海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
答えにあと一歩で届きながら、結局は外れてしまう。そんな瞬間が、ドラマにはときどき差し込まれます。
『メンタリスト』シーズン5第2話、被害者の工房でジェーンが覚えた既視感を、案内役の少女が採点するように扱う場面で、「close, but no cigar」というひと言が飛び出します。そのやり取りを、一緒に見ていきましょう。
「close, but no cigar」の意味とニュアンス
close, but no cigar
意味:惜しい、でも当たりじゃない
あと少しで正解や成功に届きながら、最終的には達成できなかった場面で使う決まり文句です。close だけでも近いことは伝わりますが、but no cigar を続けることで、近づいたが景品はもらえないという軽い調子の不合格宣言になります。深刻な失敗というより、クイズやゲーム、ちょっとした賭けごとで使われる軽やかな響きが特徴です。Close, but no cigar. の形でそのまま一文として使われることが多く、あえて主語を立てない言い切りの形が定型になっています。
【ここがポイント!】
- 近いけれど届かなかった、を軽い調子で伝える定型のひとこと
- クイズや当てっこなど、勝負や答え合わせの場面で使われる表現
- 深刻な失敗には使わない、あくまで軽さを保った言い回しという線引き
『メンタリスト』S05E02のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
少女に案内されて被害者の工房に足を踏み入れたジェーンは、初めて入るはずの部屋に既視感を覚えます。その感想を、少女は当てっこの答えのように扱います。
Jane: Have you been inside before?
(中に入ったことは)Charlotte: No. But I’ve seen him go in a lot. He spent all of his time here. This place is so cool.
(ないよ。でも出入りするのはよく見た。ずっとここにいた人だから。ここ、すごくいい)Jane: Weird… is what it is. It’s like a place in a dream.
(妙だ。それが正しい言い方だな。夢の中の場所みたいだ)Charlotte: Close, but no cigar. You’re getting warmer, though.
(惜しい、でも当たりじゃない。近づいてはきてるけどね)The Mentalist Season5 Episode2(Devil’s Cherry)
シーン解説と心理考察
初めて入るはずの工房で、ジェーンは既視感を口にします。それは感想のつもりだった一言でしたが、少女はそれを当てっこの解答のように扱い、正解にどれだけ近いかだけを教える側に回ります。
主導権を握っているのは、明らかに少女のほうです。ジェーンが試される側に回っているという逆転が、この短いやり取りに表れています。close, but no cigar という軽い調子の言葉の裏で、二人の力関係がそっと入れ替わっている空気があります。
You’re getting warmer という続きの一言にも、答えに近づいていることだけを伝えて核心は渡さない、じらすような温度がにじむ場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
close, but no cigar を、縁日の射的で渡されなかった景品として思い描いてみましょう。玉は的をかすめたのに、店主は景品を差し出さない。その手渡されなかった一本が、このフレーズの絵になります。
劇中でも、少女は当てっこの主催者のように振る舞い、ジェーンの答えを採点しています。正解には触れず、近づいていることだけを教える。縁日の店主と客のやり取りが、そのまま二人の関係に重なっているので、場面と表現を一緒に覚えることができます。
例文で覚える「close, but no cigar」
クイズや勝負の場面で、惜しくも正解に届かなかったときに使える表現です。3つの場面で確認していきましょう。
Close, but no cigar — the answer was 1897, not 1898.
(惜しい、でも違う。正解は1898年じゃなく1897年)
クイズの答え合わせの場面です。正解を続けて示すことで、この表現の役割がはっきりします。
We finished second again. Close, but no cigar.
(また2位だった。惜しかったけど届かなかった)
大会の結果を報告する場面です。結果を先に述べてから添える、自然な流れの一例です。
A: Is the answer Paris?
B: Close, but no cigar. It’s actually Lyon.
(A:答えはパリ?)
(B:惜しい、でも違うよ。正解はリヨンなんだ)
クイズを出し合う友人同士の会話です。次の解答を促す軽い返しとして使われています。
あわせて覚えたい関連表現
So close.
(惜しい)
最も汎用的な2語の表現です。不正解であることを明示せず、距離の近さだけを伝えるため、close, but no cigar よりも幅広い場面で使えます。
Nice try.
(いい線いってた、残念でした)
試みそのものを評価する言い方です。相手の企てを見抜いたときの皮肉として使われることもあり、close, but no cigar よりもやや幅のある表現になります。
You’re getting warmer.
(近づいてる)
正解への距離が縮まっていることを伝える、まだ続きのある合図です。close, but no cigar が一区切りをつけるのに対し、こちらは会話を先へ促す役割を持ちます。
Note|景品の葉巻が渡されなかった、という絵
close, but no cigar という言い回しには、20世紀前半のアメリカの縁日や遊園地に由来するとされる説がよく紹介されています。
当時の射的や力試しのゲームでは、景品として葉巻が用意されていたと伝えられています。玉が的に近づいたものの当たりには届かなかった客に対して、店主が惜しいが葉巻はあげられないと告げた、その言い回しがそのまま定着したという筋立てで語られることが多い表現です。ただし、正確な初出や発案者については確定した記録が乏しく、諸説のひとつとして受け取るのが安全です。景品が縫いぐるみやチケットに置き換わった現代でも、cigar という言葉だけが化石のように残り続けている点が、この表現の面白さでもあります。
このフレーズに戻ると、少女が工房でジェーンに向けた惜しい、でも当たりじゃないという判定は、まさにこの縁日の採点役の言い回しをなぞっていることが分かります。答えに近づいた挑戦者を、正解には届かせないまま試し続ける。景品の葉巻を渡さない店主と同じ役回りを、少女が担っているとも読めます。
小さな縁日の一場面が、100年近くを経て刑事ドラマの会話にまで生き延びている。そう思うと、この一言の響き方も少し違って聞こえてきます。
まとめ|あと一歩で届かなかった、を軽やかに伝える一言
close, but no cigar は、正解や成功にあと少しで届きながら、最終的には手が届かなかったことを、軽い調子で伝える表現です。深刻さを持ち込まず、挑戦した相手をねぎらう響きも含んでいます。
クイズの答え合わせから僅差の勝負まで、惜しかった結果を伝えたい場面で幅広く使える一言です。
正体を明かさない少女に試され続けたジェーンの姿は、答えに近づきながらも核心にはまだ手が届かない、この物語の序盤そのものを映していました。


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