海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
自分がやったことの重さを、当人だけが軽い言葉で言い換えようとする。そんなやり取りが、取り調べの場面には時々あります。
その落差を突く「do a number on」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン1第3話の中盤、保安官事務所の取調室でリズボンが重要参考人の前科を持ち出す場面から、一緒に見ていきましょう。
「do a number on」の意味とニュアンス
do a number on
意味:〜をひどい目に遭わせる、〜をぼろぼろにする
number には「数字」のほかに「(舞台の)一つの演目・出し物」という意味があります。do a number on は、その演目を誰かに向けてやってのける、という形から生まれた言い回しで、相手に大きなダメージを残すことを表します。終わったあとに、荒らされた跡だけが残る。そのイメージが意味の中心にあります。
守備範囲はかなり広く、人にも物にも使えます。暴力を受けて重傷を負った場合から、嵐で屋根がやられた場合、インフルエンザで消耗した場合、スキャンダルで評判が傷ついた場合まで、被害の深刻さは文脈が決めます。quite a number on、a real number on のように形容を挟むと、被害の大きさを一段強められます。かなりくだけた口語なので、報告書や改まったメールでは damage や affect などに置き換えるのが自然です。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは、舞台でひと演目やってのけたあとに残る荒れた跡のイメージ
- 人にも物にも評判にも使える、被害の深刻さを文脈が決める幅の広い一言
- quite a / a real を挟むと被害の大きさを強められるのが使いこなしのコツ
『メンタリスト』S01E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
重要参考人として連行されたサーファーのフリッパーは、取り調べをゲームのように扱い、リズボンを「悪い警官役」と決めつけます。その余裕を崩すため、リズボンが持ち出したのが彼の前科でした。ここから、加害の重さをめぐる言葉の応酬が始まります。
Flipper: Tough. Go to it, sister.
(手強そうだ。やってくれよ、姉さん)Lisbon: You can be pretty tough yourself. Roberta Varnushi. You did quite a number on her.
(あなただって、なかなか手荒じゃない。ロバータ・ヴァヌーシ。ずいぶんひどい目に遭わせたわね)Flipper: Uh, we had different expectations that led to friction.
(いや、互いの期待がずれて、摩擦が起きただけさ)Lisbon: Friction? She nearly died.
(摩擦ですって? 彼女、死にかけたのよ)The Mentalist Season1 Episode3(Red Tide)
シーン解説と心理考察
このやり取りの見どころは、同じ出来事に二人がまったく違う大きさの言葉を当てているところです。リズボンが選んだ did quite a number on her は、相手に大きな損害を残したことをはっきり示す言い方でした。一方フリッパーが返したのは friction、つまり「摩擦」。互いの行き違いで自然に生じた小さな軋み、という響きの語です。
言い換えは、加害を小さく見せるためだけに使われたわけではないとも読み取れます。自分のしたことを直視せずに済む形へ言葉を丸めておく。その処理を何度も繰り返してきた人の口ぶりが、この一語ににじんでいます。
リズボンはそこを見逃さず、彼の言葉をそのまま拾って「摩擦ですって?」と返します。相手が用意した器を投げ返し、she nearly died という事実だけを置き直す。感情的に責めるのではなく、言葉の大きさのずれを突くことで相手の逃げ道をふさぐ運びが、短いやり取りに緊張感を生んでいます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
昔の劇場のプログラムを思い浮かべてみましょう。1番、2番と番号のついた出し物が順に披露され、演者は自分の番になると全力でやり切ります。do a number on someone は、相手を舞台に見立てて、その上で派手にひと演目やってのける絵です。幕が下りたあとには、荒らされた舞台だけが残ります。
劇中でリズボンがこの言葉を選んだのも、まさにその規模の被害だったからでした。フリッパーが「摩擦」と言い換えた出来事を、舞台ひとつ分の荒れ跡として言い直す。二つの語の大きさの差とセットにすると、この表現の重さが記憶に残ります。
例文で覚える「do a number on」
天災にも、体調にも、評判にも使える、被害を語るときの定番表現です。三つの例文で、その広さを見ていきましょう。
That storm really did a number on our roof.
(あの嵐で、うちの屋根はひどいことになった)
天候の被害を伝える場面です。天災を主語にした形は、この表現のもっとも使いやすい入り口になります。
The scandal did a number on the company’s reputation.
(そのスキャンダルは会社の評判をひどく傷つけた)
仕事の話題で使う場面です。評判や信頼のように、形のないものを目的語にとることもできます。
A: You look exhausted.
B: Moving apartments did a number on my back.
(A:疲れきってるね)
(B:引っ越しで腰をやられてさ)
疲れの理由を軽く説明する会話です。身体の一部を目的語にすると、深刻すぎない愚痴として響きます。
あわせて覚えたい関連表現
mess up
(台無しにする、めちゃくちゃにする)
失敗して壊す、散らかすといった広い意味を持ちます。do a number on は外から強い力が加わってやられた、という被害側の視点が濃い点が違います。
beat up
(殴りつける、ぼこぼこにする)
物理的な暴行に限られる表現です。嵐や病気、評判の失墜にまで使える do a number on のほうが、守備範囲は広くなります。
take a toll on
(〜に打撃を与える、〜をむしばむ)
時間をかけてじわじわ消耗させる響きがあります。一撃で大きくやられた場面には、do a number on のほうが向いています。
Note|舞台の「番号」から生まれた言い回し
number という語を見ると、まず数字が浮かびます。ところが英語の number には、もうひとつ古くからの用法があります。舞台のプログラムに並ぶ「一つの演目・出し物」という意味です。
この用法は今も現役で、ミュージカルの歌と踊りの一場面は musical number、群舞の見せ場は dance number と呼ばれます。演目には番号がふられ、演者はその番になると持ち時間を使い切って全力でやってのける。do a number on は、この「ひと演目やってのける」感覚が、舞台ではなく相手に向けられたものだと説明されることが多い表現です。派手にやり切った結果、向けられた側にはっきりした損害が残る、という構図が意味の芯にあります。由来には諸説があり、確定したものとして扱われているわけではありませんが、dance number と並べてみると、この語が数字だけの言葉ではないことが見えてきます。
劇中でリズボンが使ったのも、まさにそういう規模の出来事についてでした。フリッパーは friction、つまり自然に起きた小さな軋みとして語ろうとしましたが、リズボンの選んだ語は、意図をもってやり切られたひと演目を指しています。加害が「起きたこと」なのか「やったこと」なのか。二人の立場の差が、選んだ語に出ています。
数字の number しか知らないままだと、この表現は意味が読み解けません。語の来歴をひとつ足すだけで、腑に落ちる形になります。
まとめ|言葉の大きさで加害を測る一言
do a number on は、舞台でひと演目やってのけるという発想から、相手や物に大きな損害を残すことを表す表現でした。人にも物にも評判にも使え、被害の深刻さは文脈が決めます。quite a や a real を挟めば、その大きさをさらに強められます。
嵐で傷んだ屋根のことも、寝込んだ一週間のことも、これひとつで伝えられる。深刻な出来事から日常の消耗まで、幅広く言い表せる便利な表現です。
軽い言葉に言い換えようとした相手へ、事実の大きさをそのまま返したリズボンの一言と読み取れます。


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