海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回扱うのは、『ビッグバン★セオリー』シーズン2 第15話に登場する、触れてほしくない話題を止める言い方です。大学のカフェテリアでハワードが家族の話題を振ろうとするたびに、レナードはそれを押しとどめようとしますが、ラージたちのからかいはなかなか収まりません。レナードの母ビバリー本人を前にしての会話だからこそ、余計に気まずさが増していく場面でもあります。
踏み込まれたくない話題をどう止めるか、そしてそれでも止まらないからかいにどう向き合うか、その言い回しを見ていきます。
“Please, don’t go there.”――踏み込んでほしくない話題を止める
レナードの母ビバリーを交えたカフェテリアでの会話で、ハワードは家族の話題に踏み込もうとします。レナード自身が避けたがっている領域だと分かっていながら、あえてそこへ踏み込んでいく口ぶりです。本人を目の前にした状況での話題選びだけに、レナードにとっては特に止めておきたい展開だったはずです。優秀な弟や妹の存在は、以前から彼にとって触れられたくない比較の種になっているようです。
Howard: So, Dr. Hofstadter, Leonard rarely talks about his incredibly successful brother and sister.
(ところで、ホフスタッター博士、レナードは彼のすごく優秀な弟や妹の話、めったにしないんですよね。)Leonard: Please, don’t go there, Howard.
(頼むから、その話はやめてくれ、ハワード。)Howard: I understand that unlike Leonard, they’re at the top of their respective fields.
(レナードと違って、二人ともそれぞれの分野でトップに立ってるんですよね。)Leonard: Boy, you suck.
(まったく、お前は最低だな。)TBBT Season2 Episode15 (The Maternal Capacitance)
Please, don’t go there. は「その話はやめてくれ」と、これ以上踏み込んでほしくない話題を止める言い方です。go there は文字通りには「そこへ行く」という意味ですが、話題や領域についても比喩的に使われ、「その話に踏み込む」というニュアンスを表します。please を添えて頼む形を取ってはいますが、ハワードはそのまま話を続けてしまいます。丁寧さを装いながらも本人の意向を無視して話題を掘り下げていくところに、この場面ならではの気まずさが表れています。
日本語で「その話はやめて」と言うときも、話題を場所に見立てる感覚は共通しています。英語の go there はこの感覚をそのまま一語の動詞句に落とし込んだ表現で、家族の話題に限らず、宗教や政治、恋愛関係のもつれなど、触れられたくない領域全般に使うことができます。相手が話題に触れる前に、あらかじめ釘を刺しておく前置きとしても機能する言い方です。
止められてもなお続けるハワードに対して、レナードは Boy, you suck. という軽い一言で不満を表します。suck はもともと下品な響きを持つ俗語ですが、友人同士のカジュアルな会話では「最悪だ」「ひどいやつだ」程度の意味で気軽に使われます。丁寧に頼んだのに聞き入れられなかったときの、カジュアルな不満の表し方としても参考になる一言です。
please を添えた丁寧な頼みが一度で通らず、間を置かずにカジュアルな不満の一言へ切り替わる流れは、フォーマルな依頼とインフォーマルな不満表現を一つの会話の中で使い分ける実例にもなっています。相手との関係性次第で、頼み方も不満の表し方も一段くだけたものへ移っていく様子がよく分かる場面です。
からかいをやめて助けてほしいと率直に訴える
話題は収まらず、レナードはやがてからかいをやめて助けてほしいと直接に訴えます。
Leonard: You know, rather than mock me, my friends might realize that this is difficult and try to help me through it.
(あのさ、からかうんじゃなくて、これがつらいことだって気づいて、乗り越える手伝いをしてくれてもいいんじゃないか。)Raj: Nope, I think mocking you is more fun.
(いや、からかうほうが楽しいと思うよ、僕は。)TBBT Season2 Episode15 (The Maternal Capacitance)
rather than mock me, my friends might realize that this is difficult and try to help me through it は、遠回しな皮肉ではなく、からかいをやめて助けてほしいと率直に訴える言い方です。rather than 〜 は「〜ではなく」と、望ましくない対応と望ましい対応を対比させる形で、相手に求める行動をはっきり示す構文です。
普段は皮肉やツッコミで場を収めることが多いレナードにとって、この一文はめずらしく直球の訴えです。からかわれ続けている当人が、からかいをやめさせるのではなく、代わりに気づいて助けてほしいと言い換えているところにも、彼らしい遠慮がちな頼み方が表れています。
ところがラージの返事は Nope, I think mocking you is more fun. と、頼みをあっさり突っぱねてからかいを続けるというもの。真剣な訴えを軽く受け流す返し方も、友人同士のやり取りらしいカジュアルな一面です。help me through it の through it は「その状況を通り抜けて」というイメージで、つらい状況を最後まで支えてほしいという気持ちを一語に凝縮しています。
Nope は No をくだけて言い換えた形で、深刻な訴えに対してあえて軽い調子で切り返すことで、からかいの空気を保ったまま拒否の意思を示しています。真面目な訴えと軽い拒否が正面からぶつかる短いやり取りの中に、この友人グループらしい距離の詰め方が凝縮されていると言えます。
からかいをやめてほしいと言われて、素直に謝るのではなく、からかうほうが楽しいと言い切ってしまう返し方は、日本語の感覚では冷たく響くかもしれません。しかしこのグループにとっては、遠慮のない軽口の応酬こそが親しさの証でもあります。深刻になりきらないやり取りの温度感も、あわせて感じ取れる場面です。
まとめ|頼む・拒む・かわす、それぞれの言い回し
Please, don’t go there.、Boy, you suck.、rather than mock me… try to help me through it。踏み込んでほしくない話題を止めようとする言葉と、それでも続くからかいの応酬には、友人同士だからこそ成立するやり取りの型が見えてきます。頼んでも止まらない話題をどう受け流すか、その呼吸も含めて、この場面からは学べるところが多いと言えます。友人同士の軽口には軽口で応じる、そんな距離感の取り方も垣間見えてきます。
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