海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
他人の暮らしが自分のものよりよく見えて、つい見比べてしまう。そんな瞬間は、日常のあちこちに転がっています。
そんな気持ちを短く言い表す「the grass is greener」を、『モダンファミリー』シーズン10第4話の中盤、ミッチェルの同僚トレントの家での昼食で、トレントの夫キーランと交わす軽口の応酬から、一緒に見ていきましょう。
「the grass is greener」の意味とニュアンス
the grass is greener
意味:隣の芝生は青い(他人のものや別の環境のほうがよく見える)
the grass is greenerは、他人のものや別の環境のほうが、自分のものよりよく見えることを表す成句です。grassは「芝生」、greenerは「緑」を表すgreenの比較級で、文字どおりには「芝生のほうがより緑だ」という意味になります。日本語の「隣の芝生は青い」に当たる言い方で、日本語訳の「青い」は、芝の緑を指す言い方です。
完全な形はthe grass is always greener on the other side (of the fence)で、「柵の向こう側の芝生は、いつもこちら側より青々と見える」という文です。会話ではこのうちthe grass is greenerだけを短く言う形も使われます。短くする分、何と何を比べているのかは文に書かれず、聞き手が前後の流れから補うことになります。
比べた相手のほうがよく見えるという含みには、「実際にはそれほど違わないかもしれない」という見方も重なります。羨望や、いまの環境への不満を軽く言い表すときに向いた表現です。自分の暮らしに満足しきれないとき、つい他人の暮らしと比べてしまう心の動きを、短く切り取る言い方になります。
【ここがポイント!】
- 「the grass is greener」の核は、柵の向こうの芝生のほうが青々と見えるという見え方のイメージ
- 短い形では比べる中身が省かれるので、前後の会話から補って読む表現
- 「羨ましい」とも「実際は同じかも」とも読めるため、話し手の口調と文脈で受け取り方が決まる
『モダンファミリー』S10E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ミッチェルとキャメロンが、ミッチェルの同僚トレントの家で昼食をとる場面です。ミッチェルが「お宅、本当に素敵ですね」と口にすると、キャメロンがお金の使い道を挙げて軽口を言い、トレントの夫キーランがthe grass is greenerで相づちを打ちます。ミッチェルがその芝生のたとえを自分たちの側に返す、最後の一言まで続く掛け合いに注目です。
Mitchell: Your house is so beautiful, with such nice things.
(お宅、本当に素敵ですね。いい物がたくさんあって。)Cameron: Well, they don’t have to spend their money on orthodontia, ballet lessons, and college funds.
(まあ、矯正歯科にもバレエのレッスンにも大学の積立金にも、お金を使わなくて済むからね。)Kieran: Yeah. The grass is greener.
(ああ。隣の芝生は青いってやつだね。)Mitchell: Your grass is greener. We can’t seem to get Cal to pee indoors.
(そっちの芝生のほうが青いよ。うちはカルに家の中でおしっこをさせることが、どうしてもできなくてね。)Modern Family Season10 Episode4 (Torn Between Two Lovers)
シーン解説と心理考察
ミッチェルのほめ言葉から始まって、キャメロンの軽口、キーランの成句、ミッチェルの返しと、短い台詞が順に受け渡されていく掛け合いです。ほめ言葉に対してキャメロンは、お金の使い道を並べるという形で話を返していて、会話のテンポを軽くしています。
その流れを受けたキーランのYeah. The grass is greener.は、前の発言に同意する一言のあとに成句を置いた形です。何と何を比べているのかはことばにされていません。聞き手は、直前の流れから比べる中身を自分で補うことになります。短い形だからこそ、一言で会話に乗れる余地が生まれています。
ミッチェルはその成句を受け取り、Your grass is greener.と、同じ言い回しを相手の側に向けて返します。「芝生」のたとえをそのまま打ち返すところに、掛け合いのリズムがよく表れています。さらに「家の中でおしっこをさせることがどうしてもできない」と続けていて、成句の比喩だった芝生を、自分たちの家の文字どおりの芝生の話に引き戻しています。誰が誰をうらやんでいるのかは言葉にされないまま、軽口の応酬が楽しめる場面です。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
低い柵をはさんで、隣の家の庭を眺めている場面を頭に描いてみてください。こちらの庭の芝生より、柵の向こうの芝生のほうが青々と見える。この見え方のずれが、the grass is greenerの絵です。
作中のキーランが言ったのも、この絵の短縮版でした。柵の向こうに視線を向けるように、話題の相手の側が良く見える、とひとこと添えています。ミッチェルが「そっちの芝生のほうが青い」と言い返したのは、同じ柵を反対側から眺め直したようなものです。しかもその直後には、比喩だった芝生を本物の芝生の話に戻していました。見る側が入れ替わると、青い側も入れ替わる。そう覚えておくと、この表現の向きが自然に頭に残ります。
例文で覚える「the grass is greener」
the grass is greenerは、羨望にも、冷静な指摘にも使えます。海外暮らし、転職、互いの生活と、3つの場面の例文で確かめます。
Everyone says the grass is greener abroad, but I miss my hometown.
(外国のほうがよく見えるとみんな言うけど、私は地元が恋しいよ。)
海外暮らしへの憧れについて話す場面です。abroadを添えると、比べる場所が外国だと分かります。
He keeps changing jobs because he thinks the grass is greener somewhere else.
(どこか別の場所のほうがよく見えるからと、彼は転職を繰り返している。)
転職を繰り返す人について話す場面です。somewhere elseが、比べる先を特定しない形になっています。
A: I envy your quiet life in the countryside.
B: Funny, I envy your life in the city. The grass is always greener.
(A:田舎の静かな暮らしがうらやましいよ。)
(B:おもしろいね、こっちは都会の暮らしがうらやましいよ。隣の芝生は青いってことだね。)
互いの暮らしをうらやむ会話です。alwaysを入れると、いつでもそう見えてしまうという意味が強まります。
あわせて覚えたい関連表現
the grass is always greener on the other side of the fence
(柵の向こうの芝生はいつも青い)
完全な形の成句です。the grass is greenerは、この形を省略して、会話の流れの中で短く言うときに使います。
green with envy
(うらやましくてたまらない)
green with envyは、うらやむ気持ちそのものを表します。the grass is greenerは、他人のほうがよく見えるという見え方を述べる表現で、気持ちの強さを直接は示しません。
keep up with the Joneses
(隣人に負けまいと張り合う)
keep up with the Jonesesは、周りと張り合って同じ水準を保とうとする行動を指します。the grass is greenerは、他人のほうがよく見えるという感じ方を指します。
Note|芝生という具体物から、見え方の比較へ広がる比喩
the grass is greenerは、「芝生」という具体的な物から、他人の環境の見え方という比喩へ広がる表現です。文字どおりの意味と比喩の関係を見ておきます。
文字どおりの意味は、芝生の色の比較です。My neighbor’s lawn is greener than mine.なら、隣家の芝は私のより緑が濃い、というそのままの事実を述べる文になります。ここでgreenerは色の比較級で、thanのあとに比べる相手が来ます。比喩として使うと、芝生は相手の環境や持ち物に、緑の濃さは魅力や良さに置き換わります。The grass is greener at that company.なら、芝の色の話ではなく、あの会社の待遇や環境のほうがよく見える、という意味になります。thanのあとの比べる相手を言わなくてもよいのは、前後の会話から補えるからです。
作中のミッチェルは、キーランの比喩を受けて、Your grass is greener.と返しました。比べる相手が自分の側から相手の側へ入れ替わっただけで、文の形は同じです。その直後の一言で、比喩だった芝生を文字どおりの芝生の話に戻しています。
具体物の話か、見え方の話か。ここは文脈で切り替わります。
まとめ|芝生の掛け合いから学ぶこと
the grass is greenerは、他人のものや別の環境のほうが、自分のものよりよく見えることを表す成句です。
短い形では、何と何を比べているのかが文に出ないので、会話の流れを手がかりに読み取ります。海外暮らし、転職、互いの暮らしと、使える場面は幅広く、前に「always」や後ろに「on the other side」を足せば、見え方のずれをはっきり伝えられます。
ミッチェルのように、相手の言ったたとえをそのまま打ち返す使い方もできます。ミッチェルとキーランが芝生という一つのたとえを、軽口の中で行き来させていた場面でした。


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