海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
何かを選ぶ前に、良い面と悪い面を頭の中で並べてみて、結局どちらつかずのまま「まあ、どっちもどっちかな」と結論づけてしまう場面が、誰にでもあります。
そんな場面にぴったりの「pros and cons」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン11第17話の前半、育児休業中の大変さをハワードに尋ねたラージが、使用人に育てられた自分の生い立ちを振り返りながら返す一言から、一緒に見ていきましょう。
「pros and cons」の意味とニュアンス
pros and cons
意味:長所と短所、賛否
proはラテン語で「賛成」を意味し、conはラテン語contraの略で「反対」を意味します。pros and consは複数形で使われる決まった言い回しで、ある事柄の良い面と悪い面を並べて検討するときの定番表現です。単数形のprosやconsだけで使うことはほとんどなく、常にセットで用いられる点も覚えておきたいポイントです。
賛成・反対という硬い響きの語源を持ちながら、実際には「一長一短だよね」というくらいの、カジュアルな会話でも使える軽さを持っています。良い面だけ、悪い面だけを語るのではなく、両方を並べて初めて見えてくる全体像を指し示す言葉だと捉えると、使い方のイメージがつかみやすくなります。ビジネスの会議から友人との雑談まで、深刻な場面でもカジュアルな場面でも違和感なく使える、懐の広い表現でもあります。
【ここがポイント!】
- 「pros and cons」の核は、良い面と悪い面を両方並べて見る姿勢
- ラテン語の賛成・反対に由来しながら、日常会話でも気軽に使える表現
- weigh the pros and consの形で「比較検討する」動作を表せる
『ビッグバン★セオリー』S11E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
育児休業中の日々がどうだったかとラージに尋ねられたハワードは、「大変だけど、やりがいもある」と答え、仕事に戻ったらどちらかが家にいた方がいいかもしれないと考え始めます。その流れで、ラージは使用人に育てられた自分自身の子ども時代を引き合いに出し、恵まれた環境にも代償があったことを語り始めます。その結論として口にする一言に、フレーズの核が詰め込まれています。
Raj: I don’t know, I was raised by servants, and look at me.
(さあ、僕は使用人に育てられたわけだけど、この僕を見てよ。)Howard: I literally can’t tell if you think that’s good or bad.
(それが良いことなのか悪いことなのか、俺には全然分からないな。)Raj: Well, on one hand, they filled my tub with scented oils and brought me honeyed sweets; on the other hand, I spent my twenties incapable of talking to women. So you know, pros and cons.
(まあ、一方では香油を満たした風呂を用意してもらって、蜂蜜菓子も持って来てもらったけど、もう一方では20代をまるごと女性と話せないまま過ごしたんだ。つまり、長所と短所ってことさ。)Howard: Here’s my dilemma: I kind of want to stay home. But Bernadette is a way better parent than I am.
(俺の悩みはこうなんだ。正直、家にいたい気持ちもあるんだけど、バーナデットの方が俺よりずっと育児が上手いんだよな。)Raj: Wait, does Bernadette want to stay home?
(待って、バーナデットは家にいたいと思ってるの?)The Big Bang Theory Season11 Episode17 (The Athenaeum Allocation)
シーン解説と心理考察
自分自身の生い立ちを振り返ったラージは、香油の風呂や蜂蜜菓子といった贅沢な記憶と、20代を通して女性と話せなかったという苦い経験を、同じ調子で並べて語ります。「つまり、長所と短所ってことさ」という締めの一言には、恵まれた環境にも必ず代償があったという、ラージなりの割り切りが表れています。
ハワードはその後、「家にいたい気持ちもあるんだけど、バーナデットの方が俺よりずっと育児が上手い」と本音の悩みを明かします。ラージが「バーナデットは家にいたいと思ってるの?」と静かに尋ね返す場面には、仕事と育児のどちらを優先すべきかという、ハワード夫妻が抱える現実的な葛藤がにじんでいます。
育児休業中の日々を「大変だけど、やりがいもある」と前向きに語っていたハワードが、その直後に自分自身の悩みを打ち明ける流れには、軽い調子の会話から本音へと少しずつ切り替わっていく自然な呼吸が感じられます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
天秤の片方にpro(賛成材料)、もう片方にcon(反対材料)を乗せて、どちらが重いかを比べているイメージを持つと記憶に残りやすくなります。proとconという短い語感も、天秤の両側に軽やかに言葉を乗せていく感覚と重なって印象に残ります。ラージが自分の生い立ちの良い面と悪い面を、同じ温度で交互に語っていた場面を思い出せば、両方を並べて初めて全体が見えてくるという、このフレーズの感覚がつかみやすくなります。
例文で覚える「pros and cons」
仕事の決断から日々の買い物まで、pros and consを3つの例文で確認していきましょう。
Let’s weigh the pros and cons before signing the contract.
(契約書に署名する前に、長所と短所を比較してみよう。)
契約や決定の前に検討する場面です。weighを添えることで、「比較して検討する」という動作がより具体的に伝わり、慎重に判断している姿勢も伝えられます。
Every job has its pros and cons, and you have to decide what matters most to you.
(どの仕事にも長所と短所があって、自分にとって何が一番大事かを決めなきゃいけない。)
転職や仕事選びについて語る場面です。どんな選択にも一長一短があるという、割り切った態度を表せます。完璧な選択肢はないと分かった上で、自分の優先順位を見極める姿勢が伝わる言い方です。
A: Should we move to a bigger city?
B: I don’t know, there are pros and cons either way.
(A:もっと大きな都市に引っ越すべきかな?)
(B:どうかな、どちらにも長所と短所があるよ。)
生活の大きな決断を相談する場面です。either wayを添えると、どちらを選んでも一長一短だという含みが出ます。
あわせて覚えたい関連表現
weigh something up
(比較検討する)
pros and consは項目を列挙する名詞的な言い方ですが、weigh something upは検討する行為そのものを表す動詞の言い方で、決断に至るまでの過程に焦点が当たります。
on the one hand… on the other hand…
(一方で〜、他方で〜)
pros and consが名詞としてまとめて要点を示すのに対し、こちらは文中で対比を説明するための構文として使われ、劇中のラージの発言でもこの構文が使われています。
the upside and the downside
(利点と欠点)
pros and consより少しカジュアルな響きで、具体的な一つの事柄の良い面・悪い面を指すことが多い言い方です。
Note|ラテン語pro/conから生まれた「賛否のリスト」
pros and consという言葉の奥には、ラテン語に由来する成り立ちと、歴史に残る決断術のエピソードが隠れています。
proはラテン語で「のために」「賛成して」を意味し、conはcontra(「に対して」「反対して」)の略です。この対をなす前置詞が英語に取り込まれ、賛成材料と反対材料をまとめて指す名詞pros and consとして定着しました。良い面と悪い面を並べて比較するという発想そのものも長い歴史を持ち、アメリカ建国の父の一人であるベンジャミン・フランクリンが、友人への手紙の中で、紙を縦に二分し、片側に賛成の理由、もう片側に反対の理由を書き出して比較するという「道徳的代数」という方法を紹介したことがよく知られています。同じ重みの項目を両側から消していき、最後に残った側で判断するという、いわば原初のpros and consリストの実践例です。
ラージが自分の生い立ちを語るときに使った「pros and cons」も、この原理そのものです。香油の風呂や蜂蜜菓子という「賛成材料」と、女性と話せなかったという「反対材料」を並べて、どちらも本当の出来事として受け止める姿勢が、この一言に表れています。フランクリンの時代から現代のカジュアルな会話まで、形は変わっても発想の骨格は同じまま受け継がれてきたと言えます。
良い面と悪い面を両方認めてこそ、本当の全体像が見えてくるのです。
まとめ|良い面と悪い面、両方を認める一言
pros and consは、ある事柄の良い面と悪い面を並べて検討するときに使う、定番の言い回しです。weigh the pros and consという形を覚えておけば、判断に迷う場面でも自分の考えを整理して伝えられます。
仕事の決断でも、日々の小さな選択でも、良い面だけに偏らず悪い面も一緒に認める姿勢を示せるのが、このフレーズの使いやすさです。白黒どちらか一方に決めつけず、両方の面を公平に並べてみる姿勢そのものが、このフレーズには込められています。自分の生い立ちを一言でまとめたラージの返しのように、どんな経験にも一長一短があると受け止められる、そんな一言です。


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