海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手が何かをごまかそうとしているのに気づいて、思わず「その手には乗らないぞ」と言いたくなった経験はありませんか。家族や親しい間柄ほど、小さなごまかしにはすぐ気づいてしまうものです。
そんな時にぴったりの「put something over on someone」を、『モダンファミリー』シーズン1第8話の後半、孫のヘイリーとの対立をめぐってグロリアがジェイをたしなめる場面から、一緒に見ていきましょう。
「put something over on someone」の意味とニュアンス
put something over on someone
意味:人をうまくだます、一杯食わせる
put something over on someoneは、誰かをだまして何かをやり過ごそうとする、あるいは相手の企みをすでに見抜いていることを伝える時に使う口語表現です。something(何か)をsomeone(誰か)の上に(over on)put(乗せる)という組み立てから、相手に気づかれないよう、こっそり何かを上乗せしてごまかそうとするイメージが浮かびます。
しばしばtry toを伴って使われ、企みそのものよりも「見抜かれている・見抜く」というやり取りに焦点が当たるのが特徴です。誰かが隠し事や言い訳でその場をしのごうとしている時、それに気づいて警告したり、釘を刺したりする場面でよく登場します。相手より一歩先を読んでいるという自信が、言葉の端々からうかがえる表現です。
似た意味を持つpull a fast oneが瞬間的でとっさのずるい行為を指すのに対し、put something over on someoneはより広く、企みを見抜く側の視点からも語られる表現です。だます側とだまされない側、どちらの立場からでも成立する懐の広さが、この表現の使い勝手の良さにつながっています。
【ここがポイント!】
- 「put something over on someone」の核は、こっそり何かを上乗せしてごまかそうとするイメージ
- try toを伴って、企みが見抜かれているというやり取りに焦点が当たる表現
- 見抜かれた側ではなく、見抜いた側の視点で使われることも多いのがコツ
『モダンファミリー』S01E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
夜、孫のヘイリーの外出をめぐって対立していたジェイに、グロリアが割って入る場面です。若い頃の自分を引き合いに出して諭すグロリアに対し、ジェイがどう応じるかに注目です。
Gloria: Why are you treating Haley like this?
(どうしてヘイリーをこんな風に扱うの?)Jay: Me? She’s the one acting like a pill.
(俺が? あの子の方が嫌な態度を取ってるんだぞ。)Gloria: You’re taking this too personally. When I was Haley’s age, I loved my grandfather, but I still wanted to go to parties and be with boys.
(あなた、これは個人的に受け止めすぎよ。私もヘイリーの年頃には祖父が大好きだったけど、それでもパーティーに行って男の子たちと過ごしたかったわ。)Jay: I know. I know. So did Claire and Mitchell. But you know what? You try to put something over on me, you’re gonna lose.
(分かってる。分かってるさ。クレアもミッチェルも同じだったよ。だがな、出し抜こうったって、そうはいかないぞ。)Modern Family Season1 Episode8 (Great Expectations)
シーン解説と心理考察
グロリアが「どうしてヘイリーをこんな風に扱うの?」と割って入ると、ジェイは「あの子の方が嫌な態度を取ってるんだぞ」とすぐさま自分を正当化します。孫との衝突を素直に認めたくないジェイの意地っ張りな一面が、短いやり取りの中にも表れています。
グロリアが自分の若い頃を引き合いに出して諭すと、ジェイは「分かってる」と一応認めながらも、「出し抜こうったって、そうはいかないぞ」と、まるで勝負を挑むような言い方に持っていきます。孫を思う気持ちを素直に出せず、つい対抗心や意地に変換してしまうところに、ジェイらしい照れ隠しが感じられる一幕です。クレアとミッチェルも同じ道を通ったと認めながら一歩も譲らない姿勢には、経験を積んだ祖父ならではの余裕もにじんでいます。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
相手に気づかれないよう、こっそり何かを上乗せしてすり抜けようとする様子と、それをすでに見抜いている側の視線を重ねてイメージしてみましょう。put something over on someoneという言葉の芯には、この二つの視線のせめぎ合いがあります。どちらの視線に立つかによって、この表現の使い方も自然と変わってきます。
ジェイが放った「出し抜こうったって、そうはいかないぞ」という一言も、相手の企みをあらかじめ見抜いておくという構図をそのまま言い表したものでした。だまそうとする側と、それを先回りして見抜く側という二つの立場を思い浮かべておくと、似た駆け引きの場面でこの表現がすっと出てくるようになります。
例文で覚える「put something over on someone」
相手の企みに気づいて釘を刺す場面で使えるput something over on someoneを、3つの例文で確認していきましょう。
Don’t try to put something over on me, I know exactly what you’re doing.
(俺をだまそうとするなよ、お前が何をしているかちゃんと分かってるからな。)
相手の企みを見抜いて釘を刺す場面です。exactlyを添えると、細部まで見抜いているという強い自信が伝わります。
He tried to put one over on his boss, but she caught him immediately.
(彼は上司をだまそうとしたが、彼女はすぐに見抜いた。)
職場でのごまかしが見抜かれる場面です。put oneのようにsomethingをoneに置き換える言い方もよく使われます。
A: He said he was sick, but I saw him at the mall.
B: Sounds like he tried to put something over on you.
(A:彼は具合が悪いって言ってたけど、モールで見かけたの。)
(B:それは君をだまそうとしたみたいだね。)
友人の嘘が発覚した話をする場面です。Sounds likeで受けると、状況から推測した自然な相槌になります。
あわせて覚えたい関連表現
pull a fast one
(素早く人を出し抜く、ずるい手を使う)
put something over on someoneとほぼ同義ですが、より瞬間的でとっさのずるい行為を指すことが多い表現です。
pull the wool over someone’s eyes
(人の目を欺く)
相手に真実を隠して騙すニュアンスが強く、「見抜かれる・見抜く」という対立構図よりも、隠す行為そのものに焦点がある表現です。
trick someone
(人をだます)
一般的な「だます」を表す動詞で、put something over on someoneよりも口語的な色合いは薄く、より幅広い場面で使われます。子どもだましのような軽い場面から、深刻な詐欺の場面まで対応できる分、状況に応じた説明を添えると誤解が減ります。
Note|「だます」を表す表現の中で、見抜く側に立つ言い方
英語には「だます」という意味を持つ表現がいくつもありますが、それぞれ誰の視点に立っているかが少しずつ異なります。
trick someoneやpull the wool over someone’s eyesは、だます側の行為そのものに焦点があり、隠す・欺くという動作が中心に描かれます。それに対してput something over on someoneは、だまそうとする側の企みと同じくらい、それに気づいて釘を刺す側の視点からもよく語られる表現です。You try to put something over on me, you’re gonna loseのように、警告や宣言の形で使われることが多いのはそのためです。家族や職場など、ある程度お互いをよく知っている関係の中で、相手の小さなごまかしに気づいた時に使われることが多く、初対面の相手に対する深刻な詐欺のようなニュアンスとは少し距離があります。日本語で言えば「その手には乗らない」「そうはいかないぞ」といった、見抜いた側の余裕を感じさせる響きに近い表現です。
ジェイがグロリアとのやり取りの中で使ったput something over on someoneも、孫のヘイリーが何か企んでも先回りして見抜いておくという、まさに見抜く側の余裕を示す一言でした。だます側とだまされない側、どちらの視点に立つ表現なのかを意識しておくと、似た言い回しとの違いが整理しやすくなります。
見抜く側の余裕を持てるかどうかで、この表現の使い心地は大きく変わってきます。
まとめ|見抜かれていることを、先に伝えておく一言
put something over on someoneは、誰かの企みに気づいて、先に釘を刺しておきたい時に使える口語表現です。
隠し事や言い訳でその場をしのごうとする相手に対して、try toを添えることで、企みそのものよりも「見抜いている」という余裕を伝えられます。相手を責め立てる強い言葉というより、軽い牽制として使える点も、日常会話に取り入れやすい理由のひとつです。
孫との対立の裏で先回りして釘を刺すジェイと、それを個人的に受け止めすぎだとたしなめるグロリアのやり取りには、意地っ張りな祖父と、それを受け止める妻という夫婦らしい呼吸が表れていました。


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