海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
好きなものについて語るとき、大げさに言い切らず、少し照れたように控えめに伝える。そんな言い方が似合う瞬間が、ドラマには時々あります。
今回取り上げる「be partial to」も、そんな上品さを持つ表現です。『メンタリスト』シーズン4第6話の終盤、ジェーンがリゾートの事務室で、ある人物の様子から思わぬことを言い当てるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「be partial to」の意味とニュアンス
be partial to
意味:〜に目がない、〜がことのほか好きだ
partial には「一部の」という意味がよく知られていますが、この表現で働いているのはもう一つの語義、「一方に偏った」のほうです。公平さを欠くほどそちらへ傾いている、という感覚が土台にあります。
対義語を並べると、輪郭がはっきりします。impartial は「公平な」という意味で、裁判官や審査員に求められる姿勢を指す語です。その反対側にあるのが partial。つまり be partial to は、判定の天秤が静かに片側へ傾いてしまっている状態を言い表しています。
実際の会話では、好みをやわらかく伝える言い回しとして使われます。I love it. と言い切る代わりに、I’m rather partial to it. と述べる。大げさにならず、それでいて好みははっきり伝わります。
好みの話だけでなく、身内びいきを自分から認める前置きとしても機能します。控えめでありながら、少しだけ本音がのぞく。そんな表情を持った表現です。
【ここがポイント!】
- 働いているのは「一部の」ではなく「一方に偏った」のほうの partial
- 公平な impartial の反対側にある語で、天秤が傾いている絵が土台にある一言
- 大げさに言い切らずに好みを伝えられる、少し上品な言い方として使えるのが強み
『メンタリスト』S04E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件の終盤、ジェーンはリゾートの事務室である人物と向き合っています。ジェーンは捜査の早い段階から、この部屋が不自然に寒いことに引っかかっていました。専用の冷房、開いた瞳孔、過剰な警戒。積み重ねてきた観察を、ここで一気に回収します。物語の核心には触れない範囲で、そのやり取りだけを見てみましょう。
Jane: Well, you gave us that videotape so easily. Practically handed us Zubov as a suspect, and then there’s the drugs. A little partial to the cocaine, aren’t you, Chad?
(あの防犯映像、ずいぶんあっさり渡してくれたよね。ズボフを容疑者としてほとんど差し出す形でさ。それに薬の件もある。コカインに少々ご執心だろう、チャド?)Chad: No, I’m not.
(違う。)Jane: Okay, a lot partial. Dilated pupils, hyper-alert. You’re burning up.
(じゃあ、かなりご執心だ。瞳孔は開いて、過剰に警戒している。体は熱を持っている。)The Mentalist Season4 Episode6 (Where in the World Is Carmine O’Brien?)
シーン解説と心理考察
ジェーンがここで a little partial to という控えめな言い方を選んでいるのは、相手を身構えさせないためだと読み取れます。断定してしまえば相手は身を固くしますが、上品でやわらかい表現で置かれると、正面から否定しにくくなる。しかも否定の仕方そのものが、次の材料になります。
直後に a little を a lot へ差し替える運びが、この場面の見どころです。相手の反応を一度確かめてから、同じ語のまま程度だけを上げる。新しい主張を足すのではなく、目盛りを動かすだけで圧を強めていく手つきが表れています。
partial という語の性質も、この使い方によく合っています。もともとは公平さを欠いていることを指す語であり、遠回しに「あなたの判断はすでに傾いている」と告げていることにもなる。相手の依存を、嗜好の話として上品に包んで差し出す。ジェーンらしい言葉の選び方が、この短いやり取りに凝縮されています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
天秤が片側にだけ静かに傾いている絵を思い浮かべてみてください。皿の上に何が載っているのかは見えなくても、傾きだけははっきり見える。be partial to が描いているのは、この傾いた天秤です。
反対語の impartial(公平な)を並べると、絵はさらに鮮明になります。まっすぐ水平を保った天秤が impartial、どちらかへ傾いた天秤が partial です。ジェーンが相手に告げていたのも、まさにこの傾きでした。声を荒げず、天秤の角度だけを指し示す。その静けさごと覚えておくと、この表現の温度を取り違えません。
例文で覚える「be partial to」
好みを控えめに伝えるときに働く表現です。自己紹介、断り、すすめる場面の三つで見てみましょう。
I’m rather partial to a strong cup of coffee in the morning.
(朝は濃いめのコーヒーが好きでしてね。)
初対面の相手と好みの話をする場面です。rather を添えると、控えめな上品さがはっきり出ます。
He’s not particularly partial to sweets, so maybe bring cheese instead.
(彼は甘いものがそこまで好きではないので、代わりにチーズを持っていったらどうでしょう。)
手土産を選ぶ相談の場面です。否定形にすると「嫌い」と言い切らずに済み、やわらかい情報提供になります。
A: Any recommendations for dinner around here?
B: If you’re partial to spicy food, there’s a Sichuan place two blocks down.
(A:この辺でおすすめの夕食はありますか。)
(B:辛いものがお好きなら、2ブロック先に四川料理の店がありますよ。)
店をすすめる場面です。if 節に置くと、押しつけずに提案する形になります。
あわせて覚えたい関連表現
be fond of
(〜が好きである)
好意を穏やかに述べる中立的な表現で、偏りや不公平さの含みがありません。天秤の傾きを匂わせたいときは be partial to のほうが合います。
have a soft spot for
(〜には弱い、つい甘くなる)
人や動物、思い出の品など情がからむ対象に使われやすく、判断が甘くなるニュアンスが中心です。嗜好そのものに広く使える be partial to とは、対象の範囲が違います。
have a thing for
(〜に目がない、〜が妙に好き)
かなりくだけた口語で、恋愛感情を指すこともあります。改まった場面にも置ける be partial to とは、フォーマル度が大きく異なります。
Note|partial は「一部の」より先に「偏り」だった
英語を学ぶ過程で partial に出会うと、多くの場合は「部分的な」という意味として覚えることになります。partial refund(一部返金)、partial success(部分的な成功)。ところが be partial to では、その意味がまったく働いていません。
partial は part(部分)から生まれた語とされます。ここから二つの方向へ意味が伸びました。一つは「全体の一部だけ」という量の話。もう一つは「全体を見ずに一方の側に立つ」という姿勢の話です。後者が現在の be partial to につながっています。全体を公平に見るのではなく、片側にだけ肩入れしている。量ではなく、立ち位置の話をしているわけです。
この語義がいまも現役であることは、impartial という語を見ればわかります。裁判官の中立性、報道の公平性、審査の独立性。どれも impartial という語で語られ、法廷や報道の文脈では日常的に使われています。impartial が「公平な」を意味するということは、その裏返しである partial が「偏った」を意味していなければ成り立ちません。二つの語は、いまも対になったまま生きています。
be partial to が上品に響く理由も、ここにあります。この言い方は「大好きだ」と叫んでいるのではなく、「自分の判定はもう傾いてしまっている」と静かに認めている。好みを述べながら、同時に自分の公平さを手放したことまで告白している。控えめさと自己申告が同居しているから、少し照れたような響きになります。
好きだと言う代わりに、傾いていると認める。そんな言い方でした。
まとめ|天秤の傾きで、好きを伝える
be partial to は、好みを大げさに言い切らずに伝える表現です。土台にあるのは「一方へ偏っている」という partial の語義で、公平な impartial の反対側に位置しています。
この一言を持っておくと、好みを語るときの温度が調整できます。初対面の相手に I love it. と言うと勢いが強すぎる場面でも、この形なら控えめに、それでいてはっきりと伝わります。身内びいきを自分から認める前置きとしても働くため、公平さが問われる場面でも役に立ちます。
観察を積み重ねた末に、ジェーンが選んだのは声を荒げない一語でした。強く言わないほうが相手を逃がさないこともあるのですね。


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