海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン11第10話では、アレックスが暮らす高級レジデンスに家族が次々と姿を見せます。そこでジェイの相手をするのが、コンシェルジュのヒギンズです。
何かを頼んだあと、相手に「手間をかけて悪いね」と気をつかわれたら、英語ではどう返せばよいのでしょうか。ヒギンズとジェイのやりとりから、頼む側の気づかいと、それを打ち消す返しを見ていきます。
「You wouldn’t mind?」と遠慮されたら
お菓子の名前をめぐる行き違いのあと、ヒギンズはジェイにこう申し出ます。
Higgins: A thousand apologies.
(重ね重ね、申し訳ございません。)
Higgins: I will track some down for you straight away.
(すぐにお探ししてまいります。)
Modern Family Season11 Episode10 (The Prescott)
A thousand apologies. は直訳すると「千の謝罪」で、かなりかしこまった、少し大げさな詫びとして使われます。ふつうの I’m so sorry. よりも芝居がかった響きがあり、ヒギンズの丁寧すぎる接客ぶりがこの一言にも表れています。track ~ down は「〜を探し出す」、straight away は「すぐに」を表し、詫びたその場ですぐ動くと申し出る形になっています。
この申し出に、ジェイは次のように返します。
Jay: You wouldn’t mind?
(いいのか?)
Higgins: Mind? Please.
(お手間かと? とんでもない。)
Higgins: There is no greater joy than fetching something I’ve never heard of for someone I’ve only just met.
(存じ上げない品を、お会いしたばかりの方のためにお持ちする。これにまさる喜びはございません。)
Modern Family Season11 Episode10 (The Prescott)
You wouldn’t mind? は、平叙文の語順のまま語尾を上げて「本当にかまわないの?」と確かめる問いかけです。頼みごとを切り出す Would you mind ~? と違い、相手から申し出てくれたことに対して、負担にならないかを念のため確かめる働きをしています。
ヒギンズの Mind? Please. は、相手の言葉の mind をそのまま聞き返し、Please. で「やめてください、そんなこと」と打ち消す組み立てです。ここでの Please. は頼みではなく、「とんでもない」に近い使い方になります。
「There is no greater joy than ~」で快く引き受ける
ヒギンズはさらに、There is no greater joy than ~ing と続けています。「〜することほど大きな喜びはない」という意味で、頼みを引き受けるのがうれしくてたまらない、という気持ちを強く押し出す一文です。似た形に Nothing would make me happier.(これ以上うれしいことはない)などもあり、どれも比べる対象のない最上の喜びとして表す組み立てです。
ただし、ヒギンズの文には「聞いたこともない物を、会ったばかりの人のために」という言い足しが付いています。ふつうなら面倒に感じそうな条件を並べたうえで「これ以上の喜びはない」と言い切るため、接客の言葉としてもかなり大げさに響きます。この誇張がやりとりのおかしみを生んでいると読み取れます。
日常の会話で同じ気持ちを伝えるなら、もう少し控えめな言い方が使いやすいと言えます。
| 返し方 | ニュアンス |
|---|---|
| Not at all. | 「全然かまいません」。もっとも基本の打ち消し |
| It’s no trouble at all. | 「まったく手間ではありません」 |
| It’s my pleasure. | 「喜んで」。丁寧で、接客でも使われる |
| Happy to help. | 「お役に立ててうれしい」。気軽な響き |
相手の You wouldn’t mind? には、まず否定で気兼ねを消し、そのあとに「うれしい」「喜んで」を添えると、ヒギンズの返しと同じ流れになります。
「I hope it wasn’t too much trouble.」と「On the contrary.」
後の場面で、ヒギンズは頼まれていたお菓子を実際に届けます。今度はジェイが、手間をかけさせたことを気づかいます。
Higgins: Your Sugar Babies, sir.
(シュガーベイビーズでございます。)
Jay: I hope it wasn’t too much trouble.
(手間をかけさせてなきゃいいんだが。)
Higgins: On the contrary.
(むしろ、その逆でございます。)
Modern Family Season11 Episode10 (The Prescott)
I hope it wasn’t too much trouble. は、済んだことについて「大変ではなかったならいいけれど」と気づかう一文です。申し出を受ける前の You wouldn’t mind? が先の負担を確かめるのに対し、こちらは過去形の wasn’t で、終わった手間をねぎらう形になっています。同じ気づかいでも、申し出を受ける前と届けてもらった後で時制が変わる点が分かります。
ヒギンズの On the contrary. は「それどころか」「むしろ反対だ」という意味です。相手の「手間だったのでは」という見方をそのまま否定し、「迷惑どころか、むしろ楽しかった」という方向へ話を返します。少しあらたまった響きがあり、会話の中で相手の思い込みをきっぱり打ち消すときに使われます。
たとえば I thought it would be a hassle for you.(面倒だったでしょう)に On the contrary, I enjoyed it.(むしろ楽しかったよ)と続ければ、日常でもそのまま使える返しになります。
ジェイは二度とも相手の負担を口にし、ヒギンズは二度ともそれを打ち消しています。申し出の場面と届けた場面で、気づかいとそれを退ける返事の組み合わせが形を変えて繰り返される構成です。
まとめ|気兼ねを打ち消す英語
You wouldn’t mind? や I hope it wasn’t too much trouble. と気をつかわれたら、Mind? Please. や On the contrary. のように、まず相手の気兼ねを打ち消す返しが使えます。頼む前と後で変わる時制にも注目すると、使い分けがつかみやすくなります。
ヒギンズの丁寧すぎるほどの返しを聞きながら、次回も『モダンファミリー』と一緒に英語を学んでいきましょう。
同じ回のほかのコラムでは、ネット上の言い争いや、高級レジデンスの設備と料金を取り上げています。


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