海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン11第8話では、ディーディーの夫ジェリーが、ダンフィー家にあいさつに寄りたいと言ってきます。その話をフィルから聞いたクレアの返事は、理由も添えないほんのひと言でした。
英語には、頼みや言い分を短く突っぱねる言い方がいくつもあります。No way と Tough の違いを軸に、断る場面から一転して相手を急いで呼び寄せる場面まで、クレアとフィルの会話を追っていきます。
「No way」で申し出そのものを断る
フィルがクレアに、ジェリーからの話を伝えます。蝶の渡りを追ってメキシコへ向かう途中で、明日あいさつに寄りたいというのです。
Phil: Jerry is following the butterfly migration to Mexico and wants to stop by tomorrow to say hi.
(ジェリーが蝶の渡りを追ってメキシコに行くんだって。明日ちょっと寄ってあいさつしたいってさ。)
Claire: No way.
(絶対いや。)
Claire: Make up an excuse.
(何か言い訳を考えて。)
Phil: I’m a terrible liar.
(俺、うそが下手なんだよ。)
Claire: Tough.
(お気の毒さま。)
Modern Family Season11 Episode8 (Tree’s a Crowd)
stop by は「ちょっと立ち寄る」を表す句動詞で、to say hi と組み合わせると「顔を見せに寄る」という気軽な訪問の言い方になります。長居をするつもりはない、という軽さを含む表現です。
クレアの No way. は、提案や頼みそのものを即座にはねつける一言です。「とんでもない」「絶対に嫌だ」に近く、理由を添えずに使えるぶん、響きはかなり強めです。驚きを表す「まさか!」の意味でも使われますが、この場面では申し出を断る用法です。後に何も続けないため、相手に交渉の余地を残さない言い方になります。親しい相手との会話ではよく耳にする一方、仕事の相手には I’m afraid I can’t のような柔らかい断り方が選ばれることが多いでしょう。
続く Make up an excuse. の make up は「作り上げる」で、make up an excuse は「言い訳をこしらえる」です。断る理由を自分で考えるのではなく、伝える役のフィルに任せているところに、クレアの断り方の勢いが表れています。
「Tough」で相手の言い分を退ける
フィルは I’m a terrible liar. と弱音をこぼします。terrible に人を表す名詞を続けると「〜がひどく下手だ」という意味になり、a terrible cook(料理が下手な人)のようにも使えます。
これに対するクレアの Tough. は、形容詞の tough が間投詞のように使われた形で、「それはお気の毒、でもやってもらうから」という突き放しの返事です。Too bad. に近い響きで、相手の事情や不満を受け止めずに退けるときに使われます。
| 表現 | 突っぱねる対象 | この場面での使われ方 |
|---|---|---|
| No way. | 提案・頼みそのもの | ジェリーの訪問を断る |
| Tough. | 相手の事情・不満 | 「うそが下手」という言い分を退ける |
どちらも短く強い言葉ですが、No way が申し出に対する「ノー」なのに対し、Tough は相手の言い分に対する「知ったことではない」です。どちらも相手を突き放す響きがあるため、冗談の通じる間柄で使われる言葉と言えます。
結局フィルは、ジェリーに向かって口実を話し始めます。
Phil: Honestly, Jerry, it’s that, uh Claire and I have have hit a rough patch.
(正直に言うとさ、ジェリー、その、クレアと俺、ちょっと、ちょっと今うまくいってなくてさ。)
Modern Family Season11 Episode8 (Tree’s a Crowd)
hit a rough patch は「困難な時期に差しかかる」という言い方で、人間関係や仕事、景気などがうまくいかない時期に使われます。Honestly と切り出しながら、中身は口実です。このあとフィル自身が話を打ち消すことから、作り話だったと分かります。
一転して呼び寄せる「Invite him here.」
ところが、フィルが話している途中で、クレアが方針を変えます。
Claire: Invite him here.
(ここに呼んで。)
Phil: What?
(え?)
Claire: Just get him here as fast as you can.
(とにかく、できるだけ早く来てもらって。)
Claire: Come on.
(ほら。)
Phil: Uh, actually, Jerry, everything’s fine.
(あー、実はさ、ジェリー、何も問題ないんだ。)
Modern Family Season11 Episode8 (Tree’s a Crowd)
Invite him here. は短い命令形で、さっきの No way とは正反対の指示です。get him here は「get + 人 + 場所」で「人をそこへ来させる」を表し、as fast as you can で急ぐ気持ちが加わります。Come on. はここでは「ほら、早く」と相手をせかしています。励ますときやあきれたときにも使われる多義的な言葉で、どの意味になるかは場面と言い方で決まります。
フィルの actually は、それまで話していた内容を打ち消して訂正するときの前置きです。everything’s fine と続けて、さっき口にした口実を引っ込めています。前言を取り消したいときに、Actually, … と切り出す形は日常会話でもそのまま使えます。
このあと、ジェリーもファラーもさびしがっているので二人を引き合わせればいい、という狙いが明かされます。ファラーはディランの母で、双子に会いに来たまま家に滞在しています。断るつもりだった来客を、一転して急いで呼び寄せる流れの中で、短い命令形が続けざまに使われる場面です。
まとめ|断る一言と退ける一言
No way は提案そのものを断る一言、Tough は相手の事情や不満を退ける一言です。同じ短い返事でも、何を突っぱねているのかに目を向けると、使い分けがはっきり見えてきます。
クレアのひと言ごとに方向が変わるフィルの返事を観ながら、短い返事の強さを聞き比べるのも、この回の楽しみ方のひとつです。
この回のほかのコラムでは、思いやりをめぐる言い返し方や、泊まりに来た家族や親戚とのやりとりも取り上げています。


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