海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
専門家が「ここを見てください」と差し出したものを、そっと目をそらしてやり過ごす。そんな瞬間が、ドラマには時々あります。
そのときに使える「take someone’s word for it」を、『メンタリスト』シーズン5第21話の中盤、検死官の専門的な説明を受けたリズボンが返す一言から、一緒に見ていきましょう。
「take someone’s word for it」の意味とニュアンス
take someone’s word for it
意味:自分では確かめずに、相手の言葉を信じる
word には「言葉」のほかに「約束」「保証」という意味があります。この表現の word は後者に近く、相手が差し出した保証を、そのまま受け取るという形になっています。
大事なのは、自分では確認していないという前提が含まれる点です。証拠を見たから信じたのではなく、その人が言ったから信じた。この距離のとり方が、日本語の「信じる」より一段はっきり示されます。
最もよく使われるのは I’ll take your word for it. という形です。相手を立てる丁寧な同意にもなりますし、「確認はしないでおきます」という軽い引き下がりにもなります。劇中のように、専門的な説明を受けて自分では判断できないときにも自然に出てきます。
否定形の Don’t take my word for it. も定番です。これは謙遜ではなく、「私の言うことを鵜呑みにせず、自分で確かめてほしい」という促しになります。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「保証としての言葉を、そのまま受け取る」という形
- 自分では確認していない、という前提が含まれるのが日本語との違い
- 否定形にすると「鵜呑みにしないで」という促しに反転するのがおもしろいところ
『メンタリスト』S05E21のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者の体に何が起きていたのかを確かめるため、ジェーンとリズボンが検死室を訪れます。検死官は、被害者が長く体の不調を抱えていたことを示す所見を、専門用語を交えて説明していきます。そして「ここで確認できます」と現物を示そうとする。医学的な話にはついていけないリズボンが、短く返した一言が印象に残る場面です。
Pathologist: I noticed thickening and scarring of the pericardium. That’s the sac-like structure around the heart. You can see it here.
(心膜に肥厚と瘢痕が見られました。心臓を包む袋状の組織です。ここで確認できます。)Lisbon: I’ll take your word for it.
(お言葉を信じます。)Pathologist: Chronic chest pain and shortness of breath were a way of life for this man.
(慢性的な胸の痛みと息切れが、この男性にとっては日常でした。)Jane: Thanks, Doc.
(ありがとう、先生。)The Mentalist Season5 Episode21 (Red and Itchy)
シーン解説と心理考察
たった一文ですが、リズボンという人物の輪郭がよく出ています。専門家の説明を疑ってはいない。ただ、自分の目で確かめる必要も感じていない。その線引きを、丁寧さを保ったまま一言で示しています。
現場を長く踏んできた捜査官の実務感覚が、この短さににじむ場面です。所見の中身より、そこから何が言えるかのほうが仕事に直結する。だから確認の手続きは専門家に預けて、自分は次の判断に進みます。断るでも茶化すでもなく、静かに一歩下がる返し方が選ばれています。
この一言が、直後の検死官の説明を引き出しているのも見どころです。現物を見せる流れが止まったことで、話は所見そのものから「この男性がどんな体で生きていたか」へ移ります。捜査に必要なのはそちらの情報でした。受け取り方をひとつ変えるだけで、会話の焦点が動いていく様子が表れています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
差し出された封筒を、開けずにそのまま受け取る場面を思い浮かべてください。中身を検めることもできるけれど、その手間は取らない。相手を信用しているから、封をしたまま受け取る。take someone’s word for it は、この受け取り方そのものです。
劇中のリズボンも、目の前に示されたものを見ずに、言葉のほうを受け取りました。証拠より説明を、確認より関係を優先した瞬間です。封を切らずに受け取る手つきを思い浮かべておくと、「信じる」という訳語だけでは落ちてこない、自分では確かめないという含みまで一緒に定着します。
例文で覚える「take someone’s word for it」
丁寧な同意にも、軽い引き下がりにも使えます。3つの場面で見ていきましょう。
I haven’t checked the numbers myself, but I’ll take your word for it.
(数字を自分で確認したわけではありませんが、お言葉を信じます。)
会議で相手の報告を受け入れる場面です。確認していないと先に断ることで、責任の所在をやわらかく示せます。
Don’t take my word for it — try it yourself.
(私の言うことを鵜呑みにしないで、自分で試してみて。)
おすすめを紹介したあとに添える場面です。押しつけを避ける決まり文句として、レビューや紹介文でもよく使われます。
A: I really didn’t say anything to her.
B: Okay. I’ll take your word for it.
(A:彼女には本当に何も言ってないよ。)
(B:わかった。その言葉、信じる。)
弁解を受け止める場面です。同じ一文でも、言い方しだいでは「今回は追及しない」という含みが出ます。
あわせて覚えたい関連表現
take something at face value
(額面どおりに受け取る)
face value は紙幣や証券に書かれた額面のこと。裏を読まずに受け取るという点は共通しますが、こちらは対象が言葉に限らず、態度や資料にも使えます。
be as good as one’s word
(言ったことを必ず実行する)
差し出された言葉が実際に果たされた、という結果側の表現です。take someone’s word for it が受け取る側の判断なのに対して、こちらは差し出した側への評価になります。
give someone the benefit of the doubt
(疑わしい点があっても好意的に解釈する)
疑う材料がある状態で、あえて信じる側に倒す言い方です。take someone’s word for it が確認を省く選択なのに対して、こちらは疑いを抱えたままの選択になります。
Note|言葉そのものを担保にしてきた英語圏の作法
take someone’s word for it の word は、ただの発言ではなく、担保として差し出されたものを指しています。英語には、この使い方の word を核にした言い回しが層をなしています。
まず a man of his word、a woman of her word があります。言ったことを守る人、という人物評で、契約書より先に人柄が問われる場面で使われます。keep one’s word(約束を守る)と go back on one’s word(約束を破る)は対になっており、word が守ったり破ったりできる対象として扱われているのが分かります。誓いを立てる場面では word of honor が使われ、書面の裏づけがないぶん、破ったときの代償が名誉であることを含んでいます。
この発想が制度の側に現れた例として知られているのが、ロンドン証券取引所のモットー Dictum Meum Pactum です。ラテン語で「私の言葉が私の契約である」を意味し、英語では My word is my bond と訳されてきました。取引が口頭で成立し、書面は後追いだった時代の慣行を反映したものとされています。
こうして並べてみると、take someone’s word for it が単なる「信じる」ではないことがはっきりします。相手が差し出したのは保証であり、受け取る側はそれを担保として認めた。だからこそ、後で裏切られたときに go back on one’s word という強い非難が返ってくるわけです。
軽く聞こえる一言が、実は預かり物を受け取る手続きだったことになります。
まとめ|確かめないまま信じる、と伝える一言
take someone’s word for it は、自分では確認せずに相手の言葉を受け取る、という態度を表す言い方です。信じるかどうかだけでなく、確認の手続きを省くという選択まで含んでいる点が、日本語の「信じる」との違いになります。
覚えておくと、同意の伝え方に幅が出ます。専門的な説明についていけないとき、相手を立てながら話を先に進められますし、逆に自分の意見を押しつけたくないときは、否定形にして相手の判断に委ねられます。どちらも会話の主導権を静かに動かす一言です。
現物を示されても目を向けず、言葉のほうを受け取る。相手の専門性を認めながら、自分の仕事に集中し直すことができる、そんな一言です。表現の引き出しに加えてみてください。


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