投資家に事業を売り込む、アメリカの起業ピッチの文化と英語|『モダンファミリー』S11E06で学ぶ英会話

『Modern Family』コラム: 投資家に事業を売り込む、アメリカの起業ピッチの文化と英語|『モダンファミリー』S11E06で学ぶ英会話

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

『モダンファミリー』シーズン11第6話では、ルークが相棒のスクーターと考えた事業を、自分の両親の前で売り込みます。家族を投資家に見立てたような場面には、起業の世界でよく耳にする言葉が並びます。

アメリカの起業の話題では、ピッチやベンチャーキャピタルといった言葉がよく登場すると言われます。劇中の売り込みを手がかりに、その文化と英語をたどっていきます。

目次

「pitch」は困りごとから始まる売り込み

ルークの売り込みは、自分の体験から始まります。

Luke: Well, I had to go to three different doctors, and every one of them made me fill out the same forms.
(3人のお医者さんにかかったんだけど、全員に同じ書類を書かされたんだ。)
Luke: Introducing FormFiller Med, a secure encrypted mobile app that transfers your medical and insurance info to your doctor’s office with a tap of your phone.
(ご紹介します。安全に暗号化されたモバイルアプリで、医療と保険の情報をスマホのタップひとつで診療所に送れます。)
Luke: No more filling out the same boring forms over and over again.
(同じ退屈な書類を何度も書く必要は、もうありません。)
Modern Family Season11 Episode6 (A Game of Chicken)

起業家が投資家などに向けて、短い時間で事業の魅力を伝える説明を、英語では pitch と呼ぶことが多いです。動詞としても pitch an idea(アイデアを売り込む)のように使われます。エレベーターに乗っている間ほどの短さで要点を伝える「エレベーターピッチ」という言い方もあります。

ピッチの組み立てとしては、まず誰もが感じている困りごとを示し、次にそれを解決する製品やサービスを紹介する流れが、一般的によく挙げられます。ルークの話もこの順番どおりで、同じ書類を何度も書かされたという身近な不満を示してから、アプリを紹介しています。

Introducing ~ は「〜をご紹介します」と製品名を発表するときの決まった言い出しで、発表会のような場面でも耳にすることがあります。No more ~ing は「もう〜しなくていい」と、製品によってなくなる手間を一言でまとめる言い方です。不満と解決を短い文で並べると、聞き手の頭に製品の価値が残りやすくなると言われています。

「venture capitalist」と「IPO」投資する側の言葉

ルークの相棒として現れたスクーターは、自分の経歴をこう説明します。

Scooter: I’m a venture capitalist.
(私はベンチャーキャピタリストです。)
Scooter: I’ve invested in 22 companies over the last 30 years and personally led three of them from initial concept through IPO.
(この30年で22社に投資し、そのうち3社は構想の段階から上場まで自ら率いてきました。)
Modern Family Season11 Episode6 (A Game of Chicken)

venture capitalist は、創業して間もない会社に資金を出し、成長を後押しする投資家を指す言葉です。こうした投資をする会社や資金は venture capital といい、略して VC とも呼ばれます。出資の見返りに会社の株式を受け取り、会社が大きく育つことで利益を得る仕組みが一般的だと説明されることが多いです。

IPO は initial public offering の略で、会社の株式を証券取引所に上場し、広く一般の投資家に売り出すことを指します。from initial concept through IPO は「最初の構想から上場まで」という意味で、事業を一から立ち上げて大きく育てた経験を短く言い表しています。invest in ~ は「〜に投資する」で、お金だけでなく時間や労力をかける場面にも使われる動詞です。

経験のある投資家が若い起業家と組むことは、資金に加えて助言や人脈を得られる点で心強いとされます。ルーク自身も、スクーターと組んだ理由のひとつに経験の多さを挙げています。もっとも、出資の形や条件は業種や地域、時期によって大きく異なるため、ひとまとめにはできません。

「I thought we heard a yes」投資の返事をめぐる言い回し

売り込みを聞いたフィルは、事業に反対する立場をとります。続いてクレアが口を開きます。

Claire: Well, it brings me absolutely no joy to say this.
(これを言うのは、ちっともうれしくないんだけど。)
Claire: Luke, I’m impressed.
(ルーク、感心した。)
Modern Family Season11 Episode6 (A Game of Chicken)

it brings me no joy to say this は、本来は悪い知らせを伝える前置きです。クレアはそれを使ってから I’m impressed と続け、聞き手の予想をくつがえす講評にしています。

ところが、話がまとまりかけたところでフィルが待ったをかけます。

Phil: Oh, whoa, whoa, whoa, whoa.
(おっと、待った、待った。)
Phil: Hold on.
(ちょっと待ってくれ。)
Phil: It’s not settled yet.
(まだ決まったわけじゃない。)
Scooter: Well, I thought we heard a yes.
(おや、イエスと聞こえたと思ったんですが。)
Phil: No, I’m I’m still having a conversation with my wife.
(いや、俺は……俺はまだ妻と話し合ってる最中なんだ。)
Modern Family Season11 Episode6 (A Game of Chicken)

a yes は「イエスという返事」を名詞として扱う言い方で、投資や企画の可否を get a yes(承諾をもらう)のように表すときにも使われます。It’s not settled yet. は「まだ決着していない」で、結論を保留したいときに使えます。

フィルの having a conversation with my wife も、その場では決めず、家族と話し合ってから答えたいと伝える表現として使えます。投資や商談の場では、Let me think it over.(じっくり考えさせてください)のように返事を待ってもらう言い方が使われることもあります。

後でクレアは、このピッチを振り返ってこう言います。

Claire: You know, seeing your guys’ pitch, and the the passion, that sparkle in your eye, I I don’t remember the last time I saw you care about anything that much.
(ねえ、あなたたちのピッチを見て、その……その情熱とか目の輝きとか、何かにあんなに夢中になるところを見たのはいつ以来か、思い出せない。)
Modern Family Season11 Episode6 (A Game of Chicken)

ピッチでは数字や仕組みだけでなく、話し手の熱意も評価されると言われることがあります。クレアの感想にも、内容と並んで情熱が挙がっています。

まとめ|ピッチと投資の言葉で起業の場面を読む

困りごとから入る pitch、Introducing ~ と No more ~ing の組み立て、投資する側の venture capitalist と IPO、返事をめぐる a yes や It’s not settled yet を知っておくと、起業を描く場面の会話が追いやすくなります。

家族の前で事業を売り込むルークたちの姿を観ながら、ピッチの英語に耳を傾けるのも、この回ならではの楽しみ方です。

この回のほかのコラムでは、「やめる」の言い分けや、相談相手に選ばれなかった父へのフォローの英語も紹介しています。

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