海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
友人二人の距離が近いことには気づいていても、付き合っているのかと聞いていいものか迷って、言葉を選び直すような場面があります。
そんなときに出番となる「hook up with」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン1第3話の序盤、リグスビーが海辺に集まった被害者の友人たちに聞き込みをする場面から、一緒に見ていきましょう。
「hook up with」の意味とニュアンス
hook up with
意味:(恋人という枠にはめずに)〜とくっつく、〜と関係を持つ
hook は「引っかける、つなぐ」。もともとは器具や配線をつなぐ意味で使われていた語で、そこから人と人が一時的につながることを指す使い方へ広がりました。恋愛の文脈で使うと、恋人同士であることを前提にしない結びつきを表します。date や go out with が関係に名前を与えるのに対し、hook up with はその名づけを避けたまま事実だけを述べる言い方です。
判断が必要なのは、恋愛以外の意味も現役だという点です。人を目的語にとって「落ち合う、合流する」を表すこともあれば、機器を目的語にとって「接続する」を表すこともあります。I’ll hook up with you after the meeting なら待ち合わせの話で、深い意味はありません。どちらに転ぶかは、誰と何をつなぐのかという文脈が決めます。くだけた口語なので、改まった場では別の言い方に置き換えるのが無難です。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「フックで引っかける」ように、留めてはいるが固定はしていない結びつき
- 恋人という枠を与えずに事実だけを言える、関係を定義しない一言
- 「落ち合う」「接続する」の意味もあるので、目的語と場面で読み分けるのがコツ
『メンタリスト』S01E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
サンタマルタのビーチには、亡くなったクリスティンを悼む友人たちが集まっていました。リグスビーが交際相手の有無を尋ねると、ウィンは質問の意味が分からないという顔で聞き返します。そこでリグスビーが言葉を選び直した瞬間、閉じかけていた会話が動き出します。
Rigsby: Was she dating anybody?
(彼女、誰かと付き合ってた?)Win: Dating?
(付き合ってた、ですか?)Rigsby: Okay, was she hooking up with anybody in particular?
(じゃあ言い方を変えよう。特定の誰かとくっついてた?)Hope: Danny Kurtik, mostly.
(だいたいダニー・カーティックかな)Win: Jeez, Hope.
(おい、ホープ)Hope: What? They were hookin’ up.
(何よ。二人はくっついてたじゃない)The Mentalist Season1 Episode3(Red Tide)
シーン解説と心理考察
同じことを尋ねているのに、最初の質問では答えが返らず、言い換えた途端に名前が出てくる。この落差にこの場面の面白さがあります。ウィンが dating に引っかかったのは、質問をはぐらかしたかったからではなく、その言葉が自分たちの関係を言い表していなかったからだと読み取れます。付き合っていたかと聞かれれば、答えは「いいえ」になってしまう。
リグスビーはそこを瞬時に察して、hooking up with に切り替えます。捜査官としての手際というより、相手の世代と関係のあり方に言葉を合わせにいった対応です。事実は何ひとつ変わっていないのに、器の形を変えただけで中身が出てくる。言葉の選び方が会話の温度を変えています。
そして口を開いたのはウィンではなく、ホープでした。仲間内の関係をあっさり口にした彼女に、ウィンがすぐたしなめる。若者たちが互いの距離をどう扱ってきたのか、その輪郭が最初に見えてくる場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
服のフックを、留め具にぱちんと引っかける動きを思い浮かべてみましょう。ボタンやファスナーと違って、フックは引っかけているだけです。留まってはいるけれど固定はされておらず、力がかかればすぐ外れる。hook up with が持つ距離感は、この留め具の手ざわりとそのまま重なります。
劇中でも、dating という言葉ではかっちりしすぎて会話が止まり、hooking up with に替えた瞬間に答えが返ってきました。関係の形にちょうど合う留め具はどれか。会話が動いた瞬間とセットで覚えると、この表現の位置づけが体でつかめます。
例文で覚える「hook up with」
恋愛の話にも、待ち合わせにも、機器の接続にも使える幅の広い表現です。三つの例文で、その振れ幅を見ていきましょう。
They hooked up at a party last summer, but they never dated.
(二人は去年の夏、パーティーでくっついたけど、付き合いはしなかった)
友人の恋愛事情を説明する場面です。dated と並べると、この表現がどこまでを指すのかがはっきりします。
Can you help me hook up the printer to the new laptop?
(新しいノートパソコンにプリンターをつなぐの、手伝ってくれる?)
機器の接続を頼む場面です。もともとの「つなぐ」の使い方で、恋愛の含みはまったくありません。
A: Are they a couple now?
B: I don’t think so. They just hooked up a few times.
(A:あの二人、今は付き合ってるの?)
(B:違うと思う。何回かくっついただけ)
関係をぼかして説明する会話です。just を添えると、それ以上ではないという線を引けます。
あわせて覚えたい関連表現
see someone
(〜と付き合っている、〜と会っている)
継続して会っている状態を指し、hook up with より関係が続いている含みがあります。ただし date ほど公式でもなく、両者の中間に位置する言い方です。
go out with
(〜と付き合う)
恋人同士であることを前提にした表現です。関係を定義しない hook up with とはちょうど正反対で、置き換えると意味が変わってしまいます。
meet up with
(〜と落ち合う)
hook up with の「合流する」の用法とほぼ同じ意味ですが、恋愛の含みが一切ありません。誤解を避けたい相手や場面では、こちらを選ぶのが安全です。
Note|関係に名前をつけない状態に、名前がある
日本語で二人の関係を説明しようとすると、「友達以上恋人未満」「いい感じ」のように、既存の枠からの距離で言い表すことが多くなります。友達という枠と、恋人という枠。その二つを先に置いて、どちらからどれだけ離れているかで位置を示す言い方です。
英語の hook up は、その発想と少し違うところに立っています。この語が名指ししているのは、枠から離れた位置ではなく、枠に入っていないという状態そのものです。だから They hooked up. と言えば、それだけで説明が完結します。付き合っていたわけではない、という否定を足す必要がありません。date が関係に名前を与える語だとすれば、hook up は名前を与えないことを選んだと伝える語だ、と整理できます。
この違いは、劇中のやり取りにそのまま出ていました。dating と聞かれたウィンは答えられず、hooking up with と言い換えられて初めて事実が出てきます。前者は枠を差し出す質問で、後者は枠を外した質問だったからです。捜査官が言葉を替えたのは、質問の内容を変えたからではなく、器の形を変えたからでした。
同じ出来事でも、どの語で呼ぶかによって、話し手が関係をどう扱っているかまで伝わります。関係を名づけない、という選択自体に名前があるのは、英語らしい割り切り方と言えます。
まとめ|関係に名前をつけない、という選択
hook up with は、恋人という枠を与えないまま、二人が結びついた事実だけを述べる表現でした。date や go out with が関係に名前を与えるのに対し、この語はその名づけを避けます。人と落ち合うとき、機器をつなぐときにも使える幅の広さも、あわせて押さえておきたいところです。
友人の話を伝えるときも、待ち合わせの約束をするときも、断定しすぎずに事実だけを渡せる。踏み込みすぎずに話を進めたいときに効く、そんな一言です。


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