Jocelyn: Nothing serious. We were friends.
(真剣なものじゃありません。友達でした。)The Mentalist Season4 Episode2 (赤い手帳)
シーン解説と心理考察
ジョセリンの答え方には一貫した型があります。噂は聞いた、確かめはしなかった、名前は知らない。どれも嘘ではないけれど、確定する言葉をひとつも使っていません。その延長線上に had a thing が置かれています。事実を認めながら輪郭は与えない、という同じ手つきがこの一言に重なっています。
そこへジェーンが返すのが、たった二語の聞き返しです。A thing? と繰り返すだけで、新しい質問は何もしていません。それでもジョセリンは、真剣なものではなかった、友達だった、と自分から説明を足してしまいます。曖昧な語を選んだ人ほど、聞き返されると補足せずにいられない。その反応を引き出す間の作り方が、この場面をやりとりとして成立させています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
輪郭のぼやけた箱を、相手の前にそっと置く動作を思い浮かべてみましょう。箱があったことは見せる。けれど蓋は開けない。thing という語が担っているのは、この「蓋を開けない」という仕事です。
劇中では、その蓋をジェーンが一語でこつんと叩いています。A thing? と返された瞬間、ジョセリンは自分から中身の説明を始めてしまいました。箱を置く人と、箱を叩く人。この二人の動作をセットで覚えておくと、have a thing がどんな場面で選ばれ、どんなときに崩れるのかが体感で残ります。
例文で覚える「have a thing」
言いたくないことを言わずに済ませる、という機能を持つ表現です。使われ方の幅を三つの場面で見ていきましょう。
They had a thing back in college, but it didn’t last.
(二人は大学時代にそういう関係だったけど、長くは続きませんでした。)
共通の知人の過去を友人に説明する場面です。過去形にすれば、以前の関係や感情だったことを表せます。「長く続かなかった」はこの例の追加情報で、表現自体に期間の決まりはありません。
It wasn’t a relationship. We just had a thing for a couple of months.
(交際というほどじゃありません。二か月ほどそういう関係だっただけです。)
自分のことを控えめに説明する場面です。relationship を先に否定してから言い換えることで、この語が担う「定義しない」働きがはっきり見えてきます。
A: Are you two having a thing, or am I reading this wrong?
B: We’re just friends. Seriously.
(A:二人はそういう関係なの?それとも私の勘違い?)
(B:ただの友達だよ。本当に。)
同僚同士の雰囲気を本人に確かめる場面です。進行形にすると現在の関係を指し、はっきり尋ねすぎない聞き方として機能します。
あわせて覚えたい関連表現
see someone
(継続的につき合っている)
恋愛の文脈では「付き合っている」という意味で使えます。have a thing より関係を明示しやすい一方、期間の長さや真剣さはどちらも文脈次第です。
hook up with someone
(関係を持つ)
文脈や地域によって、出会う、キスをする、性的関係を持つなど幅があります。have a thing と同様、具体的な内容をこの句だけで一つに固定しないことが大切です。
be involved with someone
(関係を持っている)
報道や聴取など、やや改まった場面で選ばれます。同じ内容を中立的に言い換えたいときの受け皿になる表現です。
Note|言い切らない語が選ばれるとき
同じ事実なのに、話す場面と書く場面で選ばれる語が入れ替わることがあります。have a thing はその代表格です。
劇中のジョセリンは、捜査官を前にして had a thing と口にしました。調書や報告書なら was involved with など、関係をより明確に示す語が選ばれやすくなります。ただし have a thing が書き言葉で使えないわけではありません。私的なメッセージ、会話を写した文章、くだけた記事などには自然に現れます。
言葉の選択には、堅さだけでなく、相手との距離や、後から読む人にどこまで明確に伝える必要があるかも関わります。同じ出来事でも、場面に応じて重視される点が変わることがあります。
だから have a thing を覚えるときは、意味だけでなくレジスターも押さえておくと役に立ちます。対面か文書かという二分ではなく、どれほどくだけた場面か、どれほど明確さが必要かで選び分けます。
くだけたやりとりでは、あえて言い切らない選択が意味を持つことがあります。
まとめ|言葉にしないことで伝わるもの
have a thing は、関係の内容を細かく説明せず、くだけてぼかせる表現です。thing という幅の広い名詞を置き、その先の定義を文脈に委ねます。この構造が分かると、劇中のジョセリンが選んだ言葉の働きが見えてきます。
会話の中でこの言い方に出会ったとき、話し手は何かを隠しているとは限りません。ただ、名前をつけたくないだけかもしれない。そう受け取れるようになると、英語のやりとりで読み取れる幅がひとつ増えます。
言い切らないことにも役割がある、という英語の一面が表れた表現です。


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