海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
体調を崩したときに見た光景が、後から思えばまったくのつくりものだった。そんな経験は、誰にでも一度くらいあるのではないでしょうか。
そんな「気のせい」を英語らしく言い切る「a figment of one’s imagination」を、『メンタリスト』シーズン5第2話、病室のベッドで幻覚の中の娘とジェーンが向き合う場面から、一緒に見ていきましょう。
「a figment of one’s imagination」の意味とニュアンス
a figment of one’s imagination
意味:想像の産物、気のせい
実在しないものを、実在しないと言い切るための定型句です。figment は単独ではほとんど使われず、この形の中でだけ生き残っている語にあたります。思い違いよりも強く、対象そのものが最初から存在しなかったことを示す点が特徴です。one’s の位置には誰の想像かが入り、a figment of my imagination(私の想像の産物)、a figment of his imagination(彼の想像の産物)のように使われます。人にも、物にも、出来事にも当てはめられる、幅の広い言い方です。
【ここがポイント!】
- 実在しないものを、実在しないと言い切るための定番の一言
- figment はこの形の中だけで生き残っている、単独では使われない語
- 人・物・出来事のどれにも当てはめられる、応用範囲の広さが特徴
『メンタリスト』S05E02のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
病院のベッドに横たわるジェーンの前には、十年前に亡くなった娘の姿をした少女がいます。父親としての立場を持ち出したジェーンに、少女は自分が実在しないことを盾にして切り返します。
Charlotte: You have no life, just this endless obsession. Red John. Red John. Mom would not be happy.
(パパには生活がない。あるのは終わらない執着だけ。レッド・ジョン、レッド・ジョン。ママなら喜ばないよ)Jane: Well, my relationship with your mother is, uh… it’s my business. Show a little respect.
(母さんとの関係は、その、私の問題だ。少しは敬意を持ちなさい)Charlotte: Hello, I’m a figment of your imagination. Show yourself some respect.
(あのね、私はパパの想像の産物なの。敬意を持つなら自分にでしょ)Jane: This is what I’ve been missing out on for all these years?
(この十年、私が逃していたのはこれか)The Mentalist Season5 Episode2(Devil’s Cherry)
シーン解説と心理考察
父親として線を引こうとするジェーンに対して、少女は自分が実在しないという事実そのものを武器にして切り返します。存在しないものに敬意を求めることの奇妙さを突かれ、ジェーンは言葉に詰まります。
この一往復で、対話の相手が娘ではなく、ジェーン自身の内側だったことが浮き彫りになります。軽い皮肉に聞こえる Show yourself some respect という返しが、会話の温度を変えています。
直後にジェーンが軽口へ逃げるのは、痛いところを突かれたときのいつもの反応です。飄々とした態度の下に隠されていたものが、この一瞬だけ表として響きます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
figment を、想像という工房でこしらえられた小さな部品として思い描いてみましょう。fiction(作り話)や figure(形づくる)と同じ語族に属し、figment はその中でも一片に当たる小さな作りものを指します。
劇中では、その部品が自分の口で自分の正体を宣言します。病室のベッドの横に立ち、Hello と切り出してから、自分は想像の産物だと名乗る。存在しないものが名乗りを上げるという反転の絵とセットにしておくと、a figment of one’s imagination という語順ごと記憶に残ります。
例文で覚える「a figment of one’s imagination」
見間違いやうわさを否定する場面で使える表現です。3つの場面で確認していきましょう。
Don’t worry, the sound in the attic is just a figment of your imagination.
(心配しないで、屋根裏の物音は気のせいだよ)
怖がっている相手を落ち着かせる場面です。just を添えると、軽く受け流す響きになります。
The rumor about a merger turned out to be a figment of someone’s imagination.
(合併のうわさは、誰かの想像の産物だったと判明した)
社内のうわさが否定された場面です。someone’s にすると、出所を特定せずに済みます。
A: I thought I saw her in the crowd yesterday.
B: It was probably just a figment of your imagination. She’s still abroad.
(A:昨日、人混みで彼女を見た気がしたんだ)
(B:たぶん気のせいだよ。彼女はまだ海外にいるはず)
会えない相手を思い出す会話です。probably を添えると、断定を避けたやわらかい返しになります。
あわせて覚えたい関連表現
all in your head
(全部気のせいだ)
くだけた口語で、痛みや不安を否定する場面で使われます。相手を軽んじる響きになりやすく、a figment of one’s imagination の定型句よりも扱いに注意が必要です。
imaginary
(架空の、想像上の)
形容詞なので名詞の前に置けます。an imaginary friend のように、存在しないこと自体を責めない中立的な語です。
a trick of the mind
(心が起こした錯覚)
一時的な誤作動というニュアンスを持ち、見間違いや聞き違いの説明に向きます。a figment of one’s imagination は、存在そのものの否定によりはっきり寄る表現です。
Note|体調が崩れたときに、見えない人が「見える」ことがある
高熱や脱水、深刻な睡眠不足などで意識がぼんやりした状態のとき、実在しない人の姿を見ることがあります。
こうした体験は一般にも報告されており、体調不良や睡眠不足が続いた状態では、実際にはない像を思い浮かべてしまうことがあるとされています。ただし、どのような像が現れやすいのかを一般化して語れるだけの材料はここにはありません。劇中で確かなのは、ジェーンの前に現れたのが見知らぬ誰かではなく、十年間手放せずにいた娘の姿だったという一点です。体に残った薬の作用が引き金になったとしても、その形を決めたのは彼自身が抱え続けてきたものだった、という筋立てになっています。
figment という語が指しているのも、まさにこの、実体はないが心が確かに作り出したものです。体調が万全であれば決して現れなかったはずの存在が、ジェーンの意識の隙間からするりと立ち上がってくる。その構造を言い当てる語として、a figment of one’s imagination はよくできた表現だと言えます。
フィクションの中の出来事とはいえ、心が何を材料に幻を組み立てるのか、少し覗いてみたくなる場面です。
まとめ|実在しないものを、実在しないと言い切る一言
a figment of one’s imagination は、実在しないものを実在しないと言い切るための定型句です。思い違いよりも一歩踏み込んで、対象そのものが最初から存在しなかったことを示します。
見間違いや聞き違い、うわさ話まで、幅広い対象に使える便利な言い回しでもあります。one’s の部分を入れ替えるだけで、誰の想像なのかを自在に指定できる柔軟さも魅力です。
亡き娘の姿を借りて現れた少女の一言は、皮肉であると同時に、ジェーンの心の奥をそのまま映し出す鏡のようでもありました。


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