海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
大切な人が生死の境をさまよっているとき、「あの人なら、きっと持ちこたえてくれる」と自分に言い聞かせたことはありませんか。
そんな祈りにも似た気持ちを込められる「pull through」を、『CHUCK/チャック』シーズン4第13話の序盤、意識不明で横たわる父親を前に、娘がその生命力を信じようとする場面から、一緒に見ていきましょう。
「pull through」の意味とニュアンス
pull through
意味:(危機・重病などを)切り抜ける、持ちこたえる、乗り越える
pull は「引く」、through は「〜を通り抜けて」。この二語が合わさると、「困難という通路を、引くようにして向こう側まで抜け出る」というイメージが立ち上がります。とりわけ重い病気や大怪我など、生死に関わる危機を「なんとか生き延びる・回復する」場面で使われることが多く、病室での会話では定番の表現です。加えて、経営難・試験・逆境といった「先の見えない苦しい状況を乗り切る」場面でも幅広く使われます。自動詞的に「He’ll pull through.(彼は持ちこたえるだろう)」と使うほか、pull someone through で「(人が)〜を切り抜けるのを助ける」という他動詞的な使い方もあります。困難のただ中にいる人を励ますとき、あるいはその回復を信じるときに、静かな希望を込められる一言です。
【ここがポイント!】
- 核は「苦しい通路を引くようにして向こう側へ抜け出る」イメージ
- 重病・大怪我から回復する医療の文脈が最も典型的な使いどころ
- 経営難や試験など「先の見えない逆境を乗り切る」場面にも広がる一言
『CHUCK/チャック』S04E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
任務中に大怪我を負い、意識が戻らないまま病室に横たわる父ケイシー。その傍らで娘のアレックスが、心配そうに見守る仲間たちに向かって、父の強さを信じる言葉を口にします。不安を打ち消すように、自分自身に言い聞かせるようにして発せられる一言に注目です。
アレックス: Hey, he is the strongest man I’ve ever met, okay? He’ll pull through.
(ねえ、彼は私が今まで会った中で一番タフな人なの。きっと持ちこたえるわ。)モーガン: (Casey grunts softly) You guys hear that?
((ケイシーが小さくうめく)今の、聞こえた?)Chuck Season4 Episode13(Chuck Versus the Push Mix)
シーン解説と心理考察
このセリフには、確信と祈りが入り混じっています。アレックスは父ケイシーと長く離れて暮らしてきた背景があり、ようやく取り戻した父の存在を再び失うかもしれない恐怖の中にいます。だからこそ、「一番タフな人だから」という理由づけを先に置き、He’ll pull through. と言い切ることで、揺れる自分の心を支えようとしているのが伝わってきます。will の断定は、確実な予測というより「そうであってほしい」という願いの表明に近いものです。pull through が持つ「苦境を引き抜けて向こう側へ」という核が、生死の境から生還してほしいという娘の願いと重なり、静かな緊張感を生んでいます。直後にケイシーが小さくうめくことで、その願いに応えるような余韻が残る場面だと言えます。
『CHUCK/チャック』流・覚え方のコツ
このフレーズは、長く暗いトンネルの中で、誰かの手を引いて出口の光まで連れ出す動作をイメージすると覚えやすくなります。pull(引く)+ through(通り抜けて)の二語が、まさにその「引いて、抜ける」という身体の動きをそのまま表しています。意識を失った父を、娘が言葉の力でトンネルの向こう側へ引っ張り出そうとしている——そんな絵を思い浮かべると、pull through が「危機を切り抜ける・持ちこたえる」という意味であることが、動作の記憶とともに残ります。
例文で覚える「pull through」
医療から逆境まで、幅広い「乗り切る」を表せるのが持ち味です。3つの場面で確認しましょう。
The surgery was risky, but the doctors are confident she’ll pull through.
(手術は危険を伴うものでしたが、医師たちは彼女が持ちこたえると確信しています。)
医療の場面での典型的な使い方です。生死に関わる危機を「回復する・生き延びる」と表す、病院でよく耳にする言い回しです。
The company faced bankruptcy last year, but strong leadership helped it pull through.
(その会社は昨年倒産の危機に直面しましたが、強力なリーダーシップのおかげで乗り切りました。)
ビジネスの場面で、経営危機を切り抜けた状況を表しています。pull through が病気以外の「逆境を乗り越える」にも使えることがわかる例です。
A: I heard the exam was brutal. Are you going to be okay?
B: It was tough, but I think I’ll pull through somehow.
(A:試験、すごく難しかったって聞いたけど。大丈夫そう?)
(B:きつかったよ。でも、なんとか乗り切れると思う。)
苦しい状況を励まし合う日常会話です。somehow(なんとか)を添えると、「確実ではないけれど、何とか切り抜けたい」という控えめな希望のニュアンスが出ます。
あわせて覚えたい関連表現
get through
(〜を切り抜ける、乗り越える)
pull through と非常に近い表現ですが、get through の方が対象範囲が広く、困難だけでなく「(仕事や量を)こなし終える」意味でも使えます。pull through が特に「生死・危機の切り抜け」に強いのに対し、get through は日常の苦労全般に使えます。
pull someone through
(〜が切り抜けるのを助ける)
今回の自動詞的な pull through を他動詞化した形です。Her family’s support pulled her through.(家族の支えが彼女を立ち直らせた)のように、「何が・誰が」その回復を後押ししたかを主語に立てて表せます。
make it
(何とかやり遂げる、生き延びる)
くだけた言い方で「乗り切る・生き延びる」を表します。He’s going to make it. は「彼は助かる」という意味で、pull through と同じく病室でも使われる、より口語的な表現です。
Note|pull through が活躍する3つの現場——病室・逆境・修羅場
pull through は「切り抜ける」と訳される表現ですが、どんな現場で使われるかによって、にじむ色合いが少しずつ変わります。今回のシーンは病室でしたが、この表現の守備範囲を知っておくと、使いこなしの幅がぐっと広がります。
最も典型的なのは、今回のような医療の現場です。ここでの pull through は「生死の境を越えて生還する」という、最も重い意味を担います。He’ll pull through. は文字どおり「彼は助かる」であり、話し手の祈りが色濃くにじみます。次に多いのが、経営難や資金繰りといったビジネスの逆境です。この文脈では「倒産や破綻という谷を越えて事業を存続させる」という意味になり、医療ほどの切迫感はないものの、「先の見えない苦境を持ちこたえる」という核は共通しています。そして三つ目が、試験・締め切り・トラブル対応といった日常の修羅場です。ここでは somehow(なんとか)などと組み合わされ、「きついけれど何とか乗り切る」という、やや軽い調子で使われます。フォーマル度でいえば、病室 > ビジネス > 日常会話、と場面によって言葉の重みが自然に変わっていくわけです。
三つの現場に共通するのは、「苦しい通路を引き抜けて向こう側へ出る」という pull と through の組み合わせが生むイメージです。今回アレックスが病室でこの表現を選んだことで、その最も重い「生還」の意味が前面に出ています。
同じ二語でも、置かれる現場によって祈りにも励ましにもなる——それがこの表現の奥行きです。
まとめ|父の生還を信じる娘の一言
pull through は、重い病気や大怪我、あるいは先の見えない逆境を「なんとか切り抜けて向こう側へ抜け出る」という状態を、シンプルな二語で伝えられる表現です。pull(引く)と through(通り抜けて)というイメージを押さえておけば、なぜこの組み合わせが「危機を乗り越える」を意味するのかが腑に落ちます。
このフレーズを使えるようになると、苦境にある人に向けて「きっと乗り切れる」という静かな希望を手渡したり、自分の踏ん張りどころを表現したりできるようになります。
暗いトンネルの向こうの光へ手を引く場面を思い浮かべながら、あなたの表現の引き出しに加えてみてください。
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