海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
交流会や式典の会場で、普段なら会えない人たちと同じ空間に立っている。あの独特の高揚感を味わったことはありませんか。名刺を交わすほどでもないのに、その場にいたこと自体が何かの手応えとして残る感覚です。
そんな場面を一語で表す「rub elbows with」を、『メンタリスト』シーズン5第21話の終盤、ジェーンが相手の来歴を静かに読み解いていくシーンから、一緒に見ていきましょう。
「rub elbows with」の意味とニュアンス
rub elbows with
意味:(有力者などと)親しく交わる、顔をつなぐ
肘が触れ合うほど近い距離で人と混じり合う、という絵から来ている表現です。会場に人が集まり、体が自然に近づいてしまうような場面が下敷きになっています。
意味の中心にあるのは、相手との距離が縮まったという事実です。深い関係になったとまでは言っておらず、同じ空間に居合わせて言葉を交わした、という程度でも使えます。この「近づいたが、まだ何者でもない」という中間の状態を切り取れるのが便利なところです。
組み合わせる相手には、自分より上とされる人が来るのが定番です。the rich and famous、big players、industry leaders といった語がよく続きます。そのため、話し手の口ぶりによっては、権力に近づきたがっているという皮肉が混じることもあります。
イギリス英語では rub shoulders with が使われることが多く、意味はほぼ同じです。地域による違いは Note で詳しく見ていきます。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは、人混みで肘が触れ合うほど距離が縮まるという絵
- 深い関係ではなく「同じ場に居合わせた」という中間の状態を表す一言
- 相手が格上のときに使われやすく、皮肉が混じることもあるのが注意点
『メンタリスト』S05E21のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
物語の核心に触れない範囲で状況を整理すると、ジェーンがある人物と向かい合い、その半生を言い当てていく場面です。書く才能に恵まれなかった記者志望の若者が、やがて組織の中枢に近い立場へ移っていった経緯を、ジェーンは資料も見ずに並べていきます。相手が地位の高さを持ち出して反論した直後に出てくるのが、このフレーズです。
Brenda: Managing editors are the second highest ranking position at a newspaper.
(編集長は新聞社で2番目に高い地位よ。)Jane: Yes. The allure of power. It’s why you joined the CBI, so you could rub elbows with all the big players in town.
(そう。権力の魅力だ。だからCBIに入った。街の有力者たちと肩を並べられるようにね。)Brenda: You’re so off.
(全然違うわ。)The Mentalist Season5 Episode21 (Red and Itchy)
シーン解説と心理考察
言葉の選び方に、ジェーンの読みの角度が表れています。地位そのものを否定していないのがポイントです。編集長は確かに高い立場だと認めたうえで、その地位が何のために求められたのかへ話を移しています。
rub elbows with という言い方が効いているのは、この表現が実務ではなく空間の話をしているからです。仕事の中身ではなく、誰の隣に立てるか。相手が語った肩書きの話を、会場の立ち位置の話に置き換えてしまう。その置き換えが、会話の温度を一段下げています。
返ってきたのは短い否定だけでした。長く反論すればするほど図星に近づくと分かっているような、抑えた返し方です。ジェーンのほうも追い打ちをかけず、そのまま次の指摘へ進んでいきます。核心を突いた側と突かれた側の呼吸が、言葉数の少なさに表れる場面と言えます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
立食パーティーの会場を思い浮かべてください。グラスを持った人たちが少しずつ体を寄せ合い、通り抜けるたびに肘が軽くぶつかる。rub elbows with は、この「肘が触れる距離」をそのまま言葉にした表現です。
劇中では、その距離に近づくこと自体が目的だったのではないか、と指摘されていました。何を成し遂げたかではなく、誰の隣に立てたか。肘の触れ合う距離という具体的な絵を持っておくと、握手や名刺交換より一歩手前の、ゆるやかな接触を指す語だと感覚でつかめます。会場の混み具合まで一緒に思い浮かべておくと、使いどころを外しません。
例文で覚える「rub elbows with」
人脈づくりの話にも、あこがれの相手と会えた話にも使えます。3つの場面で見ていきましょう。
The conference is a good chance to rub elbows with people in the industry.
(その会議は、業界の人たちと顔をつなぐいい機会になる。)
出張の目的を説明する場面です。成果より場に居合わせること自体に価値がある、というニュアンスがきれいに出ます。
She’s not the type to rub elbows with the boss after work.
(彼女は仕事のあとに上司と親しく交わるようなタイプじゃない。)
同僚の人となりを話す場面です。否定形にすると、そういう付き合い方を選ばない人だという性格描写になります。
A: How was the gallery opening?
B: Fun. I got to rub elbows with a few artists I admire.
(A:ギャラリーのオープニング、どうだった?)
(B:楽しかった。憧れの作家さんたちと直に話せたよ。)
週末の出来事を報告する場面です。get to を添えると、めったにない機会だったという嬉しさが加わります。
あわせて覚えたい関連表現
network with
(人脈をつくる)
目的がはっきりした、実務寄りの語です。rub elbows with が場に居合わせた結果を描くのに対して、こちらは意図して関係を築きにいく行為を指します。
hobnob with
(気安く付き合う)
くだけた響きがあり、報道では揶揄を込めて使われることもあります。rub elbows with より皮肉の度合いが強く、書き手の評価が前に出やすい語です。
be well-connected
(顔が広い、有力者とのつながりがある)
接触の場面ではなく、すでに築かれた状態を表します。rub elbows with を重ねた結果として well-connected になる、という順序で覚えると関係がつかめます。
Note|肘か、肩か ― 大西洋で分かれた言い方
同じ意味の慣用句が、アメリカ英語では rub elbows with、イギリス英語では rub shoulders with と、体の部位を変えて定着しています。並べてみると、地域差の現れ方がよく分かる一例です。
どちらも人混みで体が触れ合う様子から来ており、意味の差はほとんどありません。イギリスの新聞や放送では rub shoulders with がほぼ標準で、王室関係者や著名人との交流を報じる記事に繰り返し登場します。一方、アメリカの用例では rub elbows with が優勢で、政治や実業の世界で有力者と接する文脈によく使われます。
興味深いのは、両方の形がどちらの地域でも通じるという点です。アメリカで rub shoulders with を使っても違和感なく受け取られますし、その逆も成り立ちます。完全に分かれてしまった言い方ではなく、どちらを先に思い浮かべるかという偏りにとどまっているわけです。似た例としては、lay of the land と lie of the land の分かれ方が知られています。
劇中で選ばれていたのは elbows のほうでした。カリフォルニア州の捜査機関を舞台にした会話としては、ごく自然な選択です。どちらの形が耳に残っているかで、その人がどの英語に多く触れてきたかが少し透けて見えます。
同じ絵を描くのに、肘を選ぶか肩を選ぶか。その差だけが海を隔てて残りました。
まとめ|肘の距離が意味するもの
rub elbows with は、有力者や著名人と近い距離で交わることを表す言い方です。深い関係になったとまでは言わず、同じ場に居合わせて言葉を交わした、という中間の状態を切り取れるのがこの表現の役どころになります。
覚えておくと、人との関わりを語るときの目盛りが細かくなります。知り合いだと言い切るほどではないけれど、まったくの他人でもない。その微妙な距離を、肘という具体的な部位ひとつで示せるからです。network with や be well-connected と並べれば、出会いから関係が定着するまでを段階として語れます。
肩書きの話を、誰の隣に立てるかという話に置き換えてみせる。言葉の選び方ひとつで、相手の動機が形を変えて見えてくるのですね。


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