海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
暗がりで何かが動いた気がしたり、確かにやったはずのことを思い出せなかったり——「今のは気のせいかな」と自分の感覚を疑った経験はありませんか。
その「感覚が自分を欺く」瞬間を運ぶ「play tricks on someone」、つまり(記憶や心などが)〜を惑わす・錯覚させるという意味の表現を、『CHUCK/チャック』シーズン4第9話の後半、追い詰められたチャックが目の前の現実を幻だと疑うシーンから、一緒に見ていきましょう。
「play tricks on someone」の意味とニュアンス
play tricks on someone
意味:①〜にいたずらを仕掛ける ②(記憶・目・心が)〜を惑わす・錯覚させる
play tricks on someone は、もともと「人にいたずらを仕掛ける」という意味の表現です。そこから、記憶や視覚、心といったものを主語にして、「自分自身の感覚が自分をだます=錯覚させる」という比喩的な使い方が生まれました。
とりわけ my mind / my memory / my eyes are playing tricks on me の形で、「気のせい」「見間違い」「思い違い」を表すのが頻出です。自分の感覚が、まるでいたずらっ子のように、こっそり嘘の映像や記憶を見せてくる——そんなイメージが核にあります。
子どものいたずらを語る本来の意味から、暗がりでの見間違いや記憶違いを疑う比喩まで、幅広く使えます。深刻な錯覚から、日常のちょっとした思い違いまでカバーできる、便利な言い回しです。
【ここがポイント!】
- 核は「(感覚が)いたずらっ子のように自分をだます」こと
- mind / memory / eyes を主語に立て、「気のせい・見間違い」を表す
- 本来の「人にいたずらする」意味と、比喩の「錯覚させる」意味の両方がある
『CHUCK/チャック』S04E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
極限状況に置かれたチャックは、何が現実で何が幻覚なのか、その境界を見失っています。目の前に現れた恋人サラの姿さえ、脳が見せる幻だと信じ込み、必死の呼びかけに頑なに首を振ります。
Sarah: Chuck, I love you. Please wake up. I have so much that I want to tell you. I found your proposal plan.
(チャック、愛してるの。目を覚まして。伝えたいことが山ほどあるの。あなたのプロポーズ計画、見つけたのよ。)Chuck: This is my mind playing tricks on me. You don’t know anything about my proposal plan.
(これは僕の心が見せてる幻だ。君が僕のプロポーズ計画を知ってるわけがない。)Sarah: You were gonna do it on the beach in Malibu. Where we watched the sun rise after our first date.
(マリブのビーチでするつもりだったんでしょ。初デートのあと、二人で朝日を見たあの場所で。)
シーン解説と心理考察
my mind playing tricks on me という一言に、繰り返し偽の幻を見せられ続けた末の、チャックの深い不信がにじみます。目の前の現実すら「脳が見せる嘘」として退けてしまうほど、彼は追い詰められています。
この否認があるからこそ、サラの反撃が効いてきます。二人だけが知るプロポーズ計画の詳細——マリブのビーチ、初デートの朝日——を彼女が語り出すことで、「これは幻ではない」という動かぬ証拠が突きつけられるのです。play tricks on me という表現が、夢と現実の境が崩れるというこの場面のテーマを、一語で象徴しています。
『CHUCK/チャック』流・覚え方のコツ
自分の「心(mind)」や「目(eyes)」が、まるで小さないたずらっ子のように、こっそり嘘の映像を見せてくる——そんな絵を思い浮かべてみてください。本来「いたずらをする」だった play tricks が、「感覚が自分をだます」という比喩に化けているわけです。
劇中では、追い詰められたチャックが、目の前のサラを前に「これは心のいたずらだ(my mind playing tricks on me)」と退けていました。あの「本物すら幻だと疑ってしまう」痛切な場面ごと覚えておくと、「気のせい・錯覚」という比喩の使い方が、記憶にしっかり残ります。
例文で覚える「play tricks on someone」
見間違いから記憶違いまで、幅広く使えるこの表現を、3つの場面で見てみましょう。
My eyes must be playing tricks on me — did that shadow just move?
(目の錯覚かな……今あの影、動かなかった?)
暗がりで何かを見た気がする場面です。eyes を主語にした、最も典型的な使い方です。
Maybe my memory is playing tricks on me, but I thought the meeting was on Friday.
(記憶違いかもしれないけど、会議は金曜だと思ってたんだ。)
予定の記憶に自信が持てない場面です。memory を主語にすると、「思い違い」のニュアンスが出ます。
A: I could have sworn I locked the door.
B: Maybe your mind is just playing tricks on you.
(A:絶対に鍵をかけたはずなんだけどな。)
(B:ただの気のせいなんじゃない?)
自分の記憶を疑う会話です。劇中のチャックのように、「自分の心が自分をだましている」という感覚がよく出ています。
あわせて覚えたい関連表現
one’s mind is deceiving one
(心が自分を欺いている)
deceive はよりフォーマルで直接的な「欺く」です。play tricks on は「いたずら」の軽さを含み、口語でやわらかく使える点で違います。
see things
(幻覚を見る、ありもしないものが見える)
「実在しないものを見る」ことに特化した口語です。play tricks on は視覚だけでなく記憶や聴覚にも使える点で、射程が広くなります。
it’s just your imagination
(それは気のせいだよ、想像にすぎない)
相手を安心させる決まり文句です。play tricks on me は「自分の感覚が自分を裏切る」という主体のズレを描く点で、ニュアンスが異なります。
Note|mind や eyes を主語に立てる英語の発想
play tricks on someone の面白さは、「心」や「目」を、まるで独立した行為者のように主語に立てる点にあります。この発想をたどると、英語らしい感覚の描き方が見えてきます。
trick はもともと「策略・いたずら・芸当」を指す語です。play a trick on someone で「人にいたずらを仕掛ける」となり、ここまでは行為者が「人」でした。ところが英語は、この主語を my mind / my memory / my eyes に置き換えることで、「自分の感覚が、自分に対していたずらを仕掛ける」という比喩を生み出しました。つまり、自分の一部が自分をだます側に回る、という構図です。日本語なら「気のせい」「見間違い」と、あくまで状態として述べるところを、英語は「心がいたずらをする」と擬人化して描きます。
この「感覚を独立した主体として扱う」発想は、英語のあちこちに見られます。my heart says yes(心はイエスと言っている)、my gut tells me(直感が告げる)など、体の一部や感覚が、まるで意志を持って語りかけてくるかのように主語に立ちます。play tricks on me もその仲間で、自分の感覚を一歩引いて客観視する、英語ならではの言い回しだと言えます。
「心が自分にいたずらをする」——その擬人化の発想をつかむと、この表現がぐっと身近に感じられてきます。
まとめ|チャックの否認に学ぶ「気のせい」の一言
play tricks on someone は、記憶や視覚、心といった感覚が「自分自身をだます=錯覚させる」ことを表す表現です。my mind / my eyes are playing tricks on me の形で、「気のせい」「見間違い」を言い表すのが定番です。
この一言を知っておくと、暗がりでの見間違いや、ちょっとした記憶違いを疑うとき、「今のは気のせいかな」という感覚を、英語らしい比喩でそのまま伝えられるようになります。本来の「いたずらをする」意味とあわせて押さえておくと便利です。
目の前の恋人すら幻だと疑ってしまう、チャックのあの痛切な否認とセットで、この「気のせい」の一言を、あなたの英語の引き出しに加えてみてください。
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