海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
初対面の相手の名前をうっかり間違えたり、冗談の方向を読み違えたりして、最初の数分で場の空気が固まってしまう場面があります。悪気はなかったのに、その後のやり取りがずっとぎこちない、という状態です。
そんな出だしのつまずきを言い表す「get off on the wrong foot」を、『メンタリスト』シーズン5第19話の後半、舞台裏でジェーンが一度やりこめた大道芸人に取引を持ちかけるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get off on the wrong foot」の意味とニュアンス
get off on the wrong foot
意味:出だしでつまずく / 第一印象を損ねる
行進や踊りで、そろえるべき足を間違えて踏み出してしまう。その一歩が全体の歩調を崩す、という場面がこの表現のもとになっています。get off は「出発する」の意味で、始まりの瞬間を指しています。
この言い回しが指すのは、関係や物事の最初の局面に限られます。途中でこじれた場合には使いません。逆に言えば、始まりさえ間違えなければやり直せるという含みがあり、start off on the right foot という対の言い方が並んで存在します。
主語には we がよく使われます。We got off on the wrong foot. と言えば、どちらが悪かったかを決めずに、関係の出だしがうまくいかなかったという事実だけを共有できます。責任の所在を伏せたまま仕切り直しを提案できるため、和解の切り出しとして重宝される形です。
【ここがポイント!】
- そろえるべき足を踏み間違えた一歩、それがこの言い回しの出発点
- 途中のこじれではなく、始まりの局面だけを指すのが特徴
- we を主語にすると責任を分け合う形になり、仕切り直しを切り出しやすくなるのがコツ
『メンタリスト』S05E19のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェーンはこの日の昼、通りでカップと金塊の当てものをしていた男に、同じ手口で仕返しをしていました。その数時間後、舞台に立つ時間がほしくなったジェーンは、その相手のもとへ自分から出向きます。歓迎されるはずのない再会を、こう切り出しました。
Jane: Ah, Kevin. You again. You know, I’m afraid we got off on the wrong foot, and you need my help, I need your help. Maybe we can come to some kind of agreement.
(やあ、ケヴィン。また会ったね。どうも出だしでつまずいたようだ。君には私の助けが要るし、私には君の助けが要る。何か取り決めができるんじゃないかな)Kevin: Why do I need your help? Your magic sucks eggs.
(なんであんたの助けが要るんだ。あんたのマジックなんて最低だろ)Jane: I can help you with that, and you can help me in return by giving me a couple of minutes of your stage time.
(それについては力になれる。代わりに、舞台の時間を数分ゆずってくれればいい)The Mentalist Season5 Episode19 (Red Letter Day)
Amazon Prime Videoで見る ※配信状況は変更される場合があります(2026年5月時点)
シーン解説と心理考察
we got off on the wrong foot という言い方は、ここでは謝罪の代わりに使われています。財布を抜き取ったのも金塊を消したのもジェーンの側でしたが、we を主語に置くことで、非がどちらにあったかを言わずに済ませています。
I’m afraid という前置きも同じ働きをしています。残念に思っているという体裁は整えつつ、何が起きたかには触れない。丁寧な形をとりながら中身を空けておく手つきが表れています。
続く and you need my help, I need your help. の並べ方も見どころです。相手の必要を先に置き、自分の必要を後に置く。順序を入れ替えるだけで、頼み事が対等な提案の顔をして届きます。
対するケヴィンは、その組み立てにまるで乗りません。Your magic sucks eggs. と正面から切り返し、丁寧な前置きを一言で吹き飛ばしています。取り繕う側と取り繕わない側の対比が、この短いやり取りの温度をつくっていると言えます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
隊列で行進を始める場面を思い浮かべてみてください。号令とともに全員が左足を出すところ、自分だけ右足が前に出てしまう。ぶつかりはしないものの、しばらく歩調が合いません。
get off on the wrong foot が描いているのは、この最初の一歩のずれです。転んだわけでも、進めなくなったわけでもない。ただ、そろっていない状態が続いてしまう。
舞台裏のジェーンが持ちかけたのは、この歩調を合わせ直す提案でした。踏み出しをなかったことにはできないので、次の一歩からそろえよう、という切り出し方です。足元の一歩の絵を持っておくと、この表現がなぜ始まりの局面にしか使えないのかも一緒に覚えられます。
例文で覚える「get off on the wrong foot」
関係の仕切り直しを切り出すときにも、過去を振り返るときにも登場します。3つの例文で使い方を見ていきましょう。
We got off on the wrong foot, but we work well together now.
(出だしはうまくいきませんでしたが、今はいい関係で仕事ができています)
過去を振り返る場面です。but 以下に現在を置くと、つまずきが乗り越えられた話として収まります。
I’m sorry if we got off on the wrong foot yesterday.
(昨日は出だしがまずかったようで、すみません)
関係を立て直したい場面です。if を挟むことで、相手がそう感じていない可能性まで残した控えめな謝り方になります。
A: How’s the new manager?
B: We got off on the wrong foot, honestly. I questioned her plan on day one.
(A:新しいマネージャーはどう?)
(B:正直、出だしでつまずいたよ。初日に彼女の計画に異を唱えてしまってね)
同僚との雑談です。理由を続けて添えると、単なる相性の話ではなく具体的な経緯として伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
start off on the right foot
(好調な滑り出しをする)
今回のフレーズと正面から対になる言い方です。同じ足の比喩を使いながら、これから始まる場面についての心構えを述べる点が違います。
hit it off
(意気投合する)
出会った瞬間から相性がよかったことを表し、今回のフレーズとは反対の結果を指します。段取りのずれではなく、感情面の一致に焦点がある点が異なります。
clear the air
(わだかまりを解く)
つまずいた後の修復にあたる表現です。今回のフレーズが状況の説明であるのに対し、こちらは解消のための行動を指します。
Note|右足と左足、foot の言い回しがたどってきた道
英語には足を使った言い回しが数多くありますが、その中でも right foot と wrong foot は対になって定着している珍しい組み合わせです。この対がどう生まれたのかをたどると、かなり古い層まで行き着きます。
しばしば語られるのが、左足を不吉とする古代の観念です。ラテン語で左を意味する sinister が、英語では不吉や邪悪を指す語として残っていることはよく知られています。古代ローマでは建物に入るとき右足から踏み入れるのが作法とされ、それを守らせるための係の者が置かれていたという話も伝えられています。この右を吉、左を凶とする感覚が、右足で始める言い方の下地になったとする説明が広く行われてきました。ただし、この説と現代の慣用句を直接つなぐ確かな記録があるわけではなく、後づけの解釈だとする見方もあります。
もう一つの流れが、行進や舞踏の実務です。集団で歩調をそろえる場面では、どちらの足から出るかが最初に決められます。ここで踏み違えると全体が乱れるため、間違った足で出発するという表現がそのまま比喩として使いやすかったと考えられます。実際、英語には歩き出しに関わる言い回しが層をなしており、put one’s best foot forward(最善を尽くして臨む)、get a foot in the door(足がかりを得る)、find one’s feet(慣れて調子を掴む)など、足の置き方が状況の始まりや進み具合を表す型が繰り返し現れます。
こうして並べると、英語が物事の始まりを一歩目の置き方で語り続けてきたことが見えてきます。ジェーンが選んだのも、責任を問わずに始まりだけを名指せるこの型でした。何が起きたかを説明せず、踏み出しがそろわなかったとだけ言う。その省き方が、この言い回しの使い勝手を支えています。
一歩目は取り消せませんが、二歩目はそろえられます。
まとめ|踏み違えた一歩から、二歩目へ
get off on the wrong foot は、関係や物事の始まりがうまくかみ合わなかったことを、歩き出しの一歩に置き換えて表す言い回しです。何が悪かったかを述べずに、出だしという時点だけを指せる点が、この表現の使いやすさをつくっています。
we を主語にすれば、責任の割り振りを保留したまま仕切り直しを提案できます。謝りきるほどでもない、けれど何も言わずには進めない。そんな場面をひとまたぎできる表現です。
始まりのつまずきに名前をつけられると、そこから先の一歩は少し軽くなるのかもしれません。


コメント