海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「話しても分からないよ」と先回りで打ち切られて、思わず「言ってみてよ」と返した経験はありませんか。相手が勝手に引いた線を、こちらから押し返す瞬間です。たった二語で、その線が動いてしまうことがあります。
そんなやり取りの核心になる「try me」を、『メンタリスト』シーズン5第8話の中盤、心を閉ざした女性とジェーンがモーテルの一室で差し向かいに話す場面から、一緒に見ていきましょう。
「try me」の意味とニュアンス
try me
意味:①話してみて、聞くから ②やれるものならやってみろ
try は「試す」、me は「私」。中身はきわめて素直な二語です。相手が「どうせ分からないだろう」「どうせできないだろう」と決めつけたのに対し、その決めつけを実際に検証させるという構造を持っています。
意味が二つに分かれるのは、何を試されるかが場面によって変わるからです。理解力や知識を否定されれば、①の「話してみて」という誘いになります。能力や覚悟を否定されれば、②の「やってみろ」という挑発になります。どちらの向きに転ぶかは、直前に相手が何を否定したかで決まります。
形の上では、主語も助動詞も持たない命令形の短い返答です。そのため口論や軽口の応酬でもテンポを落とさずに打ち返せます。声のトーンによって印象が大きく変わる表現でもあり、穏やかに言えば誘い、強く言えば挑発として届きます。
【ここがポイント!】
- 中身は素直な二語、意味は相手の決めつけの中身で決まる表現
- 「話してみて」の誘いにも「やってみろ」の挑発にもなる二面性が特徴
- 直前に何を否定されたかを見て、どちらの向きかを読み取るのがコツ
『メンタリスト』S05E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
道中のモーテルの一室。ある女性が、自分の身に起きた重い出来事を「ある意味では自分を強くしてくれた」と語り始め、ジェーンがそれに向き合っていく場面です。同じ二語が、二人の口から違う向きで出てくるところに注目してみてください。物語の核心に触れない範囲で引用します。
Jane: You want to explain that?
(それ、説明してくれる?)Lorelei: You wouldn’t understand.
(あなたには分からないわ。)Jane: Well, you could try me. I mean, I-I’d like to understand.
(まあ、試してみればいい。分かりたいと思ってるんだ。)(中略)
Jane: That’s nonsense. Believe me. Things can hurt you.
(そんなのばかげてる。信じてくれ、人を傷つけるものはあるんだ。)Lorelei: Try me.
(やってみればいい。)The Mentalist Season5 Episode8 (Red Sails in the Sunset)
シーン解説と心理考察
同じ二語が、短いやり取りの中で二回、正反対の向きで使われる場面です。
一度目はジェーンの側から出てきます。分からないと突き放されたことに対して、話してごらん、と受け皿を差し出す使い方です。分かりたいと思っている、と続けているところからも、誘いとしての性格がはっきりしています。
二度目はローレライから返ってきます。傷つくものはある、というジェーンの言葉に対して、やってみろ、と押し返す形です。同じ二語なのに、今度は相手の見立てを試させる挑発になっています。
話し手が入れ替わるだけで意味の方向まで入れ替わる。この構造そのものが、フレーズの二面性を場面として見せています。心を閉ざした人物が、それでも会話を打ち切らずに二語で応じるところに、二人の関係の複雑さがにじむ場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
try me は「私で試してごらん」と言っているだけの、素直な二語です。難しいのは、何を試すのかが自分では決まらない点にあります。
決めるのは相手のほうです。「話しても分からないだろう」と言われれば試されるのは理解力になり、「そんなことできないだろう」と言われれば試されるのは度胸になります。相手が投げた決めつけを、そのまま受け皿に流し込む二語だとイメージしておくと、誘いと挑発の両方が一本の線でつながります。
今回のシーンのように、同じ二語が二人の口から違う向きで出てくる場面ごと覚えておけば、実際に耳にしたときも迷わず読み分けられるはずです。
例文で覚える「try me」
相手の決めつけを検証させる、短くて強い二語です。誘いから挑発、交渉まで、振れ幅の広さを見ていきましょう。
“You wouldn’t get it.” “Try me.”
(「言っても分からないよ」「話してみて」)
悩みを打ち明けようとしない相手に向き合う場面です。長く説得を重ねるより、この二語で受け皿があることだけを示すほうが、相手の遠慮を外しやすくなります。
“You’ll never guess who called.” “Try me.”
(「誰から電話があったか当てられないよ」「言ってみて」)
雑談でもったいぶられたときの返しです。挑発の色はまったくなく、軽い場面でいちばん使いやすい形と言えます。当てられるかどうかより、早く教えてほしいという気持ちのほうが伝わります。
A: If you think the terms are non-negotiable, try me.
B: All right, let’s talk numbers.
(A:条件は動かせないとお考えなら、まずは言ってみてください。)
(B:分かった、金額の話をしましょう。)
交渉の席でのやり取りです。条件節を前に置くと挑発の色が薄まり、相手の前提を崩しながらも角の立たない言い方になります。
あわせて覚えたい関連表現
go ahead
(どうぞ、やってみて)
相手に許可を与える言い方です。今回のフレーズのように相手の決めつけを前提にしていないため、押し返す響きは出ません。純粋に道を空けるだけの表現になります。
I dare you
(やれるものならやってみろ)
挑発の意味だけを担う表現です。今回のフレーズが二つの向きを持つのに対し、こちらは一方向にしか使えないため、誘いのつもりで使うと誤解を招きます。
bring it on
(かかってこい)
攻撃を歓迎する構えを示します。今回のフレーズが相手の見立てを覆すことに重心があるのに対し、こちらは勝負そのものを引き受ける点に重心があり、スポーツや競争の場面でよく使われます。
Note|同じ二語が、誘いにも挑発にもなる
この表現がおもしろいのは、正反対に見える二つの意味を、たった二語で両方担えるところにあります。
分かれ目は、直前に相手が何を否定したかにあります。理解力や知識を疑われれば「話してみて」という誘いになり、能力や覚悟を疑われれば「やってみろ」という挑発になります。言葉そのものは変わらず、置かれた文脈だけが意味を決めているわけです。
似た構造を持つ短い返答は、英語にいくつもあります。見てなさい、と言い返す Watch me.、誰がそう言ったと押し返す Says who.。いずれも相手の断定をそのまま材料にして打ち返す型を共有しています。主語や助動詞を省いた命令形だけの返答は、口論や軽口の応酬で速度を落とさずに返せる仕組みになっており、会話のリズムを保つ役割も果たしています。
今回のシーンで同じ二語が二度、違う向きで使われていたのも、この表現が持つ二面性そのものを見せる場面だったと言えます。誘いとして差し出された言葉が、そのまま挑発として返ってくる。二人の距離が縮まらないことが、言葉の向きの違いだけで表現されています。
たった二語の中に、これだけの振れ幅が詰まっているのは面白いところです。
まとめ|相手の決めつけをそのまま試させる二語
try me は、相手が下した決めつけを、そのまま検証させてしまう短い返答と読み取れます。反論の中身を語らずに、判断の前提そのものを差し戻すという点に、この二語の強さがあります。
理解力を疑われれば誘いに、能力や覚悟を疑われれば挑発に。同じ言葉がどちらの向きにも転がる柔軟さが、この二語の実用性を支えています。声のトーン次第で印象も変わります。長々と説明を重ねるより、この二語を返すだけで会話の主導権が移る場面は少なくありません。
「どうせ無理でしょ」と決めつけられたときの返し方として、表現の引き出しに加えてみてください。


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