海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
久しぶりに訪れた場所で、忘れていたはずの出来事がふっとよみがえってくる、という瞬間があります。
そんなときにぴったりの「bring up memories」を、『モダンファミリー』シーズン5第19話の後半、フィルがグロリアに、ここに戻ってくると思い出がよみがえるのでは、と水を向ける場面から、一緒に見ていきましょう。
「bring up memories」の意味とニュアンス
bring up memories
意味:思い出をよみがえらせる、記憶を呼び起こす
bring up memoriesは、場所や物、匂い、会話などをきっかけにして、しまってあった記憶が浮かび上がってくることを表す表現です。bring upは「上へ持ってくる、呼び起こす」、memoriesは「記憶、思い出」で、奥にしまってあった記憶が上へ持ち上げられてくるイメージが土台にあります。
形の面で大切なのは、主語がきっかけになるものだという点です。Visiting my old school brought up memories.のように、思い出を呼び起こす側が主語に立ち、思い出そのものが目的語になります。今回のドラマの場面では、Being back here must bring up a lot of memories.と、「ここに戻ってきたこと」が主語です。
a lot ofは「たくさんの」と量を強めていて、mustは「きっと〜だろう」という推量です。合わせて、「きっとたくさんの思い出がよみがえるだろう」と、相手の気持ちを察して言う形になっています。何についての思い出かを添えたいときは、bring up memories of 〜のようにofで続けます。
思い出の中身は、うれしい記憶にも、つらい記憶にも使えます。日本語にするときは、「思い出がよみがえる」「記憶を呼び起こす」「懐かしい気持ちになる」あたりが目安です。bring upには「話題を持ち出す」という意味もありますが、memoriesと組んだときは「よみがえらせる」の意味で使われている、と押さえておくのがコツです。
【ここがポイント!】
- 「bring up memories」の核は、しまってあった記憶がきっかけをもとに上へ浮かび上がってくるイメージ
- 主語は思い出を呼び起こすきっかけになる場所や物で、思い出が目的語になる形
- mustと組み合わせると、相手の気持ちを察して「きっと〜だろう」と水を向ける言い方になるのがコツ
『モダンファミリー』S05E19のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
フィルとグロリアが、忙しかった一日を振り返って言葉を交わす場面です。フィルがグロリアの気持ちを尋ねるところに、bring up a lot of memoriesが出てきます。
Phil: What a day, huh? Being back here must bring up a lot of memories.
(いやあ、大変な一日だったな。ここに戻ってくると、いろんな思い出がよみがえるんじゃないか?)Gloria: Oh, yeah.
(ええ、そうなのよ。)Phil: Maybe even some emotions.
(気持ちのほうも、いろいろと。)Gloria: Yeah. It feels weird.
(ええ。なんだか変な感じ。)Phil: No, weird’s an adjective, not an emotion, but go on.
(いや、「変」は形容詞であって気持ちじゃないよ。でも続けて。)Gloria: Well, it’s just that my life now is so different than before– so much easier.
(そうね、ただ、今の私の暮らしは前とすごく違うのよ。ずっと楽になって。)Modern Family Season5 Episode19 (A Hard Jay’s Night)
シーン解説と心理考察
フィルは「What a day, huh?」と、まず一日の大変さを共有する言葉から入ります。そのうえで、ここに戻ってくるといろんな思い出がよみがえるだろうと、グロリアの心の内へ話題を進めます。相手が話しやすいように、まず自分から水を向ける切り出し方です。
グロリアが「ええ、そうなのよ」と応じると、フィルは「気持ちのほうも、いろいろと」と続け、思い出だけでなく感情にも話を広げます。グロリアが「なんだか変な感じ」と答えると、フィルは「『変』は形容詞であって気持ちじゃない」と指摘しつつ、「でも続けて」と促します。言葉の種類を茶化す軽口と、話を聞く姿勢が同じ一言の中に並んでいるところに、フィルの陽気な話し方がにじみます。
促されたグロリアは、今の暮らしが以前とはすごく違い、ずっと楽になったと語ります。「変な感じ」という漠然とした答えから、暮らしの変化という具体的な内容へ、少しずつ言葉が進んでいく流れです。フィルの問いかけが、グロリアの気持ちを引き出す役割を果たしています。
ここでのbring up memoriesは、場所が過去の記憶を思い起こさせるという意味で働いています。「思い出」「気持ち」「変な感じ」「暮らしの違い」と、会話が一段ずつ深まる入り口が、この一言の推量だったことが見て取れます。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
bring up(上へ持ってくる)を、箱の底にしまってあった記憶が、上へ持ち上げられてくる場面に重ねてみましょう。ふだんは奥にしまってあった思い出が、懐かしい場所や音楽をきっかけに、表に出てくるイメージです。
フィルの場合、箱の蓋を開けるきっかけになるのが「ここに戻ってくること」です。蓋の下にどんな思い出がしまってあるのかを、mustという推量で軽くのぞきに行くように尋ねています。相手の思い出に手を入れるというより、相手が自分で蓋を開けやすいよう、そっと蓋を持ち上げる言い方です。
覚えるときは、「きっかけ」と「思い出」の2つをセットで思い浮かべるのが近道です。きっかけになるものを主語に置き、その後ろにbring up memories of 〜と続けると、使える形になります。古い写真、懐かしい歌、久しぶりの場所と、身近な「蓋を開けるきっかけ」を当てはめて練習してみてください。
例文で覚える「bring up memories」
場所や物をきっかけにした場面で使えるbring up memoriesを、3つの例文で確認していきましょう。
Visiting my old school really brought up a lot of memories.
(母校を訪ねたら、いろんな思い出がよみがえってきました。)
久しぶりに懐かしい場所に行った話をする場面です。visiting my old schoolと、きっかけを主語に立てた基本の形になっています。
A: Why are you looking at those old photos?
B: They bring up so many memories of our school days.
(A:なんでその古い写真を見てるの?)
(B:学生の頃の思い出がたくさんよみがえってくるの。)
家族や友人の写真を見ている場面です。memories of our school daysと、何の思い出なのかをofで添えています。
Walking through the old office brought up memories of our first big project.
(昔のオフィスを歩いたら、最初の大きなプロジェクトの思い出がよみがえりました。)
仕事の思い出を振り返るビジネスの場面です。walking through the old officeを主語にして、きっかけと思い出をつなげています。
あわせて覚えたい関連表現
bring back memories
(思い出を呼び戻す)
bring back memoriesは、bring up memoriesとほぼ同じ場面で使えます。bringのあとに置かれるのが、backなら「戻ってくる」方向、upなら「浮かび上がってくる」方向に目を向けた言い方になります。
remind someone of
(人に〜を思い出させる)
remind someone ofは、人を目的語にして「〜を思い出させる」と言う形です。bring up memoriesは、思い出そのものを主役にして「思い出が浮かび上がる」と言う形になる点が違います。
take someone back
(人を過去に連れ戻す、懐かしい気持ちにさせる)
take someone backは、「あの頃に戻った気分になる」という時間の移動を強調します。bring up memoriesは、記憶が浮かぶことそのものに重点があります。
Note|思い出を呼ぶ3つの言い方、bring up・bring back・remind
思い出が浮かぶ場面を表す英語には、主役になる言葉が異なる言い方がいくつかあります。ここでは、bring up memories、bring back memories、remind someone ofの3つを、辞書的な意味の範囲で整理します。
まず、bring up memoriesは、きっかけになるものを主語にして、思い出が浮かび上がってくる様子を述べます。That song brings up memories of our road trip.と言えば、その歌が、旅行の思い出を浮かび上がらせるという言い方になります。次に、bring back memoriesは、同じくきっかけを主語にして、思い出が戻ってくる様子を述べます。That song brings back memories of our road trip.と言い換えても、意味の中心は同じです。そして、remind someone ofは、人を目的語にします。That song reminds me of our road trip.と言えば、「その歌は私に旅行を思い出させる」と、思い出す人が文の中に顔を出します。
同じ「思い出す」でも、きっかけと思い出だけで述べたいのか、思い出す人まで含めて述べたいのかで、選ぶ形が変わります。フィルはグロリアに向かって、ここに戻ってくることを主語にして「思い出がよみがえるんじゃないか」と水を向けていたため、きっかけを主役にするbring up memoriesがよく合っていました。もしフィルが「グロリアはここを見て何かを思い出す?」と人を主役にして尋ねたいなら、remindの出番になります。
きっかけを主語にするか、人を目的語にするかを意識すると、3つの言い方の違いが見えやすくなります。
まとめ|きっかけの蓋を、そっと持ち上げる言い方
bring up memoriesは、場所や物、匂い、会話などをきっかけに、思い出がよみがえることを表す表現です。きっかけになるものを主語にして、bring up a lot of memoriesやbring up memories of 〜の形で使えます。
久しぶりの場所を訪れたとき、古い写真を見たとき、懐かしい歌を聞いたときなど、思い出が動く場面で幅広く使えます。mustと組み合わせれば、相手の気持ちを察して水を向ける言い方にもなります。bring back memoriesやremind someone ofとの違いも押さえておくと、思い出す人を主役にするかどうかに合わせて言い分けられます。
フィルの一言が、グロリアの気持ちを引き出す入り口になっていたように、この表現は会話の間口を広げる働きも持っています。相手の思い出に寄り添う一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


コメント