海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
職場やチームに一人はいる、何をしでかすか読めない人。頼りになる場面もあるけれど、ハラハラさせられることも多い。そんな人物を、英語ではひとことでどう言うのでしょうか。
刑事ドラマの決まり文句としてもおなじみの「loose cannon」を、『フレンズ』シーズン4第14話の中盤、シャワーを浴びていたジョーイが大俳優チャールトン・ヘストン本人に、自分の演じる役を説明するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「loose cannon」の意味とニュアンス
loose cannon
意味:何をしでかすか分からない人、危なっかしい人、暴走しがちな人
「loose cannon」は、予測がつかず、周囲に迷惑や危険を及ぼしかねない人物を指す表現です。loose は「緩んだ、固定されていない」、cannon は「大砲」。つまり「固定されていない大砲」が文字どおりの意味で、そこから比喩として使われるようになりました。
規則や指示を無視して自分のやり方を押し通す人、感情のままに動いて場を混乱させる人など、「制御が効かない」タイプの人物に対して使われます。刑事ドラマでは、上司の命令を聞かず単独行動に走る一匹狼の刑事を loose cannon と呼ぶのが定番です。基本的にはネガティブな評価ですが、文脈によっては「型破りで面白い」という含みで、半ば愛情を込めて使われることもあります。a bit of a loose cannon(ちょっと危なっかしいところがある)のように、少し和らげた形で使うこともできます。
【ここがポイント!】
- 文字どおりは「固定されていない大砲」= 制御不能で危険な存在
- 規則を無視して暴走する人、予測のつかない人を指す一言
- 刑事ドラマの一匹狼キャラの定番表現でもある
『フレンズ』S04E14のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
3日間の釣り旅行から帰ったジョーイは、シャワーを浴びる時間がないまま撮影現場へ。共演者チャールトン・ヘストンの楽屋のシャワーを勝手に使っていたところを、当のヘストン本人に見つかってしまいます。素っ裸のまま、ジョーイは必死に自分が共演者であることを説明します。ここで loose cannon が登場します。
Charlton Heston: You’re in this picture?
(君、この映画に出ているのか?)Joey: Yeah. I’m one of the cops who won’t work with you ‘cause you’re a loose cannon. Anyway, look, I’m really sorry, but I stink.
(ええ。俺は、あんたが危なっかしいからって組みたがらない刑事の一人役なんです。とにかく、本当にすみません、俺、ひどい臭いで)Friends Season4 Episode14(The One with Joey’s Dirty Day)
シーン解説と心理考察
このシーンの面白さは、二重の構造にあります。ジョーイが説明しているのは、劇中映画の刑事の設定です。「あんたが loose cannon だから組みたくない刑事」という、刑事ドラマにありがちな役どころを、あろうことか本物のチャールトン・ヘストンを目の前にして真顔で語っているわけです。フィクションの中のセリフと、現実のばつの悪い状況が入り混じるおかしみが見どころです。
しかもジョーイは全裸で、勝手に人のシャワーを使っていた張本人。立場としてはむしろジョーイのほうがよほど「何をしでかすか分からない人」に見えるという、皮肉な逆転も効いています。loose cannon という、刑事映画のクリシェそのものの言葉が、この珍妙な状況で飛び出すことで、シーン全体のコメディが際立っていると言えます。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
loose cannon を覚えるときは、船の甲板の上を、固定を失った大砲がゴロゴロと転がり回る光景を思い浮かべてみてください。船が揺れるたびに、重い鉄の塊が予測不能な方向へ動き、周りの人を巻き込んでいく。その危なっかしさが、この表現の核そのものです。
ジョーイが語った「組みたくない刑事」も、まさに手のつけられない暴走キャラのこと。転がる大砲のイメージと、ドラマの一匹狼刑事を重ねておくと、loose cannon =「制御不能で周囲に危険な人」という意味がしっかり記憶に定着します。
例文で覚える「loose cannon」
人物評として使われることが多い表現です。少し批判的なニュアンスをともなうので、使う相手や場面には注意しましょう。
The manager fired him because he was a loose cannon in meetings.
(その部長は、会議で何をしでかすか分からない彼を解雇した。)
職場での人物評として使われる例です。組織のリスクになる予測不能さを問題視するニュアンスが出ます。
She’s brilliant, but a bit of a loose cannon when she’s under pressure.
(彼女は優秀だけど、プレッシャーがかかると少し危なっかしくなる。)
a bit of a をつけて和らげた言い方です。才能を認めつつ、暴走しがちな一面を指摘する、バランスの取れた評価になります。
A: Should we put Dave in charge of the negotiation?
B: I don’t know, he’s a bit of a loose cannon. He might say something we’ll regret.
(A:交渉の担当をデイブに任せるべきかな?)
(B:どうかな、彼はちょっと危なっかしいから。あとで後悔するようなことを言いかねない。)
仕事の相談の場面で使える会話例です。人選をためらう理由として loose cannon を挙げると、予測不能さへの懸念が的確に伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
wild card
(予測できない要素、何をするか読めない人)
loose cannon と近く、「読めない存在」を指します。ただし wild card は必ずしも悪い意味ではなく、「思わぬ活躍をするかもしれない未知数」という中立〜ポジティブな含みもあります。loose cannon の「危険」寄りのニュアンスとは、そこが違います。
hothead
(すぐカッとなる人、短気者)
感情面に焦点を当てた表現です。loose cannon が「全体として予測不能」なのに対し、hothead は「怒りっぽさ」に特化しています。暴走の原因が怒りにある場合は、hothead のほうがぴったりくることがあります。
maverick
(一匹狼、既存のやり方に従わない人)
組織のルールに縛られず独自路線を行く人を指します。loose cannon がネガティブ寄りなのに対し、maverick は「型破りだが有能」という肯定的な評価で使われることが多い表現です。同じ「はみ出し者」でも、受け取られ方が対照的です。
Note|刑事映画の定番キャラとしての loose cannon
loose cannon という言葉に一番よく出会う場所は、じつは刑事もの・アクション映画かもしれません。この表現は、ハリウッドのひとつのキャラクター類型と深く結びついています。
規則を無視して単独で突っ走る一匹狼の刑事。1970年代の『ダーティハリー』のハリー・キャラハン、1980年代の『リーサル・ウェポン』のマーティン・リッグスに代表されるこの刑事像は、アメリカの刑事ものにおける定番の型として定着しました。そして、この手のキャラクターにはお約束の場面がセットでついてきます。上司が「お前は loose cannon だ」と怒鳴りつける。バッジと銃を取り上げると迫る。同僚たちは「あいつとは組みたくない」と距離を置く。loose cannon という言葉自体が、こうした場面の決まり文句として何度も使われてきたことで、「暴走刑事」のイメージを一語で呼び出せるジャンルの記号になったのです。映画の外でも、ニュースや政治報道で予測のつかない人物を評する言葉として頻繁に登場します。
ジョーイのセリフを振り返ると、この背景がそのまま効いています。「あんたが loose cannon だから組みたがらない刑事の役」という説明は、刑事映画のお約束を一言で要約したもの。定番中の定番の設定を、大俳優本人を前に真顔で語るからこそ、あの場面はおかしいのです。
ジャンルのお約束を丸ごと背負った、映画好きにはおなじみの一語です。
まとめ|ジョーイが語った「組みたくない刑事」から
loose cannon は、予測がつかず周囲に危険を及ぼしかねない人物を指す表現です。「固定されていない大砲」という文字どおりの意味を思い出せば、なぜ制御不能な人を指すのかがすっと理解できます。
ニュースでも、ドラマでも、職場の会話でも登場する頻度の高い表現です。人物評として使うときは批判的な響きをともなうので、a bit of a loose cannon のように和らげる形も一緒に覚えておくと、場面に応じて調整できます。
甲板を転がる大砲のイメージとともに、表現の引き出しに加えてみてください。


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