「jack-of-all-trades」の意味と使い方|『メンタリスト』S01E13で学ぶ英会話

「jack-of-all-trades」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

小さな職場では、一人が何役も抱えていることがあります。電話も受ければ請求書もつくり、来客があればお茶を出し、備品が切れれば買い出しにも行く。肩書きに書ききれない仕事をこなしている人が、どの組織にも必ず一人はいるものです。

そんな人を言い表す「jack-of-all-trades」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン1第13話の前半、殺された被害者の妻が、夫の社内での立場を語る場面から、一緒に見ていきましょう。

目次

「jack-of-all-trades」の意味とニュアンス

jack-of-all-trades
意味:何でも屋、いろいろな仕事をこなす人

trades は職業や技能を指す語です。そこに Jack がつくと、あらゆる仕事に手を出す男、という形になります。この Jack は特定の誰かではありません。英語では古くから、名前のない、そのへんの男を表す語として使われてきました。

判断が必要なのは、褒め言葉になるかどうかが文脈次第だという点です。この表現には Jack of all trades, master of none.(何でも屋は、どれも一人前ではない)という続きがよく知られており、前半だけを口にしても、その含みが残ることがあります。人を紹介するときは称賛、自分について言うときは謙遜と、使う向きによって色が変わります。

劇中で a sort of が添えられているのも、この曖昧さと関わっています。言い切ってしまうと評価の色がつくため、話し手はそこをやわらげているわけです。職場の会話でも身内の話でも使える、フォーマル度の幅が広い言い回しです。

【ここがポイント!】

  • 核にあるのは、道具がひととおり揃った携帯用の工具箱のイメージ
  • master of none という続きが控えているぶん、称賛にも自嘲にも転ぶ一言
  • 人に使うなら褒め言葉、自分に使うなら謙遜と、向きで読み分けるのがコツ

『メンタリスト』S01E13のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

殺されたハリーの妻ステヴィーは、彼の勤め先である会社の社長令嬢でもあります。夫の社内での仕事は何だったのか。リスボンの問いに、彼女は少し考えてから答えます。決まった部署も専門もなく、社長である父が必要とすることを、その週ごとにこなす立場だったと。

Lisbon: What was his job here exactly?
(ご主人のここでのお仕事は、正確にはどういうものでしたか)

Stevie: Good question. He was a sort of jack-of-all-trades for my father, did whatever he needed from week to week. My father liked having someone on hand with no ties or friendships within the company.
(いい質問ですね。父にとっての何でも屋のような存在でした。その週ごとに、父が必要とすることを何でも。父は、社内にしがらみも友人関係もない人間を手元に置いておきたがるんです)

Lisbon: That’s a tough assignment.
(それは、なかなか厳しい役回りですね)

Stevie: Yes. But he only joined the company when we were married.
(ええ。でも彼が入社したのは、私たちが結婚してからです)

The Mentalist Season1 Episode13(Paint It Red)

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シーン解説と心理考察

「いい質問ですね」という前置きが、この受け答えの性格を決めています。夫の仕事を一言で説明できないこと、それを自分でも分かっていることが、この一言に表れています。

続く説明を追っていくと、ハリーの立場が輪郭を持ってきます。専門はなく、部署もなく、社長の指示に応じて動く。しかも、社内にしがらみや友人関係がない人間であることが、その条件でした。信頼されて選ばれたというより、切り離しておける人間として置かれていた。そう読める説明になっています。

リスボンが返す「厳しい役回りですね」は、共感でありながら、ステヴィーの言葉の裏側をそっと突いてもいます。彼女はそれを否定せず、夫が入社したのは結婚してからだと補足する。多才さの話として始まった説明が、家族と会社の力関係の話へ少しずつ傾いていく空気があります。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

携帯用の工具箱を開けたところを思い浮かべてみてください。ドライバーもペンチもハンマーも、必要なものはひととおり入っている。ただしどれも小ぶりで、本職の職人が使う専用工具ほどの精度はありません。この「ひととおり揃っているが、どれも本格的ではない」という手触りが、jack-of-all-trades の輪郭そのものです。

Jack という名前が入っているのも手がかりになります。英語では車のジャッキも電源のジャックも同じ jack で、どれも名前を持たない汎用の道具です。名指しされないけれど、必要な場所には必ずある語です。

劇中のハリーも、この工具箱として社長のそばに置かれていました。週ごとに違う仕事を渡される姿と重ねると、この言葉の手触りが残ります。

例文で覚える「jack-of-all-trades」

同じ表現でも、誰について言うかで色が変わります。称賛・状況説明・自嘲の3つの向きで見てみましょう。

My uncle is a real jack-of-all-trades. He can fix just about anything in the house.
(叔父は本当に何でも屋で、家の中のものならたいてい直せる)
器用な身内を人に紹介する場面です。real を添えると純粋な称賛になり、皮肉の色が消えます。器用な身内をひとことで紹介したいときに、そのまま使える言い方です。

In a small company, everyone has to be a jack-of-all-trades.
(小さな会社では、全員が何でも屋にならざるを得ない)
職場の働き方を説明する場面です。人ではなく状況を主語に置くので、誰かを評価する響きになりません。自分の負担を説明するときにも、責める調子を出さずに済みます。

A: You handle design, sales, and the books?
B: Yeah. Jack-of-all-trades, master of none.
(A:デザインも営業も帳簿も見てるの?)
(B:ああ。何でも屋で、どれも中途半端さ)
自分の仕事の幅を照れながら説明する場面です。後半をあえて言い切ることで、自嘲として着地します。よく知られた決まり文句なので、相手にも冗談だと伝わりやすくなります。

あわせて覚えたい関連表現

wear many hats
(いくつもの役割を兼ねる)
担っている役割の数に焦点があり、その人の腕前については何も言いません。jack-of-all-trades が人の性質を指す名詞なのに対して、こちらは状態を表す言い方です。役割の多さを訴えたい場面で選ばれます。

generalist
(広く浅く知識を持つ人)
specialist の対義語として使われる中立的な語で、皮肉やへりくだりの色がありません。人事や職務経歴の話では、こちらのほうが置き換えやすくなります。履歴書や職務経歴書との相性がよい語です。

handyman
(修理や雑用をこなす人、便利屋)
実際に修繕を請け負う職種を指す具体的な名詞で、比喩ではありません。jack-of-all-trades は職種を問わず、働き方の型のほうを表します。求人広告などでも見かける、具体的な職種名です。

Note|Jack という名前が「誰でもない誰か」になるまで

jack-of-all-trades には、なぜ Jack という名前が入っているのでしょうか。この Jack は、実在の誰かではありません。英語の中で長く「名前のない男」を担ってきた、特別な一語です。

中世以降の英語で、Jack は John の愛称として広まり、やがて個人名を離れて「そのへんの男」を指す普通名詞のように使われるようになったと説明されることが多い語です。その痕跡は、今も身のまわりに残っています。車を持ち上げる jack、コードを差し込む jack、トランプの jack、船首に掲げる旗の jack。どれも固有の名を持たず、決まった役目を黙ってこなす存在です。名指しされないけれど、必要な場所には必ずいる。そういう役どころが、この語には積み重なっています。

jack-of-all-trades という言い回しも、その系譜の上にあります。あらゆる商売に顔を出す、名前のない男。ここに master of none(どれも一人前ではない)という句が加わり、褒め言葉としての勢いは削がれていきました。さらに近年は、その後ろに but oftentimes better than a master of one(それでも、一芸だけの者よりましなことが多い)という一節を添える紹介が広まっています。ただしこの後半部分がいつ生まれたのかについては定説がなく、後世の付け足しだとする見方もあります。

劇中のステヴィーが a sort of と言い添えたのは、こうした評価の揺れを話し手が察しているからです。褒めているのか、それとも夫の立場の頼りなさを認めているのか。Jack という名前がもともと抱えていた「誰でもない誰か」という響きが、その曖昧さをそのまま支えています。

名前を持たない男の名前が、今も英語のあちこちで働いています。

まとめ|肩書きに収まらない働き方を、一語で

jack-of-all-trades は、決まった専門を持たずに幅広い仕事をこなす人を指す表現です。工具箱のように必要なものがひととおり揃っている一方、どれも本職ほどの精度ではない。その両面を、一語で抱え込んでいます。

肩書きでは説明しきれない働き方をしている人は、どの職場にもいます。その人を言い表すときにも、自分の経歴を短く伝えるときにも、この一語があると説明が早くなります。real を添えれば称賛に、master of none を続ければ自嘲に。同じ語で向きを変えられるのが強みです。

多才さと器用貧乏のあいだを行き来しながら使われてきた言葉です。前後の一言で行き先を決めてやれば、伝えたい色をそのまま届けられる表現と言えます。

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