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周りから「それは受けたほうがいいよ」と強く背中を押されても、自分では見送ると決めていることがあります。そんな場面に立ち会った経験はありませんか。
そうした場面で使える「pass up」を、『モダンファミリー』シーズン10第16話の前半、アレックスがクレアに面接を受けるよう勧める会話の中から、一緒に見ていきましょう。
「pass up」の意味とニュアンス
pass up
意味:(機会や申し出などを)見送る、あえて逃す
pass upは、目の前に差し出された機会や申し出を、自分の判断で取らずにおく言い方です。passは「通り過ぎる」、upは「上へ」を表す語で、手の届くところにあるものを手に取らず、そのまま通り過ぎさせてしまう絵が根底にあります。
目的語には、opportunity、offer、chanceのように、受ければ得になりそうなものが置かれます。そのため、断ったという事実だけでなく、「もったいない」という響きが一緒に伝わります。話し手が第三者の話として使えば、せっかくの機会を手放した、という惜しむ気持ちがにじみます。
形の面では、pass up an opportunityのように、upのあとに名詞を置きます。目的語が代名詞になる場合は、pass it upのように、itをpassとupの間に入れます。また、I don’t want you to pass up …のように、〈want + 人 + to不定詞〉の形に組み込めば、「人に見送ってほしくない」という願いを表せます。
作中のアレックスは、まさにこの形を使っています。見送る側はクレアで、アレックスはその行動を止めたい立場から、この表現を選んでいます。
【ここがポイント!】
- 「pass up」の核は、目の前の機会を自分の判断で見送るイメージ
- opportunity、offer、chanceのような「得になりそうなもの」を目的語に取り、「もったいない」という響きを伴う
- 代名詞は pass it up の語順。〈want + 人 + to不定詞〉に入れて「見送ってほしくない」と言うこともできる
『モダンファミリー』S10E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
アレックスが、母のクレアに面接を受けるよう強く勧める会話です。クレアは「自分はすでに席に着いている」と返し、軽口の応酬が続いたところで、アレックスが勧める理由を打ち明けます。
Alex: Mom, you need to take that interview. Now that they’re purging male creeps from executive positions, strong women are finally getting their seat at the table.
(ママ、あの面接は受けるべきよ。今は経営幹部の座から男のいやなやつらが一掃されてるんだから、強い女性がやっと席に着けるのよ。)Claire: Honey, I already have a seat at the table. In fact, at the head of the table.
(ねえ、私はもう席に着いてるわよ。それどころか、いちばん上座にね。)Alex: You mean when Grandpa’s not there?
(おじいちゃんがいない時は、ってこと?)Claire: Tables have two heads.
(テーブルには「頭」が二つあるのよ。)Alex: I’m only bringing out my trademark hard truths because I don’t want you to pass up an amazing opportunity in deference to the patriarchy.
(私が持ち前の耳の痛い真実を持ち出すのは、家父長制に遠慮して、ママに素晴らしいチャンスを逃してほしくないからよ。)Claire: Honey, I have a lot of amazing opportunities at my current job.
(ねえ、今の仕事にも素晴らしいチャンスはたくさんあるわ。)Modern Family Season10 Episode16 (Red Alert)
シーン解説と心理考察
面接を受けるべきだ、とアレックスが切り出すところから、このやり取りは始まります。「強い女性がやっと席に着ける」という理由づけは、娘が母の背中を押す言葉として、まっすぐに響きます。
クレアは「私はもう席に着いている、それも上座に」と返します。アレックスは「おじいちゃんがいない時は?」と軽く突っ込み、クレアは「テーブルには頭が二つある」と言い返します。どちらも引き下がらず、短い言葉でやり合う様子から、母娘の距離の近さが見えてきます。
そのうえで出てくるのが、pass upを含む一言です。アレックスは自分の言い方を「持ち前の耳の痛い真実」と呼んでいて、厳しいことを言う自覚がうかがえます。そのうえで、その言い方を選ぶ理由として、クレアに素晴らしい機会を見送ってほしくないという気持ちを挙げています。見送る側の主語はクレアで、アレックスは「ママに見送ってほしくない」と、相手を主語にして願いを伝えています。
クレアの返事は、アレックスの言葉の使い方に注目すると面白くなります。アレックスが使ったamazing opportunityを、クレアはそのまま自分の今の仕事に当てはめて返しています。機会を見送る話にはならず、すでに手元にある機会を挙げることで、勧めをやんわりと受け流す返しです。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
回転寿司のレーンを流れてくる皿を思い浮かべてみましょう。大好物がのった皿が目の前に来ているのに、手を伸ばさず、そのまま流れていくのを見送ってしまうのです。この「取らずに通り過ぎさせる」感覚が、pass upの芯にあります。
アレックスの「素晴らしい機会を逃してほしくない」は、目の前を流れていく大好物の皿を指さして、「取らなくていいの?」と声をかけているような一言です。皿の絵と一緒に覚えておくと、目の前の機会に対する「取る、取らない」の話題で、すっと言葉が浮かびます。
例文で覚える「pass up」
機会、申し出、誘いと、見送る対象を変えながら、3つの例文で確かめていきましょう。
I couldn’t pass up a chance to work with such a great team.
(こんなにすばらしいチームと働ける機会は、見送れなかった。)
転職の理由を説明する場面です。couldn’tを添えると、「見送るという選択肢はなかった」という強い気持ちが伝わります。
A: Are you coming to the concert?
B: I can’t pass up free tickets, so yes!
(A:コンサートには来る?)
(B:無料チケットを見送るなんてできないから、行くよ!)
誘いに乗る気持ちを伝える往復会話です。can’tとの組み合わせで、「見送れない=行く」という結論につながっています。
She passed up a promotion to spend more time with her family.
(彼女は家族との時間を増やすため、昇進の話を見送った。)
昇進を断った人の事情を語る場面です。passed upと過去形にして、to不定詞で見送った理由を添えています。
あわせて覚えたい関連表現
turn down
(〜を断る)
相手からの申し出や依頼を、はっきり断る言い方です。turn downには断る相手の存在が前提にあるのに対し、pass upは相手がいなくても、得になりそうな機会を取らずにおく意味で使えます。
miss out on
(〜を逃す)
気づかなかった、間に合わなかったなど、意図せず逃した場合にも使えます。pass upは自分の判断で見送る響きが強い点が違います。
pass on
(〜を見送る、遠慮する)
誘いや買い物など、気軽な話題にも使えるくだけた言い方です。pass upは、惜しい機会を目的語に取る響きが強くなります。
Note|「見送る」と「逃す」の間で揺れる、pass upの訳し分け
pass upを日本語にするとき、候補になるのは「見送る」「逃す」「棒に振る」の3つです。それぞれ守備範囲が違うため、場面に合わせて選ぶと意味が正確に伝わります。
「見送る」は、自分の意志で今回は取らない、という選択を表します。「逃す」は、結果として手に入らなかった、という事実を表し、本人の意志は問いません。「棒に振る」は、せっかくの機会や努力を無駄にした、という損失に重点があります。pass upは、自分で選んで取らない点が中心なので、いちばん近いのは「見送る」です。
アレックスの一言も、「ママに素晴らしいチャンスを見送ってほしくない」と訳せば、クレアが自分の判断で決める側にいることが伝わります。「逃してほしくない」と訳しても自然ですが、その場合は、クレアが気づかないまま手放してしまうような響きが少し混ざります。pass upが持つ「自分の判断で」という部分を訳に残したいときは、「みすみす逃す」のように言葉を足す方法もあります。
訳語は文脈で選ぶものですが、「誰の意志で取らないのか」を基準にすると、3つの日本語のどれがpass upに合うかを選びやすくなります。
まとめ|取る、取らないを決めるのは本人の判断
pass upは、機会や申し出を自分の判断で取らずにおく表現です。opportunityやofferのように得になりそうなものが目的語に来るため、「もったいない」という響きが一緒に伝わります。
代名詞はpass it upの語順になり、〈want + 人 + to不定詞〉に入れれば、「見送ってほしくない」という願いも言えます。turn downやmiss out onと並べると、断る相手がいるか、意図して見送るのか、という違いがはっきりします。
この場面では、勧める娘と、すでに手元にある機会を挙げて受け流す母が、軽口を交えながら言葉を交わしていました。見送るかどうかは本人が決めることだという前提が、会話の底に流れています。


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