海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
明確な証拠もないのに、特定の誰かが「怪しい」と決めつけられ、寄ってたかって追い詰められていく。ニュースやSNSで、そんな光景を見かけたことはありませんか。
そんな不当な追及を指すのが「a witch hunt」、つまり魔女狩り・いわれのない吊し上げ、という意味の表現です。今回は『CHUCK』シーズン2第7話、Buy Moreでモーガンが、チャックを執拗に詮索する店長代理エメットに逆襲するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「a witch hunt」の意味とニュアンス
a witch hunt
意味:魔女狩り、(無実の人への)不当な追及・吊し上げ、いわれのない迫害
文字どおりには「魔女(witch)を狩る(hunt)」こと。歴史上の魔女狩りに由来し、現代では「確かな根拠もないのに、特定の人物を犯人と決めつけて、組織的・集団的に追い詰めること」を指す比喩として使われます。
政治の世界で対立相手を糾弾する場面、職場で誰かをスケープゴートに仕立てる場面、SNSでの炎上など、現代社会のさまざまな場面で登場します。a witch hunt / witch hunts のように数えられる名詞として使い、launch a witch hunt(魔女狩りを始める)、call off a witch hunt(魔女狩りをやめる)のように動詞と組み合わせます。
この表現には、「その追及は不当だ」という話し手の批判が込められています。中立的に「捜査」を指すのではなく、「やりすぎだ」「不公平だ」という抗議のニュアンスを持つ点が特徴です。
【ここがポイント!】
- 核は歴史上の「魔女狩り」、根拠なき集団的な追及のイメージ
- 政治・職場・SNSなど、現代の吊し上げに幅広く使える表現
- 「その追及は不当だ」という批判が込もった一言だと押さえるのがコツ
『CHUCK』S02E07のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。チャックの頻繁な不在を怪しみ、しつこく詮索してきた店長代理のエメット。ところがモーガンは、二日酔いで弱ったエメットの弱みを握り返し、形勢を一気に逆転させます。そして、こう迫ります。
Morgan: If you don’t call off this witch hunt for Chuck Bartowski, this goes public. Do we understand each other?
(チャック・バルトウスキーへのこの魔女狩りをやめないなら、これを公にするぞ。話は通じたよな?)Emmett: …Good.
(……いいだろう)Chuck Season2 Episode7(Chuck Versus the Fat Lady)
シーン解説と心理考察
モーガンが使う this witch hunt という言葉に、エメットの詮索がいかに常軌を逸していたかが凝縮されています。単なる「調査」ではなく「魔女狩り」と呼ぶことで、その追及が根拠のない、不当なものだという主張がにじむ場面です。
普段はエメットに振り回されてばかりのモーガンが、ここでは立場を逆転させ、call off this witch hunt と強気に迫ります。弱みを握った者の余裕と、親友を守ろうとする意志が、この一言に重なっています。Buy Moreを国家に見立てた一連の茶番劇の中で、モーガンの逆襲が小気味よい決着として響きます。大げさな「魔女狩り」という言葉が、エメットの過剰な追及っぷりを皮肉る効果として効いています。
『CHUCK』流・覚え方のコツ
松明を手にした群衆が、たった一人を取り囲んで「あいつが魔女だ」と指を差す——そんな中世の村の光景を思い浮かべてみてください。証拠ではなく疑いだけで、一人が大勢に追い詰められていく。それが a witch hunt の核にあるイメージです。
エメットがチャック一人をしつこく追い回す構図は、まさに現代版の小さな魔女狩り。松明こそありませんが、「一人を寄ってたかって」という絵を思い浮かべると、この表現の持つ不穏な響きが記憶に残ります。
例文で覚える「a witch hunt」
不当な追及への抗議を込めた、強い表現です。3つの場面で見てみましょう。
The investigation has turned into a political witch hunt.
(その調査は、政治的な魔女狩りと化してしまった。)
政治ニュースで頻出する使い方です。political(政治的な)を添えると、対立相手を狙い撃ちにする不当さが強調されます。
Firing him without proof would be nothing but a witch hunt.
(証拠もなく彼を解雇するなんて、ただの魔女狩りでしかない。)
職場での不公平な処分に抗議する場面です。nothing but(〜にすぎない)と組み合わせ、「不当だ」という主張を強めています。
A: They’re blaming her for everything that went wrong.
B: That’s not an investigation—it’s a witch hunt.
(A:うまくいかなかったこと全部、彼女のせいにされてるよ。)
(B:あんなの調査じゃない——魔女狩りだよ。)
スケープゴート化を批判する会話です。investigation(調査)と witch hunt を対比させることで、追及の不当さがくっきりと際立ちます。
あわせて覚えたい関連表現
scapegoat
(身代わり、責任を負わされる人)
集団の不満や責任を一身に背負わされる人を指す名詞です。魔女狩りの標的にされる人は、しばしば scapegoat にされた人でもあり、a witch hunt とセットで理解すると構図が見えやすくなります。
point the finger at someone
(〜に責任をなすりつける、名指しで非難する)
文字どおり「指を差す」で、誰かを犯人扱いする表現です。魔女狩りの「一人を名指しで追い詰める」プロセスそのものを描く言い回しとして、あわせて覚えておくと便利です。
call off
(〜を中止する、取りやめる)
予定や行為を取りやめる句動詞です。劇中でも call off this witch hunt(この魔女狩りをやめる)と使われており、witch hunt と相性のよい組み合わせとして押さえておけます。
Note|セイラムの魔女裁判から現代へ、生き延びた「魔女狩り」
a witch hunt がなぜ「不当な追及」を意味するのか。その背景には、ヨーロッパからアメリカへと続いた、実際の魔女狩りの歴史があります。
15世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパでは「魔女」とされた人々が告発され、裁判にかけられ、命を奪われました。中でも有名なのが、1692年にアメリカ・マサチューセッツ州で起きたセイラムの魔女裁判です。村の少女たちの不可解な発作をきっかけに、確かな証拠もないまま次々と住民が告発され、二十人もの人が処刑されました。恐怖と疑心暗鬼が連鎖し、「疑われること」そのものが「有罪」と同じ意味を持ってしまう——この異常な構造こそが、後世に「証拠なき集団的迫害」の典型として語り継がれることになります。20世紀には、劇作家アーサー・ミラーがこの事件を題材に戯曲を書き、当時の政治的な思想弾圧を魔女狩りになぞらえました。こうして a witch hunt は、歴史上の出来事の名を超えて、あらゆる時代の「不当な吊し上げ」を指す言葉として定着したのです。
エメットがチャックを根拠なく追い回す構図を、モーガンが witch hunt と呼んだのも、この歴史の重みを借りた一言です。たった一語で、「それは不当だ」という抗議を相手に突きつけています。
数百年前の悲劇が、今も言葉の中で警告を発し続けているのですね。
まとめ|モーガンの逆襲から学ぶ「不当な追及」の伝え方
a witch hunt は、根拠のないまま誰かを寄ってたかって追い詰める、不当な追及を指す表現です。歴史上の魔女狩りを背景に持ち、「その追及はやりすぎだ」という強い批判を一語に込めることができます。
ニュースで対立や糾弾の構図を読み解くときも、不公平な扱いに声を上げたいときも、この表現を知っていれば、「ただの調査ではない」という抗議のニュアンスごと伝えられます。
親友を守るために強気で迫ったモーガンの一言を思い出しながら、表現の引き出しに加えてみてください。
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※配信状況は変更される場合があります(2026年5月時点)


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